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テレビ、新聞、雑誌 メディア・ウォッチドック “Media Watchdog”
~“真実”と“正義”はどこに~

安保関連法成立 世論調査 新聞・テレビ・通信社各社比較

2015-09-24 09:44:59 | 評論
安保関連法成立 世論調査

メディア リテラシー “Media Literacy”
新聞・テレビ・雑誌 メディア・ウォッチドック “Media Watchdog”
~“真実”と“正義”はどこに~


 集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法が、19日未明の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決され、成立した。戦後日本の安全保障政策は、歴史的な大転換をした。

 新聞、テレビ各社は、この安全保障関連法の成立を世論はどう受け止めたか、安倍内閣の支持率がどうなったのか、19日、20日で世論調査を行い、21日に紙面やTVニュースで、いずれも速報した。
 NHKニュースでは、世論調査を実施せず、安全保障関連法の成立に関する世論の動向を伝えていない。

 9月21日のNHKニュースの“看板”、「ニュース7」の項目を見よう。
 「ニュース7」は、NHKのニュースに中でも“特別”な地位を与えられているNHKを代表するニュースだ。
 「ニュース7」の“見出し”は、「この夏の猛暑」、熱中症になる人が相次ぎ、「認知症」の高齢者の搬送が相次いだというニュースである。
 続いて下記のようなニュース項目を伝えている。

▼ 「埼玉・熊谷 6人殺人事件」 
    逮捕状の男 前橋から電車で移動
▼ 「電動車いす 介護ベッド 高齢者の使う介護用品」
     5年間で49人死亡
▼ 「熱中症で搬送 49万8千人(全国)」
     その半数が65歳以上の高齢者
▼ 「関東・東北豪雨」
     復旧に向けた動き進む
▼ 「枯れ木も山のにぎわい」
     文化庁の行った国語調査 誤って理解している人 半数近く
▼ 「原発運転の未経験者」
     川内原発で約40% 安全のために人材確保課題に
▼  フラッシュ・ニュース
「難民10万人受け入れ アメリカ拡大を表明」
「フォルクスワーゲン謝罪 米の排ガス規制で不正指摘」
「佳子さま慰霊碑に献花」
「宮沢賢治をしのぶ会」
▼ スポーツ
「ラグビー・ワールドカップ 日本代表練習」
「大相撲結果」
「プロ野球」
▼ 天気情報

「ニュース7」では安全保障関連法関連のニュースは何も伝えていない。
一方、「ニュースウオッチ9」では安全保障関連法案関連ニュースを取り上げている。
安保関連法は、日本の安全保障政策の歴史的な大転換という認識には異論はないだろう。その安保関連法成立にあたって、世論がどう受け止めたかは、最も重要な情報である。週末に世論調査を実施して、安全保障関連法の成立を世論はどう受け止めたか、安倍内閣の支持率がどうなったのか、月曜日の21日に結果を速報するのがメディアの“責務”だろう。とりわけ安倍内閣の支持率がどうなったか、政治家だけではなく、国民全体が注視していた。安倍政権に厳しい評価が出るのを勘案して、世論調査を実施するのを見送ったのではないかという疑念さえ生まれる。
NHKは9月14日の安全保障関連法の採決がヤマ場を迎えた時に、世論調査を実施している。結果は、「安倍内閣への支持率は6ポイント上昇して43%」、三か月ぶり“支持しない”を上回ったと報道している。参議院の“強硬採決”後、安倍内閣の支持率がどうなったかは重要な情報ではないと思ったのだろうか。定例で実施している世論調査で報道すれば充分というニュース判断だったのだろう。お粗末な編集判断だ。
「日本の安全保障政策の歴史的な大転換」の“節目”なのである。
「この夏の猛暑」が「ニュース7」の“見出し”ではない。「枯れ木も山のにぎわい」のニュースに方がニュース・バリューがあるのか? ニュース7の“看板”が泣いている。
国民が知りたがっている情報に答えようとしない報道機関はジャーナリズムとして“資格”がない。
NHKは、5月26日に始まった安全保障関連法案の衆院本会議での代表質問などを中継しなかった。「必ず中継するのは施政方針演説などの政府演説とそれに関する代表質問というのが原則」と説明する。さらに7月15日の衆院平和安全法制特別委員会の締めくくり質疑を生中継せず、視聴者から抗議や問い合わせが相次いだ。そして、また“失態”を犯した。

