goo blog サービス終了のお知らせ 

*** june typhoon tokyo ***

サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者@シネクイント

■ SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

Sr3_00
 
 大型連休のさなかの4月30日、渋谷・シネクイントでレイトショー上映していた『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』を鑑賞。“SR”シリーズはこれまでの2作、『サイタマノラッパー』(記事はこちら)『サイタマノラッパー2~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』(記事はこちら→12)ともに複数回観賞した、いわばお気に入りの映画だ。
 ゴールデンウィークながらも翌日は平日で、23時過ぎに上映終了するタイムテーブルということもあり、観客もまばらと考えていた4月30日を狙って行ったのだが、満席ではないが、思いの外観客を集めていた。直前の『テルマエ・ロマエ』には及ばないかもしれないが、入場直前のロビーは、いまや遅しと待ちわびる”SRラヴァー”たちの期待感で溢れていた。

 第1弾でSHO-GUNGは3人から2人へとなってしまったが、実はその時、東京へ向かって去っていった“サイタマ生まれブロ畑育ち”のMC MIGHTYの行方は気にはなっていた。まさか、そのMIGHTYのその後が第3弾で描かれるとは思わなかったが。

Sr3_01

Sr3_02

Sr3_03

Sr3_04

 この映画の暗黙の了解というか一つの“お決まり”として、ハッピーエンドならぬ“バッドエンド”、クライマックスの長回し撮りというのがある。その制約をいかにプラスに代えて見せるかも醍醐味となってくるのだが、このMIGHTYをフィーチャーした第3弾は、第1弾、2弾とはやや毛色の異なる作風となった。

 サイタマを離れ東京へ向かったMIGHTYは、東京で活動するクルー“極悪鳥”の元で見習いをしながらデビューを夢見ている。メンバーから罵声を浴びせられ、「物販を売れ」と蹴飛ばされながらも、ついに青山でのMCバトルへの出場が叶う。決勝へ進んだらステージに上げてやるの言葉に発奮したMIGHTYは、MCバトルでの決勝進出を勝ち取るのだが……。
 ダーティでハードな世界での生活が描かれるが、そこへどこか能天気なSHO-GUNGのIKKUとTOMが登場する。MIGHTY周辺の世界観とIKKUとTOMの世界観は一見水と油のようだが、栃木を舞台に徐々にその距離が縮まっていく。まったく異なる導線でそれぞれのストーリーが並行しながら、クライマックスでの劇的過ぎる再会。そして、息を呑み、言葉を失うエンディングへ……。

 地方から東京へ憧れて上京するも、そこで突きつけられる現実に苦悩し、葛藤し、挫折し……。思い描いていた理想と現実の乖離、もどかしくままならない自身の人生。ヒップホップを題材とはしているが、これは実は監督・入江悠の初期衝動を描いたものではないのかと、改めて思えてきた。自身、埼玉出身で上京し、決して恵まれた状況ではないなかでインディ映画を撮り続ける彼だが、これまでの成長過程において感じてきた虚無感とか無力に対する苛立ちなどを、さまざまな演者と北関東の風景を借りてスクリーンに収めていったではないかと。ラスト・シーンでMIGHTYがかますフロウに“紆余曲折経て、また燃えるエナジー”“どの街行っても悪戦苦闘だが、またやり直せばいい”というのがある。人生に答えはないけれど、劣等感や倦怠感にもがきながら、泥まみれになろうともあがき続け、言いたいこと、やりたいことを続けていきたい……という内からのメッセージなんだと思う。

 そして、もう一つ。この映画シリーズはエンディング、特にエンドロール後に物語の結末の“ヒント”が隠されている。前作『サイタマノラッパー2~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』では、B-hackがバラバラになった後、アユムが“それでもラップを続けていく”という思いを「ワック♪ワック♪B-hack」のリリックを書き直して「いつか♪きっと♪B-hack」としてアユムの気持ちを示していた。
 今作でも“鉄格子の隙間から月が俺だけを照らす、まるでスポットライト、甦るプライド”“俺はまだ終わってねぇ……俺の声は聞こえてんのか!? 俺らSHO-GUNG! 言えよSHO-GUNG!”とMIGHTYの意気込みとSHO-GUNGとの邂逅を暗示しているかのようだ。

 そういう意味では、サウンドトラックは必聴だ。このエンドロールだけでなく、各場面でのシーンがどういった背景であるのかを深く知ることも出来る。観賞する前に聴いてももちろんいいし、観賞した後に聴いて、再度観賞するのもいいだろう。

 この映画の正解はもちろん、答えはない。答えがないというよりも、観る人たちの人数分、あるいはその時感じた感情の数だけ答えがあるのだと思う。監督はそのための余白をラストに残していたのではないか。行間を読んで何を感じるか(その先にどう活かすか)……人生で試行錯誤することに逃げるなというメッセージが芯に潜んでいるような気がしてならないのだが、どうなんだろう。その答えもまた、ないのかもしれないが。


◇◇◇

20120430_sr3_cinequinto
MC TOMこと水澤紳吾、MC NO SOUNDこと回鍋肉、MC海原こと板橋駿谷、in the house!!

20120430_sr3_cinequintob
上映終了後、出迎えてくれる3人。写真撮影やサインにも快く受けてくれたナイスガイ!
あ、回鍋肉と握手するの忘れた!

20120430_sr3_cinequintoc
一番右にいるのは一美……ではなくて、ヘアメイクの寺沢ルミ(らしい)。
 
 
◇◇◇
 

 この映画は“盗み”のシーンが多い。栃木のショッピングモールの駐車場っぽいところで高級車を盗むし、MIGHTYは方々から金を盗むし……でも、最後に観客のハートを盗む、と。(笑)

 極悪鳥レペゼン鷺宮。六本木や麻布などの都心でもなく、京王、小田急、東急沿線でもなく、埼玉色が強い東武東上線、千葉色が強い京成線沿線でもなく、西武新宿線沿線の中野区鷺宮っていうあんまりパッとしない場所ながらも、都下や下町感が出過ぎていない場所を根城にしたところは、絶妙のバランスだと思う。(笑)
 ただ、“極悪鳥 Like a カラス!”といいながら、“鷺”ノ宮代表っていうのは、なんだかな。(爆)

 その極悪鳥。右翼系ヒップホップなんだけど、「J.A.P.A.N」では“昔の彼女が言ってたんだ”など、完全硬派じゃないところがあるのもミソ。リリックでは政治や社会の不正を暴くも、現実では金に振り回されるというリアリティもアリ。

 「俺ら征夷大SHO-GUNG」での、征夷大将軍の“下山!下山!”(“GET DOWN、GET DOWN”にかけている)のフレーズが最近ツボです。

 
 
 また、観に行こう。





 

 以上です、キャップ。



 
 


ブログランキング・にほんブログ村へ













 

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「音楽」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事