マイケル・ジャクソン『ディス・イズ・イット』の3回目の観賞。今回はIMAXシアターで見たかったので、何とかチケットを手配してもらい、川崎にある109シネマズ川崎へ出向く。チケット代は通常と異なり2000円で、座席も後方なのだけれど、IMAXの大画面だから、ということで納得させる。そして、マイケルTシャツを着て行った。
席についてみると、大画面なこともあって、後方だと思っていたのが実際は丁度いい距離のようだった。さすが大画面、さすがIMAX。(笑)
しかしながら、高画質であることが裏目に出たのかなと思う部分もあった。撮影したカメラ映像の種類によって鮮明に見えるものと、明らかにそれに比べると画質が劣っていると思われるものがあったのだ。これは2回目までに観た時は気にならなかったので、それが高性質映像の証ということなのだろうが。
この映画はほぼロンドン公演のセット・リスト通りの曲順で展開されたのだと思うのだが、映画化する段階で使いたくても映像がなかったり、一つの映画として成立させるために選別され使用されなかったものもあるだろう。そのような楽曲、たとえば、「ロック・ウィズ・ユー」や「リメンバー・ザ・タイム」、「ユー・ロック・マイ・ワールド」などは実際セット・リストにあったのかというのも気になるところだ。
ところで、『ディス・イズ・イット』をリハーサル映像ドキュメントではなく映画へと昇華させたものとは何か。それは“Heal the world(地球を癒そう)”という確固たるテーマがあるからだと思う。マイケル・ジャクソンを除き、いまや幻となってしまったロンドン公演を詳細を最もよく知る人物は、総合指揮(監督)のケニー・オルテガだ。彼が当映画をプロデュースしている以上、この映画に登場する楽曲の順番は、ほぼ正確なものだと仮定出来る。
エンドロールが流れる前の楽曲は「マン・イン・ザ・ミラー」である。これを本編ラスト曲とすると、アンコールは、エンドロール中に流れた「ディス・イズ・イット」「ヒール・ザ・ワールド」「ヒューマン・ネイチャー」だ。ただ実際は、そうじゃなかった気がする。「ディス・イズ・イット」は死後にリリースされた遺作新曲だし、「ヒューマン・ネイチャー」はすでに前半で披露している。となると「ヒール・ザ・ワールド」がアンコール曲ということとなるが、登場曲順(サントラを参考にすると)の「アース・ソング」→「ビリー・ジーン」→「マン・イン・ザ・ミラー」の流れは、いささか不自然ではないか。「アース・ソング」→「ヒール・ザ・ワールド」→「マン・イン・ザ・ミラー」の方が流れとして、メッセージ性としてしっくりくる。
そうなると、本当のアンコールは「ビリー・ジーン」だったかもしれない。イントロだけでも“ダンスとポップのキング”=マイケルを象徴出来る、彼の代表曲の最高峰と考えられる一曲だ。
とはいえ、気になるのが、途中でダンサーやバンドメンバー、関係者をステージに集めて円を作った時のマイケルからの言葉だ。彼はここで「地球は悲鳴をあげている。地球を愛して、そしてひとつになろう」とメッセージをする。「あと4年で何とかしなければならない。誰かがやってくれる……その誰かって誰? まず自分から動こう」とも言っている。この言葉がケニー・オルテガの心に非常に重く強く残っていたのではないか。だから、わざわざ「アース・ソング」登場した自然破壊の象徴であるブルドーザーから小さな苗木を守る女の子を再びエンドロールの後に登場させ、地球を抱えて“Heal the world(地球を癒そう)”というメッセージ映像を残したのではないか。実際のリハーサル進行による展開を大きく崩すことなく、マイケルのメッセージを強烈に伝える手段、それがこのエンドロール以降の映像という演出だったのではないかと思う。単に“ブラックアウト”(暗転、映画中でも何度かこの言葉が出てくる)やフェード・アウトで映画を終わらせるのではなく、娯楽としてだけでなくしっかりとマイケルの意思を伝えるために。
ラストは、ステージ中央へと歩みを進める足元だけが映され、爪先立ちした瞬間にカット・アウト。一歩ずつ前へ進むことが出来れば、困難なこと(爪先立ち=地球を4年で治療すること)も解決出来る。みんなもついて来て! というように捉えることも出来るエンディングだ。
メッセージ・ソングというものは賞賛もされるが、時には押し付けがましく聴こえる時もある。それはエゴといつも隣り合わせだ。だが、「信ずれば通ず」を真摯に遂行したままこの世を去ったマイケルのメッセージの訴求力は強烈だ。さまざまな事情がある……とは誰もが口にする言葉。だが、ピュアなシンプルに考えれば済むこと、解かることを現代人はしていないと、マイケルはあの柔らかな声で、痛切に哀れんでいたのだ。
最後までピュアであり続けたマイケル。“Who's Bad?”(誰が一番イケてるかって?)
……それは言うまでもない。
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