ロマノフ王朝最後の第4皇女アナスタシアが存命していたという噂は、ニコライ2世は処刑したが家族は生きているというレーニンの発表もあって急速に広まっていきました。
ある時期、第一次世界大戦でのドイツ帝国との講和を目指して、ホーエンツォレルン家に繋がる皇妃とその子どもたちを取引に使おうという思惑がロシア革命政府にあったことは確かです。
この著作では、アナスタシアを名乗る者が多かった時代に、最も信憑性のあったアンナ・アンダーソンの話を支持しています。
実際に元側近の何人かはアナスタシアに間違いないと信じてもいました。またロマノフ家の遺産相続が絡むことから様々な憶測がなされました。
今日ではDNA鑑定が行われ、アンナ・アンダーソンは皇女とは別人ということになっています。(検体が偽物だったという反論もあります)
また事故で意識不明、記憶喪失となっていたアンナ・アンダーソンには初めから計画的に嘘をつく意図はなかったとされています。
DNA鑑定で血縁かどうかが判明する便利な時代です。
しかし古今東西、特に王朝の血縁については様々な想像がされ、それが物語となり、歴史の面白さを形成してきたことも確かです。
生きているかも知れないと期待され、人々の想像力をたくましくさせた皇女アナスタシアの一件は幕引きとなってしまいました。
想像力を働かせる暇もなく結果が判明してしまう現代に、多くの謎や神秘や迷信は色褪せてしまうのかも知れません。
わたくしは、人間から想像力を発揮する機会を奪うことが果たして本当に人間のためになるのだろうかと疑問に思います。
(下2枚の写真は、窓に映るロシア料理店キエフの灯りです)