 これに対して、新聞各社は、いずれも週末の19日と20日に世論調査を実施して、安保関連法成立にあたって、世論がどう受け止めたか、安倍内閣の支持率はどうなったのかを、21日の紙面で速報している。

▼ 朝日新聞
  「安保法、反対51%・賛成30%」
安保関連法に「賛成」は30%、「反対」は51%で、法律が成立してもなお反対が半数を占めた。国会での議論が「尽くされていない」は75%、安倍政権が国民の理解を得ようとする努力を「十分にしてこなかった」は74%に上った。
 内閣支持率は35%(9月12、13両日の前回調査は36%)で、第2次安倍内閣の発足以降、最も低かった。不支持率は45%(同42%)だった。

▼ 毎日新聞
「安保成立『評価せず』57% 強行「問題だ」65%」
成立を「評価しない」との回答は57%で、「評価する」の33%を上回った。参院平和安全法制特別委員会で与党が強行採決したことに関しては「問題だ」が65%を占めた。安倍内閣の支持率は8月の前回調査より3ポイント増の35%、不支持率は同1ポイント増の50%。不支持が支持を上回る傾向は変わっていない。

▼ 読売新聞
「内閣支持41%、再び不支持を下回る…」
安倍内閣の支持率は41%で、前回調査(8月15~16日)から4ポイント下落し、不支持率は51%(前回45%)に上昇した。安保関連法の衆院通過後の7月調査で、内閣支持率は2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、初めて不支持率を下回った。前回調査では支持率と不支持率が並んでいたが、今回は再び逆転した。
 安保関連法の成立を「評価しない」人は58%、「評価する」は31%だった。安保関連法の内容について、政府・与党の説明が不十分だと思う人は82%に達した。内閣支持率の低下は、安保関連法への理解が進んでいないためとみられ、政府には法成立後も、丁寧な説明が求められている。
 安保関連法の成立で、抑止力が高まると答えた人は34%で、「そうは思わない」は51%だった。

そして内閣支持率が4%と小幅な下落にとどまったことについて、記事では「政府・与党内には安堵感も広がった。安倍首相周辺は『支持率の下げ幅は想定の範囲内だ。経済対策で反転攻勢に出る』と語った。首相も20日、周辺に『次は経済だ』と述べた」としている。
 また「民主党の岡田代表は秋田市で安保関連法について、「『廃止にすべきだ』という民意がはっきりした」と記者団に述べ、政府・与党批判を続ける考えを示した。党幹部は「支持率は10ポイントくらい下がるとみていた。意外だ」と語った。党内には「反対論に終始し、対案を出せなかった。国民の支持が広がらなかった」(保守系議員)との危機感もある」と伝えている。

▼ 産経新聞・FNN
「安保法制整備は7割が『必要』でも、安保法案成立『評価しない』が6割」
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が19、20両日に実施した合同世論調査によると、集団的自衛権の行使を限定的に可能にする安全保障関連法の成立について、56・7%が「評価しない」と答えた。「評価する」は38・3%だった。一方、日本の安全と平和を維持するための安保法制整備については、69・4%が「必要」と答え、「必要ではない」は24・5%にとどまった。
  安倍内閣の支持率は42・6%で、前回調査(12、13両日実施)より0・9ポイント低下。不支持率は47・8%で3・3ポイント上昇した。
 記事の“見出し”は、「安保法案成立『評価しない』が6割」が後ろにきて、「安保法制整備は7割が『必要』」が前面に出しているのが、いかにも安保関連法を支持している産経新聞らしい書き方である。
 世論調査には、設問の仕方によって、回答の内容が著しく変わるので、回答結果の数字だけでなく、「設問」を検証することも必須である。
 「安保法制整備は7割が『必要』」の調査項目の設問は、「あなたは、日本の安全と平和を維持するために、安全保障法制を整備することは、必要だと思いますか、思いませんか」であある。今回の安保関連法案について聞いているのではなく、“一般論”として「安全保障法制の整備」の必要性について聞いているのである。次元が違う設問の設定である。筆者は、やや“公正”な姿勢を欠いた世論調査と思うが……。

