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第5部(6)メディアの暴風まるで「糾弾集会」 常態化したロングラン会見産経より転載

2014-01-13 10:23:43 | (英氏)原発・エネルギー問題

2013.2.18 08:10 (1/5ページ)九州から原発が消えてよいのか

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 記者A「データがあるなら早めに出してくださいよ! 笑ってる話ですか! 春から出せっていってるのに、出してないじゃないですか!」

 九州電力副社長・深堀慶憲「え…」

 記者A「いい加減にしてくださいよ!」

 深堀「いえ、笑ってるわけでは…」

 記者A「笑ってるじゃないか! 春の会見でも何べんもいってましたよ。ちゃんと情報を出してって。笑ってる場合か!」

 平成23年10月27日夕。福岡市中央区の九州電力本社ビル地下2階で開かれた中間決算の記者会見。開始から1時間経ったころ、Aは罵声を浴びせた。深堀は悔しさに表情をゆがめたが、容赦することはなかった。

 Aは主に経済畑を歩んできた朝日新聞福岡報道センターの中堅記者。記者会見は同年7月に発覚した「やらせメール」問題への対応や、社長(当時)の真部利応が「所用」を理由に欠席したことを質す不毛なやりとりが延々と続き、肝心な決算や経営状態、電力需給に関する質疑はなおざりにされた。

 

「それが九電のやり方か!」

 

 この異様な光景はこの日に限ったことではない。

 23年10月14日、九電は「やらせメール」問題に関する最終報告書を経済産業相(当時)の枝野幸男に提出した。その夕方、真部が出席した記者会見も荒れた。

 記者B「進退について伺います。先ほどから個人の思いとおっしゃいますが、国会の場でおっしゃったのは個人としてですか。公益企業九州電力の代表取締役社長としておっしゃったのではないですか?」

 真部「個人の思いです」

 記者B「個人と社長と使い分けはできないでしょう?」

 真部「個人の思いですから…」

 記者B「(人事を決めるのは)取締役会とおっしゃいますが、これだけ佐賀県をはじめ不信を巻き起こしながら、その人たちよりも取締役を向いて仕事をするのでしょうか?」

 真部「私の進退を決めるのは取締役会…」

 記者B「ですから、これだけ不信を巻き起こしていながら、佐賀県民は考慮せずに、いや考慮しているかもしれませんが、取締役会の方を重視される。そういうことなんですね!」

 真部「今後、信頼回復に努めていくことでお答えしたい」

 記者B「これだけの不祥事を起こした責任をとって辞めるとおっしゃったんですよ」

 真部「いま何の問題を…」

 記者B「辞める理由です!」

 Bもやはり朝日新聞記者。同じような質問を延々と続け、記者会見は予定の1時間を過ぎた。広報室員が「時間になりました」と終了を告げると、今度は記者Aが眉をつり上げた。

 記者A「一方的に打ち切るのはやめてください!」

 真部「私も予定がありますので…」

 記者A「あと数人ぐらいやったらいかがですか。こんな不祥事をしている会社の会見で、一方的に打ち切っていいんですか! それが九州電力のやり方ですか! 予定があるなら予定が終わってからでもいいですよ。ひどいですよ、これは。悪いと思ってない! それでも打ち切るなら、僕は絶対納得ができないですよ。九電の不祥事の会見で1時間で打ち切るんだったら…」

 丁寧語を使ってはいるが、すべて高圧的な怒声である。Aの剣幕に乗じるように他のメディアも次々に記者会見の続行を声高に要求した。

 東京電力のように重大な原発事故を起こしたならば、これぐらい厳しく追及されても仕方あるまい。だが、「やらせメール」はそこまでの不祥事ではない。ましてや記者と親子ほど歳の差がある真部にはどれほどの屈辱だったか想像に難くない。

 すっかり嫌気が差した真部は10月中旬以降、メディアの前に姿を見せなくなった。毎月定例の記者会見もやめた。それでも、四半期決算▽原発のストレステスト結果提出▽火力発電所のトラブル▽節電のお願い-など九電は幾度となく記者会見を開いた。

