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韓国ドラマ「ベートーベン・ウィルス」から③
感想ばかり連ねていても味気ないから、かんたんにドラマの概要を書いてみる。
その実力は世界的に高く買われているが、音楽に対する自己の理想を追求するあまり、妥協性を喪失してしまった指揮者と音楽をこよなく愛しながら、その道をあきらめてしまった人たちとの心のふれあいを描いた作品。
「音符の表現は練習すればいくらでも上達していく。それよりもっと大事なのは、その音楽の世界を自分の心でどうとらえていくかです。心の深くでそれを感じてみなさい」
これは、初心に戻れ、ということを言っている。
主人公のカン・マエは、子供の頃に受けた素朴な感銘を情熱として今も保ち続けているわけである。
ところがここに登場する多くの者は、この情熱を失っていたのだった。彼らはカン・マエを通じて音楽へのストレートな情熱を、一方、カン・マエは彼らと本音でぶつかることを通じて、ほんとの意味の人間性(及び社会性とついでに恋)を獲得(天才的人物を扱う時、しばしばこういった人物像<アスペルガー風>が描かれるようだが、実際にそうなのかな?)していくというものである。
このドラマでのキム・ミョンミン(カン・マエ)の演技には圧倒的なものがある。彼のすばらしい演技は、ほかの出演陣にも反映したのか、イ・ジアはじめ、チャン・グンソク、パク・チョルミン、イ・スンジェ、ヒョン・ジュニー、ソン・オクスクらがそれぞれに見事な演技の花を咲かせている。
「大王四神紀」の世界から現代版に脱け出てきたようなイ・ジアのキャラは僕の好みだし、「美男(イケメン)ですね」で若手実力派の存在感を示したチャン・グンソクは、甘さに渋み、ちょっぴりワイルドさもアピールできるマスクを持ち、それに背が高くスタイルも抜群ときている。僕の見る限り、彼は韓流の若手代表格のイケメンスターと言えそうである。
パク・チョルミンの演技にも感心させられる。カン・ジファン主演の「一枝梅(イルジメ)」でも彼は脇役として登場し、横歩きの間者をやって異彩を放った。あの時はあっけに取られたが、今度はキャバレーのトランペッターを演じている。どんなキャラかと注目したら、緊張が高まるとやたら空咳をやる難役だった。それをストーリーの流れにうまく溶け込ませて演じている。さすがというべきか、役に対する集中度の高さを見る思いがする。
ソン・オクスクは「冬のソナタ」でカン・ジュンサン(ペ・ヨンジュン)の母でピアニストを演じた。ここではうっぷんのたまった専業主婦、チェロ奏者で登場している。チェロ独奏をやる時、すごくサマになってる気がした。チェロ独奏の演技なんてカラオケを歌うようにはいかないと思うが、ちょっと習ってあそこまで表現できる役者には憧れさえ覚える(筆者は仲間と案内を出して芝居もどきに出演し、一夜漬けのセリフをすっかり忘れ飛ばして大恥をかいたことがある。ちょい役でもこなすのは大変だ)。
現在、GyaOはこのドラマの(7、8、9)話を配信している。一週一話ずつならあらすじをていねいに追っていけそうだが、他のドラマもみている手前、とてもかけそうにない。
今回、この3話の中で印象に残ったのは、カン・ゴヌのずば抜けた才能に圧倒されたカン・マエが指揮者仲間のチョン・ミョンファンを呼び、カン・ゴヌの面倒を見てくれるよう頼み込むシーンだった。
ドラマのストーリーとは直接関係しないが、カン・マエがミョンファンにカン・ゴヌの才能を説明するくだりに笑わされた。というか、自分のことを言われているようで打ちしおれてしまった。
そのセリフは次のようなものだった。
「乏しい才能を精一杯ふくらませ、あっちこっちでばらまいて頑張っている君なんか取るに足らぬものだよ・・・」
カン・マエが言うまでもない。背中を膨らませて敵を威嚇する猫のように、世の多くの者は乏しい才能を大きく見せながら世の中を渡っている。ミョンファンはカン・マエの憎まれ口を楽しそうに聞いていたが、僕はその言葉に感電し、頭まっくらで、あとの話がしばらくわからなかった。
カン・マエの言葉に僕も痛感してしまった。乏しい才能を必死で膨らまそうとしてるのは、自分もそうだな、と。
(7、8、9)話。水曜までにもう一度見るつもりでいる。
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