閑人帖

林の中を歩いている時、ふと、なにかの気配を感じて(感じたような気がして)、周囲を見回すと、木の葉や枝が一ヶ所だけ揺れていることがある。微かな風のせいなのだが、これを風の精が通る際に、その羽が触れたからだと言った友人がいた。

「顔に似合わずロマンチックだなぁ」と冷やかすと、「人間の知らない事って、たくさんあるからね。案外、ホントだったりするんだよ」と、なんだか真剣に返してきた。

もし、妖精がいたとしても、人間の目には絶対に触れないでいて欲しいと思ったのである。

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