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日本より太陽に近い島から届けられた“和製”リゾート・ミュージック。
神戸在住のビートメイカー/DJ、tofubeatsの「水星」をカヴァー収録したEP『ホープ・ユー・スマイル』が早耳の音楽リスナーの間で話題となったインドネシア発のシティ・ポップ・バンド、イックバルの初のフル・アルバム。
イックバルは2011年のクリスマス・イヴに結成。楽曲を全て手掛けるMuhammad Iqbal(vo,key,g)をフロントマンに据えた、Rizki Firdausahlan(vo,g)、Muhammad Fauzi Rahman(b)、Banon Gilang(ds)との4人構成で、現在は大学生とのこと。バンド名“ikkubaru”はフロントマンの“Iqbal”の名前を日本語の発音に合わせてローマ字表記にならったものだという。山下達郎や角松敏生、1986オメガトライブなど80年代の日本のシティ・ポップのほか、ビーチ・ボーイズ、ペット・ショップ・ボーイズ、ティアーズ・フォー・フィアーズらにも影響を受けており、それらの音を自分たちなりに咀嚼したシティ・ポップ・サウンドを構築している。
なるほど、一聴して鈴木英人のイラストジャケットやマリーナ、美しい砂浜が想起されるようなリゾート感に溢れたAOR、シティ・ポップ・サウンドが並んでいる。タイトル曲の「アミューズメント・パーク」ではやや長めのギター・ソロが高中正義を感じさせるし、「チェイシング・ユア・シャドウ」は日本の角松敏生や稲垣潤一作風のニューミュージックの影がちらつくメロウなポップに仕上げていて、ややマイナーなコードはUK経由の色も窺わせる。
「ブルー・ワルツ」の“ブルー”は憂鬱ではなくて、文字通り、赤道直下の大洋のピュアな海の色のそれ。輝く海を向こうに見ながらゆっくりと愛しい時を刻んでいく光景が目に浮かぶようなスウィートなラヴ・ソングだ。
漂うような淡いコーラスとミディアム・スローのメロウなサウンドが黄昏や夕暮れを醸し出すインストゥルメンタル「エニシング」、日本のバンドが奏でるようなノスタルジックと甘酸っぱさを行き来するメロディ・ラインが琴線に触れる「ハイウェイ」も、南国の楽園での悠久なひとときへといざなってくれる。
だが、単に和製ポップス経由のリゾート・ミュージックを並べた訳ではない。ややザラついたグルーヴィなギターとファットなベースが先導していく本作のなかではやや野性的にも思える「ライド」や、シンプルな鍵盤とともに歌われ、母性も感じさせる安らぎで包み込む「イヴ」など、洗練とリゾート感を根底に保ちながらも一辺倒に終わらない多彩さも。冒頭曲の「ラヴ・ミー・アゲイン」のキュートでシャレた作風は、ジャンルこそ異なるが韓国のクラジクワイ・プロジェクトあたりのファッション性に似たアプローチにも感じる。
それらを通して、彼ら流のシティ・ポップを“和製”リゾート・ミュージックへと昇華させているのは、彼らが奏でるブリージンなサウンドにフィットしたヴォーカル・ワーク。ビター控えめのスウィートなヴォーカルではあるが、開放感と表裏一体となっているセンチメンタルな声色が楽曲のクオリティを高めている。特に時折披露するファルセットからはひたむきさがグッと伝わり、愛おしくなるほどだ。
もう一つ、彼らに感じるのは仄かに薫るエレガントな風だ。彼らの出身のジャワ島西部の州都バンドンは、歴史的には第1回アジア・アフリカ会議(通称バンドン会議)が行なわれたことで知られるが、オランダ植民地時代から“ジャワのパリ”と呼ばれたところでもある。現在はどうか分からないが、そのような文化的な素地も少しは影響しているのかもしれない。
ネット上ではオリジナル曲以外にも「高気圧ガール」「クリスマス・イブ」(山下達郎)、「恋の手ほどき」(吉田美奈子)、「影になって」(松任谷由実)ほか日本のアーティストのカヴァーなどを数多く発表している彼ら。大阪・堀江系ガールズ・クループ“Especia”へ「アビス」を楽曲提供したことも含め、80年代シティ・ポップやAOR/フュージョン系などへ耳目が集まりつつある近年、その再評価の波とともに、彼らが愛するシティ・ポップの故郷・日本からブレイクする可能性も秘めている。そのためにも、多くの発信を続けてもらいたいところだ。
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『Amusement Park』(2014/10/10)
01 Love Me Again
02 City Hunter
03 Amusement Park
04 Chasing Your Shadow
05 Blue Waltz
06 Ride
07 Anything
08 Highway
09 Eve
10 See The Skies
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ikkubaru - Amusement Park
Ikkubaru - 水星(Tofubeats Cover)
Especia - アビス
Especia - アビス(ikkubaru Version)
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