 その度にAやBら朝日新聞記者5、6人は常に記者会見場の前列を陣取った。もはや九電には記者会見を打ち切る気力もなく、記者会見は2~3時間のロングランが常態化した。

 「社会正義のための厳しい追及」と言えば聞こえはよい。だが、長時間にわたり、細かな同じ質問を繰り返し、相手がひるめば恫喝してつるし上げる手法は「糾弾集会」と変わらない。「いじめ」と言ってもよい。

 平成17年に兵庫県尼崎市で起きたJR福知山線事故ではJR西日本の記者会見に出席した読売新聞記者が「あんたら、もうええわ! 社長を呼んで!」などと罵倒し、大きな社会問題となった。結局、この記者は担当を外され、読売新聞は謝罪記事を掲載した。

 記者Aらの態度と一体どこが違うのか。九電もホームページで過去の一連の記者会見の一部始終を公開してはどうだろうか。

「新聞人の品格」とは

 

 やがて記者Aは転勤となり、記者会見に怒号が飛び交うことこそなくなったが、朝日新聞が前列を陣取り、ロングラン会見を要求する姿勢に変わりはない。

 平成24年11月27日。原発長期停止による火力発電用燃料費増を受け、九州電力は家庭用電気料金8・51%の値上げを申請した。

 同日夜。社長の瓜生道明は記者会見場で、またも複数の朝日新聞記者の質問攻めに遭った。だが、値上げに関する話ではない。

 記者「国会議員への政治献金は現在も続いているのか?」

 瓜生「一切やっていません。先月の会見と同じ質問ですが、同じ回答をしたい」

 記者「1月の(就任記者)会見で政治献金、パーティー券購入は一切しないと踏み込んで回答していた。パーティー券購入(の判断)は個人の範囲というのは後退しているように見えますが?」

 瓜生「後退していません! あの時も個人で買う分には止めないといった。後退はしていない!」

 記者「役員報酬の平均しか公表されていない。値上げ申請する会社のトップがいくらもらっているのか。後ろめたいことがないなら出せるのではないですか」

 瓜生「報酬総額から割り算していただければ、そんなに差はないと思います」

 記者「(衆院選で)脱原発を掲げる政党もある。そういう動きをどう見ていらっしゃいますか?」

 瓜生「政治について何も申し上げる立場ではありません。ただ、エネルギー政策を真剣に、将来の日本をしっかり考えていただきたい」

 翌28日付の朝日新聞朝刊は「値上げ、身を切る努力は 九電社長『再稼働遅いと再値上げも』」という見出しでこう報じた。

 -衆院選で「脱原発」が争点になっている状況について聞くと「政治について申し上げる立場にない」。しかし、実態は違うようだ。九電幹部は国会議員のパーティー券を購入してきた。原資をたどれば電気料金なのに、政治家の名前や購入金額、選定基準も公表しない。この日も「個人でやる分は止めない。パー券は献金ではない」。見直しはされないままだ。-

 また、同日付の「原発リスク、回避策見えず」と題した記事では「(値上げ申請で)原発4基の再稼働を『勘定』にいれたのは、値上げをおさえるだけなく、安全性の判断をまたずに原発の再稼働を既成事実化する狙いもある」と断じた。

 だが、記者会見の冒頭で瓜生はこう語っている。

 「安全対策実施に着実に取り組み、(原子力規制委員会が出す新たな)安全基準に的確に対応する。地元の理解を得て、早期再稼働を目指したい」

 果たしてこれが「再稼働の既成事実化」なのか。九電の非をあげつらうことに血眼になり、「再稼働反対」「値上げ反対」と訴え、原発ゼロのリスクや社会への悪影響はほとんど報じない。これが公正な報道と言えるのか。

 日本新聞協会が定める新聞倫理綱領にはこうある。

 「すべての新聞人は、その責務をまっとうするため、また読者との信頼関係をゆるぎないものにするため、言論・表現の自由を守り抜くと同時に、自らを厳しく律し、品格を重んじなければならない」(敬称略)

 


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