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植物と土壌微生物が持つ関係が近年注目を集め、世界の農業を変えつつある。化学肥料や農薬を必要としない農法。気候変動や環境汚染とも訣別する画期的動き

2019-03-27 16:55:52 | *食料自給~農・漁
土壌微生物 共生関係 カバークロップ 有機農業 不耕起 硝酸性窒素 硝酸態窒素 再生農業 ”Living Soil”
印鑰 智哉 - 植物は土壌微生物と強い共生関係を結んでいる。必要なミネラルを植物自らの力で得ることはできず、土壌微生物... | Facebook
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/3158661024160706 より転載
植物は土壌微生物と強い共生関係を結んでいる。必要なミネラルを植物自らの力で得ることはできず、土壌微生物の力を必要とし、微生物もまた植物が作る炭水化物が必要だからだ。互いがそれぞれの生存にとって不可欠な存在となる。
しかし、そこに化学肥料が登場すると、この共生関係が断ち切られてしまう。土壌が崩壊し、生産性は激減、長期的には持続が不可能になる。でも、この共生関係を取り戻すことで生産性を回復し、土壌を永続的に維持することも可能になる。この地下の共生関係の話は無限に興味が尽きないが実際にこの関係が近年注目され、世界の農業が変わりつつある。
しかし、この話をすると、有機農業を押しつけようという話として取られてしまうことがある。でもそれはまったく違うのだ。というのも、実際に世界で生まれている動きは有機農業を目指した動きでは必ずしもないからだ。
最大のテーマは土壌の不毛さとの格闘だった。土壌の不毛さをどう克服できるのか? その時に現れたのがカバークロップ(被覆植物)だった。カバークロップとは収穫することを目的に植えるのではなく、土壌が失われないように、あるいは雑草に覆われてしまわないように、植えられる植物。これがすべてを変えた。
収穫後、砂煙にまみれるのが多くの米国の農村地域だったという。しかし、このカバークロップが登場してから土壌流出が止まる。そして、次の収穫までこのカバークロップは光合成によって得られた炭水化物をどんどん地下へと放っていく。草は土の栄養を奪っていく存在なのでは必ずしもない。光合成によって炭水化物を土に供給する。二酸化炭素を土の中に蓄積する。土壌の微生物はその炭水化物を受け取り、空気中の窒素や土の中に存在するリン酸などを植物が吸収できる形態へと変化させ提供する。つまり休耕中に土に栄養が蓄積されていくことになる。土を太陽にさらすな、カバークロップや藁で覆え。雑草も益をもたらすものとして見方が変わっていく。
そしてカバークロップと共に大きな変化を引き起こしたのが不耕起栽培。耕起してしまえば土壌の微生物は破壊されてしまう。しかし、不耕起にすることにより、それは守られ、土壌の力はみるみるうちに回復していく。その結果として、化学肥料がほとんど不要になっていく。そして共生菌に守られた植物はより病原菌にも襲われにくくなり、殺菌剤などの農薬の必要も激減していく。土壌の肥沃さを求めることで自然の循環が持っている意義が再発見され、結果として化学肥料や農薬への依存が激減していく。

化学肥料や農薬は深刻な環境汚染をもたらしている。過剰な窒素肥料は硝酸性窒素となって河川を汚染したり、農作物にも過剰に入る。これが人体にはいると、血液のヘモグロビンを酸化させ、酸素を運べなくなって酸欠状態になり、特に乳児の場合は命を落とすことにもつながりかねない。さらにこの硝酸性窒素は体内で発ガン性物質を生み出す可能性もある。一気に川や海の魚が死んで地域の環境が悪化し、住民に健康問題が発生しかねない。その有効な対策は化学肥料の使用抑制だが、代替策なく規制されれば農家は窮地に追いやられてしまう。化学肥料や農薬を多用した農地では共生菌はほとんど存在しない。そこで化学肥料を断ってしまえば一気に生産が崩壊してしまいかねない。
その解決策としてカバークロップの活用が登場した。カバークロップを用いることで農家は使う化学肥料を減らすことができる。そのカバークロップの導入に対して必要な費用が地方自治体が負担することが決まった地域がある。そこではわずかな税金の投入で、地域の環境、人びとの健康が向上し、医療や環境対策のコストは減少、さらには土壌の改善による農業生産の向上が実現した。農家の生産コストも化学肥料や農薬を減らせた分、下がり、収穫は上がった。地域は潤うことになる。

環境問題を解決しようとする環境運動と農民の動きが地方の政治を変え、大きな成果を上げる。これこそが公共政策のあるべき姿だろう。このような農地が今、米国では全農地の10%ほどまでになってきているという。このような農業のあり方を体系化する考えがRegenerative Agriculture(再生農業)であり、それがめざすのは有機農業の理想と一致するだろう。

ドキュメンタリー “Living Soil”はこの土壌を取り戻した農家たちの物語(英語1時間)。
https://www.youtube.com/watch?v=ntJouJhLM48

またこのカバークロップや不耕起と土壌微生物の役割などの関係を掘り下げた書籍としてデイビッド・モンゴメリー著『土・牛・微生物』築地書館がある。この本のタイトルはちょっとどうかと思うが、原題は“Growing a Revolution -- Bringing Our Soil Back to Life”。原題の方に軍配をあげたくなる。



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