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第七部代替え電源6「黒いダイヤ」輝き再び 石炭火力、環境にも優しく産経より

2014-04-06 13:43:51 | (英氏)原発・エネルギー問題
「黒いダイヤ」輝き再び 石炭火力、環境にも優しく
2014.3.30 23:20 (1/8ページ)[九州から原発が消えてよいのか]

 横浜の高級住宅街・山手の丘から東京湾を臨むと、200メートルの白亜の煙突とパステルカラーの巨大な建屋群。電源開発(Jパワー)の石炭火力発電所「磯子火力発電所」だ。2基で計120万キロワットの出力を誇るが、煙突の先からは何も出ていないように見える。

 Jパワーは、旧型石炭火力発電所(計53万キロワット)を取り壊し、平成14年と21年に新型2基を順次導入した。年間発電量は81億キロワット時で横浜市(人口370万人)の消費電力量の3分の1をまかなっている。

 この発電所には国内外の要人が絶えず視察・見学に訪れる。24年度の見学者数は5千人を超えた。昨年4月3日には茂木敏充経済産業相も視察に訪れ、「日本の技術は本当にすごい。エネルギーコストを低減し、安定供給を保つためにも高効率の石炭火力は極めて有望だ」と舌を巻いた。



 見学者が引きも切らないのは、この発電所に、従来の石炭火力の「有害物質をまき散らす」というイメージを覆す最先端技術が導入されているからだ。

 発電用の蒸気タービンは、蒸気が高温・高圧であればあるほど発電効率も上がる。そこで磯子では、ボイラーには蒸気圧力25メガパスカル、温度600度という超々臨界(USC)型を採用した。このボイラーで石炭を粉末にして燃やすことにより、発電効率は42%と飛躍的に向上した。

 石炭の3大消費国とされる中国、米国の発電効率の平均値は36%、インドは27%にすぎない。磯子レベルの発電効率を3カ国の石炭火力発電所に適用すると年14・6億トンのCO2が削減され、世界のCO2の年間排出量の5%を削減できるという。これは日本の年間排出量に匹敵する。

 磯子では、有害物質対策も徹底している。まず煤塵(ばいじん)の99%以上を電気集塵装置で除去する。酸性雨や健康被害の原因となる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)は、乾式脱硫・脱硝システムで吸着・分解し、1キロワット時あたりの排出量はSOxで0・01グラム、NOxも0・05グラムにすぎない。環境保護に熱心なフランスの火力発電所でさえ1・6グラムもあることを考えると、まさに世界最高レベルの環境対策だといえる。

 石炭火力の「日の丸技術」はさらなる進化を続けている。その中で次世代技術として、もっとも注目されているのが石炭ガス化複合発電(IGCC)だ。

 石炭を1500度以上の炉内で蒸し焼きにしてガス化し、まずガスタービンを回す。さらにその排熱を利用してボイラーで蒸気を発生させ、蒸気タービンも回す。この2段階の発電により発電効率は46~48%まで引き上げられるという。

 IGCCには、適用炭種を拡大できるというメリットもある。

 通常の石炭火力発電では、質の低い亜瀝青炭(あれきせいたん)を用いると、灰がボイラー表面に吸着してしまい発電効率が落ち込んでしまう。

 ところが、IGCCはむしろ、溶融温度の低い亜瀝青炭の方がガス化が容易で適している。亜瀝青炭は、質の高い瀝青炭より1割ほど安い。かつ採掘可能な石炭埋蔵量の3割を占め、大量採掘が見込める。つまりよいことずくめなのだ。



 欧米は1990年代からIGCCの開発に取り組んできた。日本はやや出遅れていたが、平成14年にJパワー若松研究所(北九州市若松区)が、ガス化実証実験「EAGLEプロジェクト」に乗り出した。

 EAGLEでは、ガス化の過程で、空気中から分離した酸素をボイラーに吹き込み、石炭を熱分解して一酸化炭素や水素ガスを発生させる。この水素ガスを酸素と反応させ、電流を発生させる燃料電池を組み込めば、トリプルコンバインド発電(IGFC)も可能となる。これならば発電効率は55%を超えるという。

