
圧倒的権力を持っていたヒトラーに抵抗した市井の人々がいたのだ。
歴史的に中世以前からずっと、ユダヤ人は世界各地で差別されてきた。
そういう中で、ドイツで暮らすユダヤ人は、何世代も経て近世になり、ドイツ社会のなかで受け入れられ、第1次世界大戦ではドイツ人として戦い、アンネ・フランクの父、オットー・フランクは中尉にもなり、当時のヒトラーよりも上位の軍人だったという。
また、ドイツに住む多くのユダヤ人は、東欧のユダヤ人ほどユダヤ教の信仰も強いものではなく、むしろドイツ人としてもアイデンティティを抱いていたという。
多分、殆どのユダヤ人は、ドイツ人とトラブルもなく協調しあう市井に日々を暮らしていた。
そこへ、ヒトラーが登場し、ヒトラーは、声たか高に、第1次世界大戦を企んだのも、敗戦になったのも、連合軍からの高額な戦争賠償金も、戦後の恐怖のようなインフレ、失業、食料、燃料の不足も、今、ドイツ国民の苦しみ、窮乏は、すべてなにもかもユダヤ人の陰謀であり、ユダヤ人の所為なのだと、プロバガンダを行う。
失業、インフレ、饑餓に置かれている人々は、「ユダヤ人のせいだ!」声高に、何度も何度も、演出効果までも考慮されたヒトラーの演説や、フィルム、写真などを、日常茶飯事、たきつけられているのである。
人々が、「ユダヤ人のせいだ」と、思っていくのは、防ぎようがないだろう。
しかし、人間のすべてが、そういうプロバガンダを信じた訳ではなかった。
昨日までの隣人や友人や、秘かに助ける人たちもいっぱいいたのだ。
それが、この本。
そして先ごろ、ベルリンのユダヤ人を匿った、フィクション仕立てのノンフイクション映画が上映された。
この映画がそれ。

ナチの将校家にも匿われるメイドとして働いていた少女たちがいた。
ある日のこと、ホームパーティにナチの将校があつまるのだ。彼女たちは平成を装って給仕のサービスをするのだ。
バレたら、それで一巻の終わりなのだ。
こういう危機一髪の糸の上を歩くような生活を、匿い支えたの、ドイツ人は、沢山いたのだ。
だけど、人は、不思議なのです。
チェコやポーランドに居住していたドイツ人が、戦争に負けたドイツへ帰還する途中、200万人ほど、虐殺されてしまった。
現代、イスラエルとパレスチナの間でも、銃の撃ち合いがあるのだ。