村上春樹再読計画4冊目 『1973年のピンボール』
村上さんの2冊目の長編小説。
この記事は内容のネタバレを含みますので、ご注意ください。
この本は『風の歌を聴け』の次に書かれたもので、ストーリーは関連しています。
鼠三部作と言われる本の2冊目。
『風の歌を聴け』は1970年の夏に僕の故郷の街での話でした。
この本では1969−1973って書いてある。僕は東京、友達の鼠は故郷の街に住んでいて、二人の話がだいたい交互に語られます。
この交互に違う話が並行して語られるというのは村上さんの本ではよくあるパターンだなと思うけど、この本がその始まりだったのですね。
僕はこの本の中でも彼女を失って喪失感を抱えています。
この本で名前が出てくるのはその彼女のみというのも印象的。
そして、彼女の名前はのちに『ノルウェイの森』に出てくる直子さんと同じです。
(それに気づいたのも今回が最初でした)
直子さんは何も言わずに世を去ってしまう。
直子さんの死は理由がはっきりしないため、僕は自分の喪失感とともに責任も感じているのだと思われます。
題名にあるピンボールはストーリーが少し進んでから出てきますが、ピンボールマシーンって見たことない人には想像しにくいのではないかしらと、今になると思いました。
ある程度の世代以上の人はどこかで見たことあったり、ゲームとしてやったことがあったりしたと思うけれど、そう言えば今はどこにもないような。
私もだいぶ前に何回かやってみたことあるけど、独特の重量感があって重い球をまずバネでビヨーンと押し出したり、バンパーに当たって跳ねる感じとか、玉が落ちてこないようにフリッパーを操作して跳ね返す感じとか、派手な色彩とか音とか感触とかが印象に残っています。
僕とあるピンボールマシーンとの出会いと別れと再会がこのストーリーの中で重要な要素です。
直子さんを失った後にピンボールマシーンにハマるけれど、それも突然なくなってしまう。でもピンボールとはまた再会してきちんと決別できる。
直子さんとはきちんと決別できなかったけど、ピンボールとの再会ときちんとした決別で少しの区切りが付いたのかなと勝手に思いました。
一緒に暮らしていた謎の双子もその時点で離れていくのだけど。
私はこの謎の双子の女の子は本当にいたのかしら?と感じました。
本の中では違和感とともに急に現れた双子の女の子としばらく一緒に暮らすのだけど、あまりに現実感がないので、私の中ではこの二人は僕が作り出したのではないかなって思えたのでした。
そして、鼠。
鼠は裕福な家の人で、大学をやめてからも一人でいい部屋に住んで、車を持っっていて、お酒を飲むお金も苦心していない様子。
しかし、僕よりもさらに深い虚無感の中にいるよう。
鼠は変わらずジェイズバーでビールを飲み続けてるの。
絶対に飲みすぎです。。
そして付き合ってる女の人がいて、とても好きなようだけどそれ以上には進めない。
25歳になった鼠は自分の生活を変えるために街を出ねばと決心する。
そして、どこに行こうかと迷うのですが。
最後に街を出て行こうと車で海を見る場面で終わるのですが、こちらには希望が感じられないのです。
私には僕の方のストーリーの方はなんとな〜くわかったような気がしました。
しかし、鼠の絶望と苦悩がなんなのかははっきりしない。
この鼠三部作に出てくる鼠はもう一人の村上春樹であるという見方があるとのコメントをくださった方がいらっしゃいました。
なるほど、そういう見方もあるのねと思いました。
でも、私にはまだまだ良くわかりません。
そして、村上さんの本は中心のストーリーからずれたサイドストーリーが結構語られるのだけど、その部分が印象的だったりする。
それが何を示しているのか、あるいは何も示していないのか、ますます色々と混迷(笑)
でも今回の再読で、ただサラッと読むだけでなく、分からないなりに色々と考えるというところまで、やっと到達したように思います。
そして、それが不思議に楽しい。
丁寧に読む大切さを感じています。
やっとスタートラインに立ったような気持ち。
鼠三部作の3作目『羊をめぐる冒険』読んだら、何か分かるかな。
それともさらに分からなくなるかな。
分からなくなる方が可能性が高いけど、楽しみです。