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第5部(1)アベノミクス、成否を握る原発再稼働 分岐点は夏の参院選 産経より転載

2014-01-08 08:58:17 | (英氏)原発・エネルギー問題

2013年2月13日

 「デフレと円高の泥沼から抜け出せない日本経済の危機。遅々として進まない復興の危機。我が国固有の領土や主権に対する挑発が続く外交・安全保障の危機。この国の歴史や伝統への誇りを失い、学力低下が危惧される教育の危機。このまま手をこまねいているわけにはいきません。今こそ額に汗して働けば必ず報われる真っ当な社会を築いていこうではありませんか。そのためには日本の未来を脅かしている数々の危機を何としても突破していかなければなりません」

 1月28日、第96代首相、安倍晋三は所信表明演説でこう高らかに宣言した。

 平成18年9月26日、史上最年少の52歳で第90代首相に就任した安倍は翌年9月12日、潰瘍性大腸炎の悪化により突如退陣した。保守派の期待は失望と憤りに変わり、安倍は政治生命のほぼすべてを失った。自らも「地獄をみた」と語る。

 ところが、民主党政権の混迷と停滞、そして外交敗北を受け、ジワジワと人気が回復。昨年9月26日に自民党総裁に返り咲き、12月16日の衆院選で自民党は294議席を獲得して大勝、12月26日に再び首相に指名された。まさに「奇跡の復活」だといえよう。

 安倍の復権と歩調を合わせるかのように景気も回復基調に乗った。前首相、野田佳彦が解散を明言した昨年11月14日、8665円だった日経平均株価は今年2月12日には11369円を記録。1ドル79・9円だった円は94円台に下がった。安倍が掲げる「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」の3本の矢が、いかに市場に好感されているかを物語っている。補正予算、平成25年度予算が成立し、日銀が新体制となって大胆な金融緩和策を打ち出せば、今後も景気は順調に回復し、日本は再び国力を取り戻していくかにみえる。

だが、凍てついた日本経済にやっと当たり始めた陽光を遮ろうとする暗雲がある。原発の再稼働の可否である。安価で安定した電力がなければ経済の再生も、生活の再建もありえない。現状では原発の再稼働なくして実現し得ないが、その道はなお険しい。

●円安で膨らむ燃料費

 自動車、機械、電機など日本産業界の骨格をなす輸出産業にとって円安は何よりの朗報であり、雇用拡大や所得増にもつながる。

 ところが、電力会社はそうはいかない。経済産業省が昨年10月に公表した試算によると、原発停止に伴う石油・液化天然ガス(LNG)などの燃料費の増加は年間3・2兆円に達した。消費税1%に相当する国富が海外に垂れ流されているわけだ。

 財務省が2月8日に発表した平成24年の国際収支速報によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は5兆8051億円の赤字、11年の赤字額1兆6165億円を上回り、過去最悪となった。中国、欧州向けの輸出の鈍化もあるが、やはり燃料費の急増が大きな要因となっている。

 九州電力も例に漏れない。玄海、川内両原発の計6基が全面停止し、火力発電用燃料費で毎日10数億円の赤字を垂れ流し続けており、25年3月期は3650億円の最終赤字を見込んでいる。

 しかもアベノミクスの目玉である「2%のインフレ目標」に向けた円安誘導により、電力会社はさらなる打撃を受ける。九電は1円の円安で年間50億円のコスト増となる。九電は平成24年の予想為替レートを1ドル80円で設定しており、1ドル95円になれば、単純計算で750億円も赤字が膨らむ。つまり3650億円の赤字はさらに下方修正される可能性があるのだ。

 電力会社の収益悪化は当然、電気料金として企業や家庭に跳ね返ってくる。

 九電は、今後も原発を再稼働できず、かつ値上げさえ認められなければ、平成25年度中に債務超過に陥る。事実上の倒産状態だと言ってよい。そうなれば、政府の支援なしには資金繰りさえ困難となり、借入金の金利は跳ね上がり、ますます経営を圧迫するという負のスパイラルにる。

 それだけは回避しようと、九電は昨年11月末、4月から家庭向けで平均8・51%の電気料金値上げを政府に申請した。企業向けは平均14・22%の値上げを予定している。

 だが、これらの値上げ幅は為替レートを1ドル79円として算出しており、現在の円安傾向が続けば、この値上げ幅ではとても赤字を解消できない。しかも7月から川内原発1、2号機を、12月以降に玄海原発3、4号機を再稼働することを前提にしている。経産省の専門委員会の試算によると、再稼働できなければ、九電の値上げ幅は家庭・企業向け全体で35・64%に跳ね上がるという。

