お位牌には、ご命日と生前中のお名前、そして年齢を記入する。
この地方では、満年齢ではなくて、数え年で記入するのが、伝統的だ。
東日本では、満年齢が一般的と聞いているが、西日本では、今でも数え年を用いることが多い。
数え年を使うのは、伝統的な年齢の数え方を踏襲しているのだが、その表示の際に、「行年」「享年」の二つが使われる。
宝泉寺では行年を使っている。聞けば、浄土宗寺院はほぼ「行年」とのこと。
一方、真言宗では「享年」を使うらしい。他の宗派については、調べたことはないのだが、「享年」が多いという話を伝え聞く。
「行年」とは、この世で修行をした年齢を意味している。
「享年」とは、神仏にもらった年齢だという意味である。
ここが、ちょっと面白い。お念仏を唱えて、阿弥陀様の力に任せる浄土宗が、この世での修行期間を表していることだ。
お浄土に往くというのは、死んでいく世界ではない。この世で、人の為社会のためにつくすことしなくてはいけないが、なかなか出来ない。ならば、お浄土に往って、阿弥陀様の御許で修行をし直そうというのだ。
そう考えれば「行年」が合致している。
なお、最近の傾向だが、行年○○歳 と「歳」を入れることが多い。ただ、伝統的には、行年の中に歳の意味が入っているので、用いない。だから、新聞記事などでは、行年○○ とか享年○○ と表示されている。