 また、石炭の発熱量が生成ガスの発熱量に転換した割合を冷ガス効率というが、EAGLEの冷ガス効率は、欧米勢の70%台後半を上回る82%を達した。

 EAGLEは26年度初めに実験を終え、29年3月から広島県大崎上島町で中国電力と共同で行う「大崎クールジェンプロジェクト」(出力16・6万キロワット)の実証試験に移る。EAGLEで培ったガス化のノウハウを元に蒸気タービンも併設し、32年のIGCC実用化を視野に入れる。

 同時にCO2の分離回収、貯蔵技術の実証研究も進んでいる。Jパワー技術開発部長の大塚哲夫はこう胸を張った。

 「石炭は大きな可能性を秘めているんです。将来的には環境への負荷がまったくないゼロ・エミッションを目指します」

 日本で石炭は過去の遺物と思われてきたが、世界ではなおエネルギーの主流の地位を占めている。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、石炭火力は世界総発電量の41%(2013年)を占め、中国は79%を、インドも68%を石炭火力に依存している。米国も43%、環境先進国という印象があるドイツさえも実は45%も占める。

 理由は、石炭は価格が低位で安定している上、産出地が石油や天然ガスほど偏在せず、世界中に広く分布しているからだ。BP社の統計(2013年)によると、石炭の可採年数は109年とされ、石油(52・9年)の2倍、天然ガス(55・7年)の1・9倍もある。

 このような背景から、IEAでは、新興国の需要拡大を見込んだ上で、2030年も総発電量に占める石炭火力の割合は現在と同じ41%と予測している。

 とはいえ、石炭火力には欠点もある。

 石炭は炭素の含有量が多いため、地球温暖化の原因とされるCO2排出量が多いのだ。一般的な石炭火力のCO2排出量は、石油火力に比べて3割増、天然ガス火力の6割増とされる。

 現在、石炭火力のCO2排出量が世界全体の3割を占めていることもあり、石炭火力は環境保護団体から“天敵扱い”されてきた。

 米国では昨年9月、環境保護局(EPA)が石炭火力発電所を新設する際、CO2排出量の4割削減を求める規制案を発表した。これによりCO2を回収・貯留する施設を併設しなければ新設はできなくなった。

 中国では、石炭火力がPM2・5(微小粒子状物質)の元凶となっている。大気汚染や健康被害も深刻化しており、さすがの中国政府も今後、規制強化に乗り出す公算が大きい。その代わりに原発建設を急ピッチで進めているが、日本の規制基準よりずっと甘い中国製原発が乱立することも好ましくない。

平成23年の福島第1原発事故を受け、すべての原発が停止し、なお再稼働の見通しがつかない日本では、新型石炭火力は一筋の光明となりつつある。

 石炭火力は、最先端技術により環境負荷が小さくなっただけでなく、発電コストも大きな強みとなる。

 政府のコスト等検証委員会の資料によると、22年の石炭火力の発電量1キロワット時当たりの燃料費は4・3~4・5円。液化天然ガス(LNG)火力の8・2~8・6円、石油火力の16・6~18・2円と比べると圧倒的に安い。CO2対策費などを加味した全体コストも石炭火力は9・5~9・7円で、LNG火力の10・7~11・1円よりも安く、石油火力の22・1~23・7円とは比較にならない。

 ただ、石炭火力の新増設には、9年に施行された環境影響評価法により法制化された環境アセスメントが大きな壁となってきた。

 とはいえ、原発停止により日本の電力事情は逼迫している上、原油価格高騰で旧来の石油火力はコストがまるで合わなくなった。太陽光や風力などの再生エネルギーも不安定かつ高コストで原発の代替電源とはなりえない。

 そこで環境省は昨年4月、新規の石炭火力発電所の新設基準を緩めると発表した。磯子レベルの先端技術を有し、CO2排出規制計画を策定するなどの条件を満たす事業計画については基本的にゴーサインを出す方針だという。

 これを受け、九州電力は27日、石炭火力の松浦発電所(長崎県松浦市)の2号機にUSC型新鋭機(100万キロワット)を建設すると発表した。瓜生道明社長は「石炭は高効率なベースロード電源。安定した国から調達できることも魅力だ」と語った。東京電力や関西電力なども石炭火力の新増設を検討している。

 半世紀前のエネルギー革命で過去の遺物となった「黒いダイヤ」は再び輝きを取り戻しつつある-。(敬称略)
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