前兆、あったらしい。
ただ、当時は全然気付かなかった。
介護福祉士の妻と付き合うようになって、初めて知った。
最初の前兆、2017年10月。
母親と愛知県へ旅行に行った時だった。
二人暮らしになってから、毎年旅行に行ってた。
ご当地グルメを堪能し、温泉でのんびりと。
その温泉に入られなかった。
「ドアが開かへんから、入られへんかった」
「あのな、ドアって押すか引くか横にスライドするだけやで。もう一回行ってみいや」
結局、ドアが開かないっつう理由で入浴しなかった。
夕食を堪能して貰い、好きなアルコールも飲んで貰った。
翌朝、男女入れ替えで僕がお風呂へ。
ドアって、横開きタイプだった。
ああ、ホント後悔。
仲居さん呼んで、ドアを開けて貰ったらよかったのに、しなかった。
翌月。
仕事をしていたら、母親とから電話が入った。
「車を車庫に入れへんから、入れに来てる欲しい」
当時は、スズキ・アルトが愛車。
急いで一時帰宅したら、道路を塞ぐ形で放置。
幸いにも、奥は行き止まりの所だったので、ご近所さんには迷惑掛けてない。
「たまたま調子が悪かったんやろな」
この時、母親は71歳。
それで片付けてしまった。
翌月。
公休日に夕食を食べる時だった。
公休日って、ご飯は特別(笑)。
2階から降りてったら、母親から一言。
「◯◯(私の名前)も呼んであげ。皆で一緒に食べよや」
「じゃあ、オレは一体誰がやねん?」
何も気にせず笑い飛ばした。
1週間後。
またまた同じシチュエーション。
夕食の時間に降りて行ったら・・・。
「◯◯(私の名前)の分が足りひん」
流石に2週間連続はヤバい。
無言で2階へ上がり、作業着に着替えて降りてった。
「おはよう、寝てたわ。」
「おはようさん。」
この時、初めて気付いた。
認知症になり始めたかもって。
さっきも言ったけど、まだ71歳の母親。
物凄いショックやった。
翌日、会社の親しい先輩に相談。
「ストーブとか処分しとき。火事のリスク高すぎるわ」
ファンヒーター、慌てて処分した。
125ccバイクも廃車にして、母親が運転していたアルトを私が使うようにした。
ガスレンジも、IHキッチンに変えたった。
40万円弱も要したけど、実家を失ったことのある私。
もう二度と、家は失いたくなかった。
3月。
当時住んでいた地域では、名の通ったと言われてた認知症対応の病院へ。
検査をして貰った結果は・・・。
「腰痛が痛かったから、息子さんを他の人と勘違いしたんでしょうね」
「オレも腰痛持ちやけど、人の勘違いなんかしたこと無いぞ!ええ加減なこと言うなや!このヤブ医者が!」
人生で初めて、医者相手にヤブ医師言うたった(笑)。
薬も何も出なかったから、そのまま放置。
今度は幻視が出始めた。
すでに家出していた男親なのに
「オッサン帰ってくれへんさかい、追い出してや」
なんて言って(涙)。
もうアカン思って、従姉妹叔母に相談した。
奇跡的に、その旦那さんの友人のお兄さんが、市立病院で脳神経内科してるって。
2017年6月、再度診察へ。
母親、メッチャ嫌がった。
「こないだ認知症ちゃうって言われたんや!病院なんか行かへん!」
玄関で、思いっきり尻を蹴飛ばしたった。
ホンマはアカンで、親に手えなり足なり出すのは。
でも、母親のことを思って・・・。
アカンなあ、こうやって自己肯定に走ったのは。
なんとか連れ出して、従姉妹叔母夫婦と4人で市立病院へ。
検査の結果、レビー小体型認知症と判明。
しかも、このレビー小体型認知症って進行が物凄く早いって。
皆さんも御存知でしょうが、認知症を治す薬なんて無い。
あるのは、進行を遅らせるだけの薬のみ。
母親の人生、まだまだこれからって時なのに、一気に絶望的な状況に追いやられた。
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