川端康成の『雪国』で駒子が島村に言う。「そうよ。これから、地吹雪が一晩中荒れる時に、あんた一度、来れないでしょう。雉や兎が人家のなかへ逃げ込んで来るわ」
◆会話文のなかとはいえ、あの文豪も“ら抜き表現”(来れない)を使ったのですね・・という感想はさておくとして、豪雪である。小説は新潟県だが、八甲田山系の温泉地として知られる青森市・酸ケ湯(すかゆ)の雉や兎も人家に避難したい心境だろう。
◆一昨日の午前4時、現在ある気象庁の観測地点では過去最大の積雪566㌢を記録した。
◆道を歩いていた人が屋根に落ちて負傷した―式の話が豪雪地帯ではしばしば語られて旅人を驚かせるが、その積雪量ならば起きても不思議ではない。北国では雪も大切な観光資源で邪険にはできまいが、事故や災害にはどうか用心の怠りなきように。
◆<二月には / 土の中にあかりがともる>。石垣りんさんの詩『二月のあかり』の一節にある。明かりとりとは伊吹のことだろう。海外の、国内の出来事に心を凍らせた2月もきょうで終わる。雪の下の、土のなかにともった明かりが恋しい。 2013.2.28 編集手帳
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます