おどるなつこ 「あしおとがきこえる?」

タップダンサー・振付家おどるなつこの日常から浮かびあがることばを束縛せず書きとめています。2005年開設。

記憶と筋肉

2020-03-23 | 稽古日記
記憶は筋肉に刻まれている。

先日の稽古現場で、キャストのフリーソロのバレエのパを整理して一緒に踊っていたらふと、今は亡きバレエの高木先生が現れた。先生には、私が15年ぶりにバレエのレッスンを再トライした日から13年ほど学ばせていただいた。初心者もプロも混在するレッスンで、だからこそ本質的だった。

私はグランワルツが大好きで無駄に高く跳んでしまう。「トレーニングっていって脚に負担かけてちゃ本末転倒でしょ」とスポーツ整形ドクターにたしなめられたこともあり、高木先生亡き後は、もうバレエは封印している。

けれども背筋は跳び方を忘れてはいなかった。弓矢の弓を引くように、背筋が私を空中に連れて行く。「貴方は誰に向かって踊っているの?」空中で高木先生の声が甦る。私は稽古場でも空を向いて跳んでいて、正面をまるで見ていなかった。バレエには献上する舞踊の歴史からお辞儀や方向性のマナーがある。

私はいつも自分のために踊っている。誰がためにでもなく。

筋肉は反復を記憶するが、記憶は反芻して改められる。
さて、私は何故に跳びたいのか。





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