*** june typhoon tokyo ***

小柳ゆき@ZEPP TOKYO

Koyanagi_yuki未完のディーヴァ。

日本のリアーナこと小柳ゆきのライヴ“YUKI KOYANAGI LIVE 2006”をZEPP TOKYOに観てきた。実力派ヴォーカリストであるのに、最近はあまり見かけなかった彼女だったが、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、また、ファースト・インパクトが単にでかすぎただけだったのか…。それを確かめるべく、お台場まで行って来た。

◇◇◇

今でこそ百花繚乱のJ-R&Bシーンだが、10年も経たない前は、女性ヴォーカリスト、特にブラックな薫りを持った“ディーヴァ”と呼ばれる飛び抜けた存在はいなかった。(海外で活躍していたソウル・シンガー、mimiこと宮本典子がいたとはいえ、日本で群を抜いた知名度があった訳ではなかった)

そこに登場したのが、98年2月「つつみ込むように...」でデビューしたMISIAだ。超ハイトーン・ヴォイスを繰り出すその規格外の迫力に度肝を抜かれ、“日本のマライア・キャリーは彼女か”と、思ったほどだ。

しかし、その年の12月に、超新星が現れた。MISIAほどの声量や声域の幅はないが、表現力豊かなグルーヴ感たるや、そのセンスにとてつもないものを感じた…「Automatic / time will tell」でデビューした宇多田ヒカルである。

さらに、98年4月に歌手デビューはしていたが、翌年1月リリースのアルバム『A Song for ××』でトップスターへ駆け上がり、安室以来の女子高生のカリスマとなった浜崎あゆみが出てきた。

この後に、注目を浴びたのが、小柳ゆきだ。
1999年、現役高校生シンガーとして「あなたのキスを数えましょう~You were mine~」でデビュー。類まれなる実力派ヴォーカリストとして彗星のように現れた…のはもう7年も前のこと。デビュー曲は、スタンダードなR&B調バラードで、その楽曲のスケール感を凌駕するような圧倒的なヴォーカルが、何しろ素晴らしく、印象に残っていた。
その時は、MISIAや宇多田に続く、日本の女性R&Bシーンを盛り上げるのに充分な資質と運を感じていたのだが、時代は浜崎や鈴木あみ(現・鈴木亜美)などの登場で、時代のポップ・アイコン=“カリスマ”が、“歌姫”としての機能、認知するところになってしまった。その流れのなかで、キャッチーな楽曲というものが不可欠になってしまい、女性R&Bヴォーカリストこそが“ディーヴァ”であるという位置づけが完了しないまま、ポップ・アイコン=“歌姫”に取って代わられてしまった。
それゆえ、MISIAや宇多田のようにしっかりとした格付けがなされる時間がないまま、現在に至ってしまった、不運なディーヴァ、それが小柳ゆきなのだと思っていた。

それから、7年。
シンガーとしての脚光を溢れるほど浴びてきた、とは言い難く、デビュー曲のイメージを超えることはなく、現在まで来ているのが実状だといえる。
デビュー曲以外にヒット曲がない、という訳ではない。「愛情」「be alive」などもある。
では、ヒットメイカーなりえないのは何故か。(チャート・イン=優れたシンガーという訳ではないが)

考えられるところは、2つ。リリース戦略とポジション(スタンス)の明確性だ。
リリース戦略については、とにかくカヴァー曲が多いことと、ベスト盤(ライヴ盤)が多いこと、これに尽きる。これは、ポジションの明確性とも関連するのだが、歌唱力には文句がないだけに、名曲のカヴァーもあっさりとこなしてしまう。それゆえ、しっかりとしたテーマやスタイルが確立していないと、リスナーは、彼女が何をやりたいのかが解からなくなってしまう。タイミングが左右することはもちろんだが、名曲だから歌唱力があるからと、容易にカヴァーという選択をすることは、
オリジナリティーを欠如させることにも繋がりかねない。
次に、
ポジションの明確性という意味では、彼女のフィールドは何であるのかが、リスナーにはっきりと伝わってきていないのではないか。J-POPなのかR&Bやソウルなのか。当然、オールラウンダーでも構わないのだが、それはある程度評価が固まってからでも遅くはない。彼女の資質ならば充分それが可能である。だが、その土台が確立する前に、好きなものだからとあれこれ手をつけるだけになってしまっていたら、リスナーも追いついてこられない。
彼女よりも歌唱力がなくても、明確なスタンスを構築しているシンガーは、そのシーンにおいて活躍を幅を広げている。R&B/ヒップホップ・シーンへの転身を図り、見事甦った安室奈美恵をはじめ、ヒップホップ・クイーンとも言われるAIや、海外へも活動を伸ばした中島美嘉などは、そのいい例だろう。

