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著者は経営コンサルタント。大手コンサルティング会社を退職して今年独立。まえがきには、こうある。
「マネジメントが下手だからビジネスがダメになったのではない。マネジメントなんかにうつつを抜かしてるからビジネスがダメになったのだ。むしろ、余計なマネジメントなんかするな」
まぁ、そういう本なんだけど。今年は、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』が大売れ。今でもベストセラー街道驀進中で、累計200万部を突破。来年3月には、NHKでアニメ化決定(全10話)。あの本で“マネジメント”って言葉が、一般にもメジャーになったんだけど、僕、あれを比較的早い段階(3月)で読んだんだけど、あの表紙じゃない?結構、周囲の冷たい視線が。
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本は面白いよ。そもそも、高校野球のマネージャーが、間違ってドラッカーの本なんか読むなんて、ありえないだろ・・・ってツッコミは、ナシにしておいて
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さて、著者が言うのは、本来、ビジネスが、「本質」や「中身」であって、マネジメントは、「やり方」や「スタイル」にすぎない。ビジネスが「主」で、マネジメントが「従」の関係であるはずなのに、最近は、“マネジメント信仰”を持つ人が多くなり、その関係が逆転してきている。
そのマネジメント万能な風潮は、現場の第一線でビジネスを行っている人より、経営企画や人事等、本部でマネジメントを行っているホワイトカラーが力を持つようになる・・・で、その結果、何が起こったか。著者はコンサルティングの現場から、さまざまな事例を挙げていて、これが実に興味深い。
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端的に言えば、意思(個人の考え)を示すより、意見(建前論)を言ってる方が楽。失敗して、責任を問われることを避けるようになる。社内でまともな議論が出来なくなる。で、マネジメントを徹底し、ルールや制度によって社内を管理することで、かえって組織による責任の所在があいまいになる(責任はマネジメント側ではなく、ルールを守れない社員の個人的な責任)。
顧客を相手にするビジネスより、社内管理に目が向く最近のマネジメントは、顧客や社会の存在を軽視し、それが引き金になって、企業の不祥事や長期的な業績低迷を引き起こす。
そうした「顧客より、組織を重視する」傾向は皮肉なことに、自分たちがやっていることを社会的に意味があることにすりかえる。「経営理念や会社方針、ビジョンにこだわり、それが現実の会社や日常業務と乖離していく」
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いやー、読んでてねぇ、なるほどって思うことが多数
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まぁ、単純な話、マネジメント信仰が、ビジネスの現実や顧客に目を向けずに、現実から逃避して、内向きになって、どんどん日本企業が危機的な状況に追い込まれてるって話ね。だから、そうした“信仰”を捨て、経験と勘と度胸を重視すべき、起業できる環境を整えるべし、まぁ、着地点はその辺なんだけど
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つまり、特定の企業が悪いとか言うんじゃなくて、その傾向は日本企業全体を覆ってるってことね。で、かつての日本企業はそうじゃなかった。マネジメントは、参考資料程度で、現場の冒険と活力に満ちた企業が成長してきたわけだから。
地盤沈下するビジネスを正当化するために、かつてなくブームになっている“経営の神様”ドラッカーは、今の日本企業をあの世でどう見ているだろうか。
(680円+税、新潮新書 10.12)
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