▼ 日本経済新聞
「内閣支持40%に低下、安保法54%評価せず」
 安倍内閣の支持率は40%と、8月末の前回調査を6ポイント下回った。不支持率は47%で7ポイント上昇し、再び支持、不支持が逆転した。安保関連法の今国会成立を「評価しない」は54%で「評価する」は31%にとどまった。

▼ 共同通信
 「安保法の審議不十分79%」
 共同通信社が19、20両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、安全保障関連法に「国会での審議が尽くされたとは思わない」の回答は79・0%、「尽くされたと思う」は14・1%だった。安保法への安倍政権の姿勢に関し「十分に説明しているとは思わない」は81・6%、「十分に説明していると思う」は13・0%で、政府への根強い不満が浮き彫りになった。内閣支持率は38・9%で8月の前回調査から4・3ポイント下落、不支持率は50・2%。
 安保法成立で自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は68・0%。「変わらない」は27・1%、「低くなる」は2・5%だった。

また関連記事で「安倍政権は『内閣支持率の30%台後半への下落は想定内だ』(幹部)と冷静に受け止める一方、強い反対世論が持続すれば、来年夏の参院選に影響しかねないと警戒」と伝えている。

 テレビ放送各社の対応はどうだったのだろうか。
 9月21日、テレビ各社は各局とも、週末に世論調査を実施し、ニュースで安全保障関連法案成立後の世論の動向について速報している。

▼ 日テレニュース24
「緊急世論調査 安保成立『評価せず』58%」
 
日本テレビと読売新聞が19・20日に行った緊急世論調査で、安保関連法が成立したことに「評価する」が31%だったのに対して、「評価しない」が58%に上った。また82%の人が政府・与党が安保関連法の内容を国民に十分説明したと思わないと答えた。

▼TBSニュース(JNNニュース)
「安全保障関連法、76%が『審議不十分』 JNN緊急世論調査」

集団的自衛権の行使を可能にすることなどを柱とする安全保障関連法が19日成立しましたが、国会での審議について、76%の人が「不十分」と考えていることが、JNNの緊急世論調査でわかりました。
安保関連法が、19日、成立したことを受けて、JNNは緊急世論調査をこの土日に行いました。
 それによりますと、安保関連法が成立するまでの国会での審議について、「十分だった」と答えた人が16%、「不十分だった」と答えた人が76%でした。また、安保関連法が成立したことについて、「評価する」と答えた人が33%、「評価しない」と答えた人が53%でした。
 安倍内閣の「支持率」は2週間前の前回調査より0.8ポイント下がって46.3%、「不支持率」は前回より0.7ポイント上がって52.5%でした。

▼テレビ朝日ニュース(ANNニュース)
内閣支持率が低下 約8割が「安保法の説明不十分」
(2015/09/21 11:46)

安倍内閣の不支持率が支持率を再び上回りました。安全保障関連法の成立を受けて行ったANNの緊急世論調査で、安倍内閣の支持率は3ポイント近く下げ、37.1%でした。一方、不支持率は7ポイント近く上昇し、45.4%でした。第2次安倍内閣が発足してからこれまでに支持率と不支持率が逆転したのは、衆議院で安保関連法が可決された7月以来で、先月、いったん持ち直した支持率は再び過去最低の水準になっています。

