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(紹介)原発本、雑誌増刊を読む

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 3.11が起き、当初は地震・津波を特集した雑誌増刊が並び、吉村昭氏の『三陸海岸大津波』が増刷され、それが原発事故が深刻になるにつれ、刊行物が原発関連にシフトしていき、5月半ばになった時点で、原発事故後に書き下ろされた本が続々と並ぶようになった。

 全般的な傾向としては、“反原発”のものが多いのだけれども、それは当然。もともと賛成の立場で本を書く人自体が少なかったし、賛成論は、政府や電力業界の刊行物に溢れていたわけで、一般的な書店に並ぶことが少なかったと言える。

 原発関係の書籍の一般書はもともと、小規模な市民運動系の出版物を扱う出版社(緑風出版、七つ森書館など)で、持続的に出されていたものの、本としては、“運動系”の中でのみ流通していたと言って良い。

 とても、出されてる本を読み切れるものではないので、簡単に何冊か印象に残ったものの感想のみ書いておきたいと思う。



★「AERA臨時増刊 No.22 原発と日本人 100人の証言」

・通常号では、毀誉褒貶のあった同誌だけれども、避難している市民の証言が多数収録されていて資料的価値は高い。原発立地の自治体の市民でも、恩恵を感じている人といない人、何の恩恵も受けていない周辺自治体の住民への理不尽な仕打ちへの怒り、(地元への)恩恵に感謝しつつ、電力の恩恵を受けていながら、自分たちを批判すると東京に矛先を向ける人、“風評被害”に苦しむ人、東電の協力写真の証言・・・

 いわゆる識者の発言よりも、まずはこちらを読んで貰いたいと思う。それから、“識者”には、わが長野県の菅谷松本市長の「ヨード剤がないので、待機中の放射線量が増えたら、だし昆布を入れた昆布水を配布する」などというトンデモ発言があって、呆れかえった。

 あのね、そんな状況になったら、避難ですよ、まずは。チェルノブイリでの医療に長く携わった医師の発言とは思えない・・・効くわけないでしょうが。

★「週刊金曜日 臨時増刊 原発震災」

・“市民派メディア”として、反原発のスタンスを一貫して取ってきた同誌の記事を再編集した臨時増刊。巻頭に広瀬隆氏のインタヴューを載せ、今は亡き“市民科学者”高木仁三郎氏、地震学者・石橋克彦氏の論考なども収録。ま、それは良いとしよう。

 酷いのは「電力会社が利用した文化人ブラックリスト」。原発の直接の広告塔を務めた人物はともかく、電力会社関係のCMや雑誌に登場したり、イメージソングを提供した音楽家まで槍玉に。それを批判するのが、東電社長で原発推進の舵を切った木川田一隆氏を絶賛し続けてきた佐高信センセなのだから、悪い冗談だ

★「世界5月号 東日本大震災・原発災害 特別編集 生きよう!」

・250ページ以上を震災・原発に割き、一冊そのまま特集になっていて、地震学者・原子炉技術者・市民活動家その他、雑誌の特集としては、非常に良く出来ている。全ての論旨に賛成ではないけど、いくつもの震災特集を買うのであれば、「世界」と一般向け科学雑誌「Newton」、それに「AERA」があれば、十分だと思う。



★広瀬隆『原子炉時限爆弾』(ダイヤモンド社、10.8)、『福島原発メルトダウン』(朝日新書、11.5)

・さて、最後は“時の人”広瀬隆氏だ。震災の半年以上前に、大地震による<原発震災>を予告したということで、“時限爆弾”は、一時品薄になるほど売れ、震災後に書き下ろされた“メルトダウン”も、10万部を超える売れ行きで、25年前のチェルノブイリで『危険な話』三部作が売れに売れた状況の再現になっている。

 広瀬氏は長野にも来たことがあって、講演は聞いたことがあったんだけど、四半世紀経っても、基本的なトーンは変わらない。原子力産業は、素人集団で、御用学者がそれを支え、日本列島が明日終わるかもしれない危険な状態が続いている・・・。

 そこに新しく加わったのが、「阪神淡路大震災以降、日本列島は地震の“静穏期”を終え、“大地の激動期”に入った」という“巨大地震の恐怖”だ

 それは確かにその通りだ。直下型の地震が原発を襲えば、福島を遥かに上回る惨状が日本全土を覆うだろう。だから、著者の警告は、胡散臭いと思う人も一度読んでおく必要はあると思う。

 なにせ「経済産業省が昨年秋から米エネルギー省と共同で、使用済み核燃料などの世界初の国際的な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する計画を極秘に進め」るなどというトンデモないことを平気で、進める国なのだから。

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コメント一覧

haikyotansaku
http://black.ap.teacup.com/niwatori/
受け止め方は人それぞれだと思います。被災地にいる人は逃げられないわけだし、遠く離れた東京の人間が、怖い怖いで騒ぐのは、違和感ありますね。

ただ、妊婦と子どもに関しては、体の作りが違うから、大丈夫、大丈夫っていうのは、どうか?って気はします。僕くらいの年になれば、ある程度覚悟は出来るし、年金を貰うような年の人は、騒ぐな!って言いたいですね。

あー読む本は、個人の趣味だし、高尚なわけじゃないし、何か使命感があってやってるわけじゃないです。昔、プロレス本を書いてた村松友視さんが、“ジャンルに貴賎なし”って書いてたでしょ。

ただ、僕は堅い本が好きなだけなんですよ。その反面、息抜きに同人誌や、ライトノベル読みますしね。原発本だけ読んでたら、鬱になります。
リーベン三角
とても参考になりました。何冊か購入したいと思います。因みに田豚じゃなかった田渕先生も原発推進の記事に載ってたそうです。
GONKAKUだけ買ってさっさと帰る自分とはhaikyotansakuさんは違うなあ
「オールラウンダー廻」6巻も買いました…
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