昔に読んだ本ですが、調べたいことがあって、本棚から探し出した。
ヘッセ関係は、同じ棚に並べてあるはずが、これは全然違って、ドイツ語関係のところにあった。

表紙を開くと、文字が小さい。
1982年出版の本は、こんなに字が小さかったのかと、真昼間だけど、ライトを点ける。
もう何十年も昔に読んだ本のせいか、内容はほぼ忘却。
まるで初見のように夢中で読む。
ページの間から、はらりと落ちたものがある。
見るとコンサートのチケットである。

1996年のちょうど、今ごろである。
チェリストのフランツ・アマンのコンサート。
ページから、目を移し、窓の外、青空を見る。
ルーテルホールは、その名前の通り教会のホールである。
カリオンがあって、その澄み切った響きが、秋の空に吸いこまれていくようだった。
そんなことを、思い出した。
本を再読していると、まま、こういうことがある。
飛行機のチケットだったり、幼い息子がメモに描いた絵だったりを、発見することがある。
一瞬で記憶が、遡る。
本を持つ私の姿や、「また、本、読んでるの」という幼い息子の姿や声が甦る。
いつも、いつも、本を読んでは、生返事ばかりしていた母親だった。
今ごろ、反省しても、手遅れも甚だしいが。
さて、調べものに、戻ろう。