 安保関連法に賛成の人は先週に比べて2ポイント上回って27%で、反対の人は4ポイント下がって50%でした。また、安保関連法について、依然として8割近くの人が「安倍内閣の説明は不十分だ」としています。一方、民主党など法案に反対した野党が2日半余りにわたって採決の引き延ばしを図ったことについては、6割近くの人が「評価しない」としています。また、政党支持率では自民党が7ポイント余り下げて、第2次安倍内閣発足以来、初めて4割を切りました。

▼フジテレビニュース(FNNニュース)
安保関連法の整備「必要」と考える人はほぼ7割に
09/21 11:57

FNNがこの週末に行った世論調査で、安全保障関連法の整備が「必要」と考える人は、ほぼ7割に達する一方で、審議が尽くされたと思わない人が、8割近くにのぼることが明らかになった。
調査は、9月19日と20日に、電話調査(RDD)で行われ、全国の有権者1,000人が回答した。
安倍内閣を支持する人は42.6%、支持しない人は47.8%で、先週の調査に比べて、不支持率がやや増えた。
焦点の安全保障関連法が、この国会で成立したことについて、「評価しない」と答えた人は56.7%と、6割近くに及ぶ一方、「評価する」と答えた人も38.3%と、4割近くに達した。
また、安全保障法制の必要性については、ほぼ7割にあたる69.4%の人が「必要」と答え、「必要ではない」と答えた人(24.5%)を大きく上回った。
国会での審議について、十分に尽くされたと「思わない」と答えた人が、ほぼ8割の78.4%に達し、一方で、野党は、役割を果たしたと思うかとの質問に、ほぼ8割の人が「思わない」と答えた(76.1%)。
また、委員会採決の混乱の責任について、6割近い人が「与党・野党両方にある」と答えた(57.2%)。
安保への反対集会やデモについて、「共感しない」と答えた人が50.2%で、「共感する」と答えた人(43.1%)をやや上回る結果となった。


 民放各社の主要ニュース番組も、安全保障関連法成立後の世論の動向等についていずれも取り上げている。
 
▼ 日本テレビ 「情報ライブ ミヤネ屋」
「拍手と怒号の中 国民・世界はどう見た?」
週末の緊急世論調査の結果を報道

▼ フジテレビ「みんなのニュース」
「国会不信さらに “暴行疑惑”も浮上 国会混乱の余波」
山梨でゴルフを楽しむ安倍総理 61回目の誕生日
国会前の雑感
FNN世論調査の結果も報道

▼ テレビ朝日「報道ステーション」
“選挙権18才”で高校生は 安保法成立後も続くデモ
山梨でゴルフを楽しむ安倍総理
野党の動き
緊急世論調査の結果
元陸軍通信兵の思い
コメンテーター 木村草太氏

▼ TBS「ニュース23」
国会審議「不十分」が76%
国会前の反対派のデモ
週末に各地で開かれた安保関連法案反対のデモや集会
世論調査の結果

▼ 日本テレビ「NEWS ZERO」
政権発足1000日=誕生日に 節目にゴルフ 安倍首相
世論調査の結果
今後の政治日程


 “世界に冠たる「ニュース7」”と自負しているNHK、その“看板”はどこにいったのか?
 視聴者が知りたがっているニュース情報に目をつぶっては決してならない。
 安保関連法が成立したからといって、日本の安全保障を巡る課題は決して終結していない。共同通信の世論調査では、安全保障関連法に「国会での審議が尽くされたとは思わない」の回答は79・0%、安保法への安倍政権の姿勢に関し「十分に説明しているとは思わない」は81・6%、安保法成立で自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は68・0%と、国民はこの法案に納得していない。NHKは実施していないが、各社の世論調査でもほぼ同様の結果が出ている。
 こうした国民の声に、NHKはどう答えるのか。安全保障関連法成立後のフォローに真摯に取り組む姿勢をどう示すのか? ジャーナリズムとしての真価がまさに問われている。





2015年9月21日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
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