夢への強い意志が導くトライアングルの強度と、ファンとの絆。
雨模様から一転強い日差しが照らすなか、絢爛な装飾で賑わう銀座の街並みを見渡しながら足早に歩を進めてヤマハ銀座店へ。さまざまな人種の観光客が行き交う風景の中、ちらほらとグッズのTシャツを身に着けて整列している人々の後ろを追って地下2階へ向かうと、今や遅しと待ちわびるファンたちの姿が目に飛び込むフロアへ辿り着いた。
以前、ひょんなことから1枚のCDを手にしたのをきっかけに(その詳細はこちら→「近況注意報 0505 音楽篇」)、一度はライヴを観賞してみたいと思っていたガールズ・ユニット、callmeのワンマンライヴ〈Ultra callme Musical scale〉の第2部を観賞。スタンディング250名という空間をぎっしりと埋めるまではいかなかったが、後方まで熱心なファンが集結。この日は13:30より第1部があり、その終演後には特典会なども行なわれていたようで、あまり第2部までのインターバルはなかった模様だ。
開演時刻の17:30を数分過ぎたところで暗転し、インストによるイントロダクションを経て初っ端からテンション高めにメンバーがステージイン。リーダーのRUUNAを中央に、右からKOUMI、左からMIMORIがそれぞれの腕をRUUNAの前に被せるようにした静止ポーズから「Peaceful world」がスタート。KOUMIが「今日は(日本代表の試合があるから)“サムライブルー”の衣装なんですよ」(実は偶然らしい)という鮮やかな青を基調にサイドが白というツートンカラーでまとめたフレアスカート調のワンピース姿の3人が、第1部の余熱冷めやらぬなか、さらなる熱を帯びてパフォーマンスを展開していった。
続く「Way I am」で早速フロアからクラップが鳴り響くのだが、オケのリズムとオーディエンスのクラップのリズムの微妙なズレを感じてしまった。というのも、彼女たちの楽曲はなかなか手が込んでいて、この「Way I am」などは即興風のジャズ・アレンジが施されていることもあり、拍の取り方が難しい。ステージ上の3人に乱れはないのだが、オーディエンスのクラップのちょっとしたタイミングのズレから楽曲の難易度を体感した。直後の「My style」で“Only oneなスタイル Beat踏むlife”“誰にも真似なんてできない”などと歌ったものだから、なおさらだ(笑)。
中盤に音源をバックにダンスのみを披露した「In my dream」のリミックスなどはダブステップなどエレクトロニックな要素もあり、その曲風からPerfumeのような色合いを感じる場面もあるゆえ、3人組という部分も含めて、一見Perfume路線と見紛う向きもあるかもしれないが、よく聴けばcallmeがPerfumeのベクトルとは異なることが判る。Perfumeは大雑把に言えば、中田ヤスタカによるエンタメ性を具現化するテクノ・ポップ・パフォーマーだが、callmeはダンス・ポップ・サウンドを軸としたダンス&ヴォーカル・グループで、PerfumeというよりもむしろSPEEDやFolder(Folder5)の発展形といった方が近い。つまりはヴォーカル・グループということだ。また、MIMORIが楽曲制作を、KOUMIがダンスを担当するなどセルフコンテインド・グループに近いスタイルということもあって、楽曲の咀嚼や吸収の度合いも高く、絶妙な距離感でトライポッドを形成する以上に一体感を備えている印象だ。
後半はコール&レスポンスが楽しい「Sing along」、ダビーにうねるボトムや軽快に跳ねるセッション風鍵盤などのアレンジが映える「One time」、クラップとジャンプやコールで胸躍る「step by step」、恐れないでトライし続けようというエールを4つ打ちに乗せた「Don't be afraid」と集ったファンとの一体感をより高めていくような構成で進行。合間には6月14日に22歳の誕生日を迎えたMIMORIへのセレモニーも行なわれ、“オチ”がないのに話が長いMIMORIをRUUNAとKOUMIがいじるといった和気あいあいなシーンも。ただ、それだけでなく、MIMORIが「私にはcallmeしかない。もっと大きな夢へ近づけるように楽曲制作とcallmeを頑張りたい」と語れば、RUUNAやKOUMIも同じくcallmeとして夢を掴むためにやり切りたいと告げるなど、彼女らの確固たる想いや決意のメッセージに、オーディエンスも大きな拍手で応えていた。
ラストは「どの曲を最後にしようか悩んだけれど、満場一致で私たちのことを表わしている歌を」ということで10分超の大曲「It's own way」で幕。この曲こそがcallmeといっても過言ではないと言わんばかりの鋭い眼差しと精魂込めたダンスで真摯にステージで舞う3人と、それを見届けながらもクライマックスには歓声と掛け声をこだまさせるオーディエンスの姿に、演者とファンとの強い絆のようなものを見た気がした。
ショートカットのRUUNA、ポニーテールのMIMORI、ロングヘアのKOUMIとルックスからもそれぞれのキャラクターを持ち、個性の明確化にも成功。身勝手な物言いで言えば、宝塚OGの女優風の涼しげな顔立ちのRUUNAはその所作がやわらかく、表情がくるくると変わって人懐こいMIMORIは小柄ながらインパクトの強いキレを持ったトランジスタグラマー、おっとりとした風だが眼力が強いKOUMIはダンスを担当するだけあって動きに無駄がないなど、ダンスにおいても上手い具合に棲み分けが出来ている。
高い次元でパフォーマンスを繰り広げている彼女たちだが、それゆえ欲を言えば、ヴォーカルがやや気になるか。といっても、悪い意味や歌唱の質ということではなく、ヴォーカルとしての個性の色や表現力がダンスと比べると物足りなさも残るという些細な点。KOUMIがラップを受け持ったり、メインとコーラスのパターンを複数持つなど工夫はもちろんあって、激しく複雑なダンスを組み込みながら歌唱するスキルは見事で、日頃の鍛練の成果も窺えるなど目を惹くが、ところどころダンスをタイトに詰め込み過ぎて、ヴォーカルの奥行きがいくらか不足して見える感じがしなくもない。ヴォーカル、ダンスともに常にタイトに攻め立てるスタイルも一つの手で、彼女たちの強みでもあるが、楽曲によっては“間”をもたせてグルーヴを生み出せると、よりメリハリを持ったヴォーカルワークを披露出来るようになるのではないか。“引き算”による“タメ”と緩急を活かすことで、グループとしての表現力や訴求力にも厚みが生まれるはずだ。
と言ってはみたが、自作自演家グループとして積み重ねてきたトライアングルは既に揺るぎない強度を発揮している。このバランスを崩さずに維持していることには自信を持っていい。このライヴを終え、次は彼女ら自身初の海外ステージとなる仏・パリでの日本文化の総合博覧会〈ジャパン・エキスポ〉に出演とのこと。いつか世界へ出るためにと楽曲名を英語にしてきたという自負もある3人が海外でどう受け止められるか、そして、海外遠征を経てどのような成長を遂げるのかは、ファンならずとも注目したいところ。それを確かめるべく、帰国後には再びライヴに足を運ぶつもりだ。
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<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Peaceful world
02 Way I am
03 My style
04 You don't know me
05 I like you
06 In my dream(Remix)
07 For you
08 Summer of love
09 You'll be fine
10 Sing along
11 One time
12 step by step
13 Don't be afraid
14 It's own way
<MEMBER>
callme are:
RUUNA(秋元瑠海)
MIMORI(富永美杜)
KOUMI(早坂香美)
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