そうなれば、いくら政府が「アベノミクス」を推し進めようとしても景気浮揚は難しい。不安定かつ高価な電力は企業の国際競争力を著しく削ぐことになる。

 もしそんな現状に耐えかねて大手製造業が国外に逃げ出せばどうなるか。中小企業は次々に倒産するだろう。株式はみるみるうちに紙くずと化す。国は借金の山に押しつぶされ、デフォルト(債務不履行)となる。社会保障制度も崩壊する。影響は欧米など国際社会にも飛び火し、世界恐慌の引き金をひく可能性さえ十分ある。

 電力は産業の血液であり、国民生活の生命線でもある。電力を安価かつ安定的に供給できるか否かはアベノミクスの成否をも握る。さて反原発団体や一部政党が唱える「脱原発」社会は国民に幸せをもたらすのか。「戦後の焼け野原」より酷いのではないか。

●「脱原発は無責任だ!」

 とはいえ、光明はある。何より首相となった安倍がエネルギー問題を「安全保障」だと考えており、安易な脱原発路線が国家を崩壊させかねないという危機感を抱いているからだ。首相就任前の昨年11月12日、産経新聞社と九州「正論」懇話会が福岡市内で開いた講演会で安倍はこう断じた。

 「エネルギーにも大きな不安があります。エネルギーコストがどんどん上がれば製造業は外に出て行く。それを止めなければならない。そのためには電力供給を安定的に行う意思を示す必要がある。民主党政権が『2030年代に原発ゼロにします』と代替エネルギーも確保せずに言うのはあまりに無責任です。我々が政権を取れば、半年以内にきちんとしたルールを規制委員会で作り、安全が確認され次第、再稼働させるべき原発は再稼働させていく。その批判を受け止める覚悟があります」

 この考えは首相就任後も変わっておらず、12月29日には東京電力福島第1原発などを視察し、記者団に「希望を政策にするのではなく責任あるエネルギー政策を進めていく」と明言した。翌30日にはTBS番組で「新たに作っていく原発は40年前の古いもの、事故を起こした東京電力福島第1原発とは全然違う。何が違うのかについて国民的な理解を得ながら新規に作っていくことになる」と原発新増設にも言及した。今年1月30日には衆院本会議で民主党代表の海江田万里の代表質問にこう答えた。

 「いかなる事態においても国民生活や経済活動に支障がないようエネルギー需給の安定に万全を期します。前政権が掲げた2030年代に原発稼働ゼロを可能とするという方針は具体的な根拠を伴わないものであり、原発立地自治体、国際社会や産業界、ひいては国民に不安や不信を与えました。前政権のエネルギー環境戦略はゼロベースで見直し、責任あるエネルギー政策を構築します」

 原発は政治決断で動かす。そんな決意がにじむが、タイムスケジュールは遅々として進まない。

 政府の原子力規制委員会(田中俊一委員長)は2月6日に「世界でもっとも厳しいレベル」だという原発の新安全基準の骨子案を示したが、法制化は7月となる見通し。審査を経て一部の原発が再稼働し始めるのは早くても秋以降だとみられている。規制委は民主党政権が肝いりで作った独立性の高い三条機関だが、なお脱原発を模索する委員やスタッフが少なからずいるとされ、再稼働の最終的な政治決断を妨げる方向に動く可能性は否定できない。

 そして7月には参院選がある。自民、公明両党が勝ち、ここ6年間の政界混迷の原因である衆参ねじれを解消することができれば、政権は安定し、エネルギーを含む多くの懸案は解決に向かうだろう。だが、自公が敗北し、衆参ねじれがますます激しくなれば、政権は求心力を急速に失う。原発再稼働の是非が参院選の争点となり、脱原発勢力が躍進すれば、アベノミクスは瞬く間に破綻するに違いない。自民党の政権奪回により、日本の将来への楽観論さえささやかれるようになったが、本当の意味での日本の分岐点は夏の参院選なのである。

 9月から連載を開始した「九州から原発が消えてよいのか」は第1~4部で、「原発ゼロ」がいかに無謀かつリスクに満ちているかを説き、産業界、そして国民生活にどれほどの災禍をもたらすかを訴えてきた。民主党政権がどれほど無責任かつ場当たり的にエネルギー政策をゆがめてきたか。そして現在の再生可能エネルギーが代替電源となり得ず、脱原発論が巧みに「不都合な真実」を隠してきたかも暴いてきた。

 ではメディアはどうだったのか。原発の是非について果たして責任ある公正な報道を行ってきたといえるのか。第5部では、「エネルギー=安全保障」との観点で原発問題をもう一度検証するとともに、同じメディアの一員として報道の実態を検証する。(敬称略)


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