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URAKARA8話(3)
URAKARA episode 8 (3)
ギュリの親心(3)
「いやいや」父親は四人が消えた方角を見た。「いやーっ、たいへんだねえ。あんな元気な娘らをまとめていくのは・・・! ギュリちゃんみたいなリーダーがいるから、みんな、あんなに伸び伸びできるんだねえ」
「いいえ・・・」ギュリは自信なさそうに言った。「私は・・・リーダーの仕事、まだまだです」
ギュリを見て店長の父親は、ああっ、そうだ、と何か思いついたように切り出した。
「アナゴのつめ煮るのを手伝ってもらおうかなあ」
「つめ?」
「うん。焦がさないようにずーっと見てなきゃいけないんだけど・・・お願いできるかな」
父親の意図をいぶかしみ、ちょっとためらいを見せてから、ギュリは頷いた。
「熱いから気をつけてね・・・」
「あっ、はい」
「ギュリちゃん、そこの鍋とって」
アナゴのつめを煮込むギュリの手伝いが始まった。
店長の父親がつゆをおためですくって移しかえるのを見ながらギュリは訊ねた。
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「あの・・・」
「ん? なに?」
「お父さんは、どうしてあの子にこだわりますか?」
「さあ・・・どうしてかな」
仕事を続けながら父親はそう答えて笑った。
「お母さんのこと、何か関係ありますか?」
「ギュリちゃんね・・・こういう地味な努力こそ、いちばーん、大事なんだ。こうやってね・・・煮詰めながら、何度も何度も鍋をかえていく」
「・・・」
「こんなにたくさんあるのにね。仕上がるのはほんの・・・」
父親は人差し指と親指でわずかの隙間を作った。
「これくらい・・・はっははは」
「・・・」
「でもね・・・かけた手間ひまは必ず相手に伝わるものなんだ。どんな言葉よりもね」
「はい」
ギュリは得心のいった表情をした。
「ギュリちゃん」父親は二階の方を指差した。「妹さんたちかわいいだろう?」
ギュリは笑顔になった。
「はい。もちろんです」
「手間がかかる子供ほとかわいいって言うからね」
二人は笑い合った。
そして朝がやってきた。
徹夜でアナゴのつめを作った二人はテーブルの上で眠りこけていた。
起きて下にやってきたニコルは二人を見た。ギュリの手元にあった日記帳を手にし、ページを覗き込んだ。
そこには次のようなことが書かれてあった。
”今日、ニコルがラジオ出演した。トーク、最高!”
”よーし。明日はみんなでお寿司を食べに行こう!”
ここを読んだニコルはちょっぴり自分のわがままを反省した。
「お店のじゃなきゃ、ヤダ! うそつき!」
準備が整い、いよいよ寿司店「花房」の親子対決の時が迫ってきた。
KARAの合宿所には多くの関係者が招待され、続々とやってきた。
山本編成局長もおみやげ持参でやってきた。
関西のぞみが応接した。
「どうもどうも・・・今日はお招きいただいちゃって・・・ああ、これ、つまらないものじゃないんだけど、京都の老舗のさば寿司」
「さば寿司・・・」
「うん」
「寿司!」
関西のぞみは叫んだ。
「あん?」
「山本さん、ほんまに間が悪い・・・!」
「ん? どうして?」
「ほら」
関西のぞみは周囲を見るよう促した。
「えっ? 寿司?」
「それではただいまより、人気寿司店(花房)の店長とそのお父さんによるお寿司対決を行います」
社長2号の司会で「お寿司対決」の催しが宣言された。
(花房)の親子は社長2号の前に進み出た。
「本当に美味い寿司ってのを教えてやる」
父親は息子に闘争心を剥き出しにした。
社長2号は言った。
「勝敗はみなさんの投票で決まりますのでしっかりと味わってください。よーい、スタート!」
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店長の父親はきりりと鉢巻をしめて気合を入れた。そこへギュリがやってきた。
「お父さん、手伝います」
「おお、ありがとうよ、ギュリちゃん。じゃあ、ラップをはずして」
先行したのは店長の方だ。大きな皿に盛られた色とりどりの寿司を見て「ねえ、見て」とあたりからどよめきがあがった。KARAのジヨンやハラたちは振り返り、それを見てため息に似た悲鳴をあげた。
「あれがお寿司なの!?」
父親とギュリの屋台の前に立っていた4人娘のうちジヨンが「私、あっちのお寿司がいい」と言って駆け出した。
スンヨンとハラもジヨンの声につられてついて行った。
ギュリ姉さんに申しわけない気持ちのニコルは迷った。行きたいけど行けないのだった。
ジヨンは訊ねた。
「これ、食べてもいいですか」
「もちろん」
「わあっ」
ギュリも負けじと客寄せを始めた。
「こっちのお寿司はおいしいよ。江戸前のアナゴだよ」
父親も声をあげた。
「ほい、そこのお兄ちゃん、食べて!」
「いらっしゃーい! いらっしゃーい!」
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父親はKARAの「ミスター」を歌いだした。
「ラーララ、ラララッ~、ラーララ、ラララッ~、ラーララ、ラララッ~」
ギュリもそれに合わせた。
「ラーララ、ラララッ、ラーララ、ラララッ~ワンツスリフォッーファイブシックス・・・ドウイン」
「わっははは、やってるね」
ギュリと父親の歌声を聴いて山本編成局長が屋台の前に立った。
「僕ね、その乗り嫌いじゃないですよ」
そう言って彼も屋台の前で踊り出した。
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「ラーララ、ラララッ~、ラーララ、ラララッ~、ラーララ、ラララッ~」
それで場の空気は一転した。穏やかな催しは大きな賑わいへと化した。みんなが父親の屋台の前でKARAの「ミスター」の歌に合わせて踊り出した。
「ラーララ、ラララッ~、ラーララ、ラララッ~、ラーララ、ラララッ~」
そうするうちにも催しはどんどん進行していく。ニコルもついにハラたちに合流して店長の寿司に舌鼓を打っている。
友達以上 恋人未満~♪
曖昧な関係は 飽きたわ~♪
催しは進み、投票も進んでいった。
「はーい、いっぱい食べてね「」
ギュリは美しい顔で声を枯らして客寄せを続けた。
社長2号と関西のぞみは店長の父親をサポートし続けるギュリの姿に感心していた。関西のぞみは言った。
「割烹着着てあんな風にしてたらまるでお母さんみたいやな」
それを聞いて店長の網浜伊知朗は父親たちの方を見た。
ギュリはかいがいしく父親の助手を務めていた。
ギュリの姿を見ているうち今は亡き母親のことが伊知朗の脳裏に蘇ってきた。母親もあんな風に父親の仕事を手伝っていた。そして二人は幸せそうだった。
どうしてそんな母親のことが蘇ってきたのか。どうして母親と彼女の姿が重なってしまうのか。自分はどうかしていると彼は首をかしげるのだった。
そうして親子対決の投票は締め切られ、開票の結果が関西のぞみから社長2号の手にわたされた。
社長2号はそれを読み上げた。
「決戦の結果・・・勝者は店長の伊知朗さん」
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