明確なスタンスと方向づけを定め、まずは、小柳ゆきというオリジナリティーを存分に発揮させるステージを作り上げることが、大切なのではないか。
このような素材を潰してしまってはもったいないにもほどがある。

◇◇◇

小柳ゆきというオリジナリティー構築のヴィジョンの欠如、リリース戦略(事務所やプロダクション?)の不徹底…。
もったいない、器用貧乏な人だなぁ、と思いながら、ライヴを観ていた。

天井に腕を突き上げるような小柳ゆきのシルエットが映し出され、幕が降りてライヴはスタート。
バック・バンドは、左からギター、キーボード、ドラム、ベースの4人編成。コーラスはミキシングによるものだった。

『EXPANSION』のオープニング・チューン「feel the destiny」が流れ、長い金髪を振り乱しながら腰をくねらせる挑発的な激しいダンスを披露しながら、いきなりの熱唱。

とにかく、素晴らしい歌唱力。

その声量、迫力は、“ディーヴァ”と呼ぶのに遜色ない、日本トップのヴォーカリストであると実感した。

続いて、メドレー・スタイルでアッパーな曲を披露したのだが、この構成、というか繋がりがイマイチな気がした。完全なメドレーとしてセットした訳ではないのかもしれないが、ここは畳み掛けるようにスムースな繋ぎで、楽曲をリレーしていった方が、さらに、彼女の迫力を堪能できたのではないか、と思った。

その後、アコースティック・スタイルのナンバーあり、ロック・テイストのナンバーありと、「彼女によるベスト的な選曲」が披露されていく。
BOYZ II MENとコラボした「Just One More Time」、ニルソンやマライア・キャリーも歌った「Without you」などのバラードでは、彼女のダイナミックなヴォーカルが、時に波動のように、時に張り詰めた空気のように、さまざまな表情を持って伝わってくる。まさに、彼女の資質が最大限に発揮された、真骨頂であった。

「BRAND NEW WORLD」以降は、座らせていたオーディエンスを「全員起立!」させた後、アッパー・チューンでヴォルテージも最高潮となっていった。
個人的には、アッパーでノリのいい曲でも、その曲その曲に多少色づけたヴォーカルを披露してくれたらもっといいか、とも思ったが、大迫力のヴォーカルを聴けば、そんな陳腐なことは吹き飛ばされてしまうのかもしれない。

アンコールでのデビュー曲は、さすがに思い入れがあるのか、味わい深く、そして色っぽさをたたえていた。このような表情が他の楽曲でももっと出てくると、さらにスケールが大きくなって、ワールドワイドなシンガーとしても申し分ない評価を得られるのではないか、と感じて仕方なかった。

◇◇◇

MCで見せた「おっちょこちょい気質」というか、落ち着きのない(本人談)お調子モンの性格とのギャップは、それはそれで素敵だが(爆)、ちょっとバカっぽい感じは、デビュー当初を思わせていて、何だかほんわかしてしまった。

Koyanagi_yuki_kimigayo最近、オシム・ジャパンの初陣、トリニダード・トバゴ戦での国歌斉唱をした彼女。それ以前にも数回、国歌斉唱をしているが、彼女のような本当に聴かせるヴォーカリストが「君が代」を歌うべきで(亀田興毅のタイトル戦での元T-BOLANのARASHI MORITOMO(森友嵐士)なんぞ論外だが)、現在、「君が代」を歌うべきランキング1位は、彼女である。というか、国歌斉唱にふさわしくない人が、歌い過ぎているだけなのだが。

彼女には、是非、もう一度多くの人に脚光を浴びてもらいたい。そして、多くのリスナーがその超絶なヴォーカルを聴くことを願ってやまないのだ。
よい楽曲、よいプロモーション…頼みますよ。関係者よ。

◇◇◇

<SET LIST>

01 feel the destiny
02 MEDLEY
・MacAthur Park
・DEEP DEEP
・HIT ON
・can't hold me back
03 be alive
04 GATE 4
05 誓い
06 Lovin'you
07 I don't wanna be crazy
08 Just One More Time
09 Without you
10 my all..
11 remain~心の鍵
12 BRAND NEW WORLD
13 愛情
14 fairyland
15 Fair Wind
≪ENCORE≫
16 あなたのキスを数えましょう~You were mine~
17 prove my heart

Koyanagi_yuki01_1

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