前回ブログ記事、熱海”起雲閣”の続きです。
今回のテーマは、「大富豪の別荘を見学して、
ちょっとだけ大富豪になった気分になる…。」
昭和初期に増築された洋風建築の部分を
ご紹介しましたが、2代目の持ち主さんの
作った洋風建築は、まだまだ続くのです。
”サンルーム””玉姫””玉渓”の棟の奥に
昭和4年に建てられ、何度か改築された
洋館”金剛”がありました。暖炉が印象的。
建築当時は独立した建物で、元は玄関も
あったそうです。洋館には珍しい螺鈿の
細工もあり、いかにも富豪の別荘ですね。
別世界に浸って、くつろげる雰囲気です。
”金剛”のお隣には、”ローマ風浴室”が
建てられていました。独特の雰囲気です。
優雅なステンドグラスの窓が印象的…。
この”ローマ風浴室”、見学するだけです。
現在、ここで入浴することはできません。
昔の温泉、浴槽は小さかったのですね。
いや、ローマの浴室は浴槽が小さい…?
この建物は戦後になって、三代目の所有者、
桜井兵五郎氏のものになりました。1947年
大富豪の別荘は、旅館に変身しました…!
桜井氏は、石川県出身の実業家で政治家…。
クラシックホテル、石川県の湯涌温泉にあった
”白雲楼”を作った人としても知られています。
その桜井氏は1951年、”起雲閣”の持ち主
となってから数年で死去されました。そして、
この温泉旅館は、熱海を代表する宿として、
多くの人々、文豪達に愛されるようなります。
この旅館時代に使われていた和室は、
”文豪の間”として3室公開されています。
広いお庭の眺められる、素敵な和室でした。
こんなお部屋に泊まって、温泉でリラックス。
心身ともにもリフレッシュできて、文豪たちも
新たな創作意欲が湧いてきたのでは…?
ちなみに、”人間失格”で知られる太宰治は、
前回ブログ記事でご紹介した”大鳳”の間に、
愛人と共に宿泊した…と、伝えられています。
”愛人と一緒”というところが、太宰らしい…。
”起雲閣”に泊まった文豪たちの資料も
お部屋に展示されていました。”尾崎
紅葉の間”、”坪内逍遥の間”もありました。
旅館時代にBARだったスペースは現在、
喫茶室”やすらぎ”となって営業中です。
クラシカルな調度品に囲まれ、広いお庭を
眺めながら、優雅に珈琲タイムを過ごします。
”起雲閣ブレンドコーヒー”とお菓子のセットを
注文しました。さくっとした上質なリーフパイが
付いてきます。喫茶室、いい雰囲気でした。
お庭を眺めながら、おいしい珈琲を味わって
ちょっとだけ、別荘のオーナー気分に浸る…。
熱海の別荘地、非日常を感じる空間で、
至福のひとときを過ごすことができました。
さて、”起雲閣”は旅館としての営業を終え、
2000年には、熱海市の所有となりました。
旧別荘部分を観光用に公開するだけでなく、
旅館だった時代に増築した建物の一部を
貸し出し施設として公開&活用しています。
旅館の建物をギャラリーとして使用したり、
パーティーやコンサート、お茶会の会場
として、一般の人が気軽に利用できるように
なりました。これ、素晴らしいことですね。
その昔、大富豪の別荘だった伝統ある建物は
温泉旅館だった時代を経て、みんなが見学、
使用できる施設となった…!とても合理的…。
この発想に、ちょっと感激しました…!