「御嶽(おんたけ)山の噴火を誰が予知できたんだっ」「川内原発の敷地内には過去に火砕流が到達した形跡があるんです」
10月20日夜、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に向け、県がいちき串木野市で開いた住民説明会。会合には429人が参加した。原発の安全対策などについて説明する九電や原子力規制庁の職員に対し、客席に陣取った反原発派からは、事故発生時の避難計画や噴火への対応不備を非難する声が上がった。
反原発派の声高なヤジに、地元住民にも不安が広がる。終了後、市内の男性(71)は「噴火予知はできないと火山学者も繰り返すのに、なんで再稼働するのか。私たちは老い先短いが、子孫のことを考えると規制庁の説明は納得できない」と語った。
住民が不安を抱く火山対策はどうなっているのか。
九電は規制委が25年6月に策定した「火山影響評価ガイド」(火山ガイド)に沿って、川内原発から半径160キロの活火山やカルデラを調べ、噴火の可能性や対策を検討した。
その上で、桜島の噴火などで、原発に火山灰が降り注ぐケースに備え、非常用電源となるディーゼル発電機の吸気口や外気取り入れ口に粉(ふん)塵(じん)を除去するフィルターを設けた。直径0・12ミリ以上の粉塵を90%除去できるという。
敷地内に火山灰が15センチ積もった場合を想定し、北国で除雪作業などに使われるホイルローダーも用意した。南九州で日常的な噴火への備えは、万全を期したといえる。
だが、反原発派やメディアからは「巨大噴火が起きた場合はどうするんだ」との声が上がる。
破局噴火の被害
10月22日、神戸大教授(マグマ学)の巽(たつみ)幸好らがショッキングな研究結果を発表した。
「巨大カルデラ噴火」と呼ばれる火山噴火が100年以内に1%の確率で発生する-。
巨大噴火の発生場所を九州中部と想定した場合、噴火2時間以内に火砕流に呑み込まれ、九州の700万人が死亡。火山灰は本州のほぼ全域に厚さ10センチ以上積もり、全国のライフラインは壊滅する。最終的には、日本の総人口に匹敵する約1億2千万人が死亡するという。テレビでは、日本に破滅をもたらす巨大噴火のシミュレーション映像が流れた。
再稼働が近づく川内原発をめぐり、こうした破局噴火が問題視されるのは、川内原発の東南50キロにある姶良(あいら)カルデラだろう。
地質調査などから、日本が旧石器時代だった2万8千年前に、桜島を含む錦江湾全体が巨大噴火を起こしたとみられる。火砕流は時速100キロという速さで流出し、80キロ先まで到達したとされる。噴火によって誕生したカルデラの直径は20キロに及ぶ。
九電は、南九州にあるカルデラの破局噴火の周期を9万年と試算し、原発運転時期に発生する可能性は十分に低いとした。
さらに九電は地殻変動のモニタリングを通じて、破局噴火発生の予知が5年前に可能だとし、予知した場合、発電を停止して核燃料棒を冷却・搬出すると主張している。
九電のいう通り、破局噴火の予知は可能なのか。
破局噴火は、57人が亡くなった今年9月27日の御嶽山とはまったくメカニズムが異なる。
御岳山は、地下水が地中のマグマで熱せられて高圧の水蒸気となり、周囲の岩石を吹き飛ばしながら噴出する「水蒸気噴火」だった。前兆がとらえにくい分、規模は小さいケースが多い。
これに対し、「破局噴火」「巨大カルデラ噴火」は、地下のマグマが直接、噴出する。こちらはマグマの上昇によって山体が膨張するなどの前兆があるとされる。
今月25日から噴火している阿蘇山(熊本県)は平成5年以来のマグマ噴火で、破局噴火と同種ではある。この噴火に関し、気象台は8月30日、阿蘇山の噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げていた。
鹿児島大教授(火山地質学)の井村隆介は「8月から湯だまりがなくなり、今回の噴火は想定していた。あくまでも定期的な噴火に過ぎない」と分析する。
気象庁の火山噴火予知連絡会副会長を務める清水洋(九州大教授)も破局噴火について「常識的に考えれば、直径2キロにわたるような大量のマグマが噴出するのだから、地盤が割れ、地震が多発するといった前兆は、数年前からでるでしょう」と語る。
清水は九電から、姶良カルデラのモニタリング評価への協力を打診されたが、「電力会社の『お抱え学者』になれば、公正な判断はできなくなる」と断った。電力会社と距離を置く清水でさえ、巨大噴火が予知できる可能性は十分にあると指摘する。
だが、破局噴火は7300年前、薩摩半島から約50キロ南の海中(鬼界カルデラ)で発生して以来、国内で起きていない。火山学者にとって未知の事象であることは間違いない。
予知の可能性が100%でない以上、学者としては「予知できないかもしれない」と言うしかない。
こうした発言が、反原発団体やメディアを通じて発信され、不安感を助長している。まるで、何が何でも再稼働を阻止しようという意図さえあるようだ。
備えるべきリスクは
もちろん、火山のリスクはゼロではない。
だが、姶良カルデラで破局噴火があり、火砕流が川内原発に向かったとして、火砕流は原発の前に60万人が住む鹿児島市を呑み込んでいく。
神戸大の巽のシミュレート通りに進めば、列島を包み込んだ火山灰が太陽光を遮り、首都圏を含め日本は壊滅状態になるだろう。
人間が対応できるレベルを超えた大災害だ。日本が滅びる大災害を前提に、原発の危険性を騒ぎ立てることに意味はあるのだろうか。
この噴火リスクに対し、震災以降の「原発停止」によって、資源小国・日本のリスクが表面化した。
原発を代替する火力発電の燃料費として、年3・6兆円が海外に流出した。電気料金値上げドミノが全国に波及し、景気回復に向けた企業の足を引っ張っている。
「火山国・日本に住む限りリスクはゼロではない。再稼働するのならば、これまで重要視されてこなかった火山の基礎研究を進める必要もあるだろう。だが、数万年に一度の噴火リスクと、原発ゼロによる電気代高騰など経済活動の停滞リスクのどちらを選ぶのか-。選択の材料となるよう、国や九電には、正直にリスクを示してもらいたい」
清水はこう語った。
日本がまず、取り組むべきは、エネルギー不安の解消だろう。
極端な話、エネルギー安全保障をやめて隷属するか、それとも現実主義に立ち左翼的言論を跳ね除けて、原発に力を注ぐしかないでしょうね。
凄い人は、弱そうな人のせいにしますからねw
信じられません。