21世紀のダニー・ハサウェイことフランク・マッコムのライヴを観賞。昨年、一昨年とコットンクラブだったが(その時のライヴ・レポはこちら→2008年、2007年)、今年は横浜のモーションブルーのみ。初日の2ndステージだったが、平日というのと横浜とはいえ赤レンガ倉庫とやや遠いということもあるのか、入りは全体の6割ほどか(50、60人くらい?)。ブルーノートよりもこじんまりとしているが、センターの座席は二人がけソファシートを交互に配置するなど、オシャレな空間として機能させていた。
近年のフランクは演奏の占める割合が高いと、昨年、一昨年のライヴ・レポでも記したと思うが、この日もその傾向は変わらず。無邪気に鍵盤を転がすようにポロロンと弾き始めると、エレピのなんともいえない幻燈のような淡くおぼろげな色彩の音色が響きわたり、一気に観客を魅了する。
バンドは前回同様来日のジェー・ディールがベースとキーボード(シンセ・ベース)、ロバート・ミラーがドラム、そこにスペシャル・ゲストとしてトランペッターのTOKUが参加する。TOKUはつい先日、多和田えみ、VERBAL(m-flo)をそれぞれゲストに迎えた公演を終えたのだが、その余韻のまま、フランクのステージに乗り込んできたという感じだ。
序盤早々に、スティーヴィー・ワンダー「迷信」でのやや掠れ気味のヴォーカルを聴けば、スティーヴィーの佇まいを想い出すし、この時期だからこその選曲といえるダニー・ハサウェイ「ディス・クリスマス」には、目を耳を釘付けにさせる力が漲っている。そして、『ライヴ・イン・アトランタ Vol.1』での約15分にもわたる長尺演奏でもお馴染みの「ドゥ・ユー・リメンバー・ラヴ?」を、ここでは短尺ヴァージョンで披露(といっても5分以上は演奏していたが)。
アンコール後は、これまたスティーヴィーの「リボン・イン・ザ・スカイ」を生ピアノで。毎年同じような構成なのだが、一旦弾きはじめると、その手の動きに吸い込まれるような感じになるのが不思議だ。実際に鍵盤を叩いていない時の、次の鍵盤へ移行する時のあの間でさえ、どこか芸術的でさえある。しなやかな指、繊細な腕、とは程遠いのだが、その鍵盤さばきや佇まいには、会場の空気や人の琴線に触れる魔力が備わっているようだ。
ただ、充分過ぎるほどの才能が溢れているのが解かるだけに、やっぱりもっと歌って欲しいし、バンドもホーンやコーラスをを配して聴いてみたいのが本音。アルバムも『ライヴ・イン・アトランタ Vol.1』以降リリースがないし(オリジナルでは2004年の『ザ・トゥルース』以降なし)、このまま寡作になってしまうのは惜しい。
『ザ・トゥルース』ではレディシとも共演している訳だし、レディシとのカップリング公演とか(以前は、ブラン・ニュー・ヘヴィーズ『ウィ・ウォント・ストップ』に参加したサイ・スミスを連れてきたように)、新たなパッケージの形としてでもいいので、是非この麗しきメロウ・グルーヴの世界を、多くの人に知ってもらいたいものだ。
◇◇◇
<SET LIST>
01 Linus & Lucy
02 Superstition (Original by Stevie Wonder)(*)
03 Gotta Find A Way(*)
04 Cupid's Arrow(*)
05 Fools
06 This Christmas (Original by Donny Hathaway)
07 Do You Remember Love? (Including "You Got It Bad Girl" by Stevie Wonder)(*)
≪ENCORE≫
08 Ribbon in the Sky (Original by Stevie Wonder)(*)
(*):Special Guest with TOKU
<MEMBER>
Frank McComb(vo,key)
Jae Deal(b/key)
Robert Miller(ds)
Special Guest
TOKU(tp)
◇◇◇
今日は、フランクのハニーと思しき人がステージ右横のテーブルで座って観ていたので、フランクも彼女に語りかけるようにして歌っていた場面もあったなぁ。
それと、“ソウルサーチャー”で知られる音楽評論家の吉岡正晴氏らしき人も発見。ついこの間まで持ち歩いていた『マーヴィン・ゲイ物語』を持っていたら、あわよくばサインしてもらえたかもとか思ったり。こちらも素敵なレディ連れでありました。
赤レンガ付近の風景でも。
只今の期間は、赤レンガでアイススケート場が出来ていたりします。
万国橋から臨む、横浜高層ビル群と観覧車のピンボケ写真。
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