雨の記号(rain symbol)

現場トークショーから(ジェシカ)(6)






現場トークショーから(ジェシカ)(6)
From the on-site talk show (Jessica) (6)



 タクシーはアイスクリームを売る店の前で止まった
 男性MCがシートベルトを外しながらいう。
「じゃあ、僕が買ってきますから待ってて」
「私も一緒に」
 とジェシカ。
「じゃあ、一緒に行きましょう」
 ジェシカは車の外に出る。
 外ではたくさんのカメラが待機していた。驚くジェシカ。MCたちまで驚いている。情報を嗅ぎつけたファン(?)までデジカメ持っているではないか。
 ジェシカはお笑いMCに声をかける。
「腕を貸していただけますか?」
「・・・?」
 お笑いタレントはうろたえる。
「腕って・・・ちょ、ちょっと待って。まさか」
 彼女はジェシカに訊ねかける。
「ヒールは苦手なの?」
「はい」と頷くジェシカ。
「じゃあ、テレビのために?」
「そうなんで~す」
 ジェシカは辛そうな表情で答える。お笑いタレントはジェシカの足元を見ていう。
「でも、ちゃんとはいてるじゃない」 
「そうでもないです。よく見ると私は歩く時、クネクネフラフラしていますよ」
 両MCはびっくり仰天。何と何と、ジェシカはハイヒールをはくのが苦手のようだ。
 子供の手を取るようにMC二人は両側からジェシカの手を取って店に向かって歩き出す。笑い声も弾む。照れくさそうなのはジェシカではなくMC二人の方なのだ。
 三人はアイスクリームを買って外に出てくる。外ではすでにファンが群れている。その中で撮影は続く。
「楽な靴でよかったのに」
「履こうと思いましたが、テレビに出るので礼儀として・・・」
「心がけがいいのね・・・はっははは」
 三人はアイスクリームを握ってタクシーの中に戻る。
 アイスクリームを食べるジェシカの姿はごく自然にかわいい。アイスクリームを食べながらジェシカは外の景色やファンたちをぼんやり眺め、彼女もまたファンから眺められている。手を振ったり、笑顔見せたり(シールドがかかってはいるだろうが)のパフォーマンスはない。その姿はいたって自然でクールだ。
「プライベートな時間は取れないの?」
「いいえ、今日はこの”タクシー”がなければお休みでした」
 二人を見て豪快に笑い出すジェシカ。寝る間もないほど忙しいと思われてることに対してだろうか?
「そうだったの? 意外だ」
 やや拍子抜けの男性MC。
「じゃあ、時間があったら何をする?」
「私は・・・」
「うん」
「お家にいるのが大好きです」

(寝てるんだな・・・)

「ここから近いので行きますか?」
 とお笑いMC。
「ええ、ええ。どこですか、どこ?」
「ウソですよ」とジェシカ。「確かに近いですけど」
「友達とは何を?」
「友達とは食事します」
 アイスクリームをほじくりながらジェシカ。
「一緒にご飯食べます」
 お笑いMCが男性MCに話の水を向ける。
「ジェシカのパジャマ姿も気になるでしょ。他のすべても」
 笑っているジェシカ。
「いくら何でもパジャマまでは気にならない・・・」
 男性MCは生真面目に答え始めるが、次第にその口調は緩みだす。
「いや、やっぱり気になるかな・・・」
 顔を見合わせて大笑いの二人。ジェシカはくすくす笑っている。



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