藤本敏夫さんが亡くなられて10年。
久しぶりに鴨川自然王国へ行って来ました。
風禾(ふうか・1歳半)は初めての鴨川です。
□藤本 敏夫 (ふじもと としお)
1944年1月23日 - 2002年7月31日
学生運動指導者
大地を守る会初代会長
鴨川自然王国初代代表理事
『ぼくの自然王国』
「自然と人間をコミュニケートしてくれるもの」
農業は自然と人間の、ひいては宇宙と人間の
コミュニケーション・メディアなのです。
遠くに住んでいるという人や、
忙しくて鴨川に来ることのできない人でも、
家の裏庭に菜園を作ったりしてほしいのです。
農業を介して、自然と人間のコミュニケーションの
すばらしさが理解できたなら、
たったひとりでも自然王国ができるのです。
以前にも紹介しましたが、藤本敏夫さんの著書の中に福岡さんが登場します。
『やまももの樹に抱かれて
~母と子の自然王国』
藤本敏夫(著者)
出版社:冬樹社
1988年3月18日
しかしここに興味ある話があります。
愛媛県伊予市で、自然農法と呼ばれる農法で、農業を行なっている福岡正信さんという人がいます。
彼の著書である『わら一本の革命』(春秋社刊)によれば、彼は田も耕さず、草取りもせず、農薬も肥料も使わずに、米と麦を毎年作っているのです。
しかも彼が作る米は、反当り一〇俵は収穫し、部分的には十二~三俵は収穫するといいます。
これは愛媛県の多収穫田に匹敵する出来高で、決して近代農法にひけをとっていません。
近代農法をまっ向から否定したやり方で、これだけの成果が上げられるという好例でしょう。
千年前、日本で行なわれていた原始農法はこれによく似たものでした。
三~四百年前、徳川時代になってから、浅く田を耕す浅耕農法が入ってきます。
さらに西洋農法が導入されて、深く田を掘り返すようになったのです。
しかし、この一見原始的とも思える自然農法が最近、農事試験場や大学の研究室でとりあげられ、
もっとも省力的で新しい農法であるということが実証されつつあるのです。
古い時代に行なわれていた方法は、かならずしも非科学的とはかぎりません。
「シンプル・イズ・ビューティフル」という言葉もあるとおり、手間を省いたもっとも単純な方法が最上のものである場合が数多くあります。
たとえば最新科学の枠と思われるスペースシャトルが地球に帰還してくるとき、エンジンをまったく止めている事実をなにかの本で読んだとき、僕は驚きました。
シャトルは地球の引力を頼りに、落ちてくるのです。
もちろん着陸寸前には、エンジンを使うことになりますが、こんな科学の最先端機器にも引力という自然の恩恵を利用し、エンジンを使わないというシンプルな発送の転換が用いられているのです。
福岡さんの実践する自然農法も、そうした意味で非常に勇気ある、固定観念を超えた挑戦です。
僕たちの実践する無農薬・有機農業は、農業の歴史の、第二期にもどることではなく、旧来の生産力主義や効率主義だけをよりどころにするのではなく、地球的、宇宙的なバランスのなかに農業を位置づけ、そこから科学・技術を有効に活用する農業の第四期を展望するものなのです。
そしてそれこそが現代の地球規模の自然破壊をくい止める、新しい道と自負しています。
「温故知新」とはそのための言葉なのでしょう。
もちろん、この方法で収穫する作物が、質、量ともどもに近代農法にひけをとろうはずがありません。