*** june typhoon tokyo ***

脇田もなり @タワーレコード池袋【インストア】


 燻る葛藤や苦悩を推進力へ変えそうな、刺激的な一作。

 前作「PLACE」以来、約1年ぶりにシングル「La Shangri La」をリリースした脇田もなりが、リリース当日にインストア・イヴェントを開催するとあって、会場のタワーレコード池袋店へ駆けつけた。ライヴパフォーマンスを観たのは、4月末の脇田恒例の企画イヴェント〈MONARI WAKITA“HIGHBALL HOUR”〉(記事 →「脇田もなり @Time Out Cafe & Diner」)以来だが、その時に既に新曲を2曲作っていると語っていた「ダンス・ミュージックのような曲」というのが、今回リリースとなる「La Shangri La」の模様。本来は1月開催のライヴで初披露の予定だったが、コロナ禍の影響もあってライヴが取りやめになっていたから、本人にとっても、ファンにとっても待ち侘びた新曲初披露の場となった。
 そういった経緯もあってか、ミッドウィークながら、いち早く生の歌声を聴きたいというファンが集結。音源としても久しぶりとあってか、タワーレコード池袋店に用意されていた7インチアナログ・シングルはインストア・イヴェント開演前にソールドアウト。自身は会場への到着が一足遅かったか、この日にアナログ・シングルを手にすることは出来なかったので、これからイヴェント参加する際は、早めの購入を勧めておく。

 ソロとして今年のライヴは4本目とのこと。6月に開催されたEspeciaの10周年記念ライヴ〈Especia es una Familia~10º aniversario~〉では、グループ時代のメンバーとの再会もあって非常に楽しく、リラックスしたムードでパフォーマンスが出来たというが、この日はゲストや共演もないアクトということで、非常に緊張していたようだ。自ら「何言ってるかわからなくなってる」というMCを持ち出すまでもなく、ところどころで神妙な表情を覗かせていた。
 ただ、歌い出せば、そういった強張りはサッと消え去り、伸びやかかつしなやかなヴォーカルワークで楽曲に乗れるのが、彼女の強み。シングルのタイトル曲で初披露となった「La Shangri La」のほか、7thシングル「エスパドリーユでつかまえて」、9thシングル「PLACE」とそのカップリング「ONDO」というラインナップは、現時点で歌い慣れていると思われる、比較的最近な楽曲をセレクト。コロナ禍において活動が断続的にも感じられたなかで、久しぶりのステージでも安心して歌えることも考慮した構成で、リリース・イヴェントのスタートを切りたかったのかもしれない。


 さて、注目の楽曲「La Shangri La」は、「エスパドリーユでつかまえて」はじめ、「PLACE」「ONDO」でも曲を手掛けているDorianが作曲とプロデュースを、「愛のデカダンス」「遊星からのアイラビュー oh! oh!」「PLACE」に作詞で名を連ねているYURINA da GOLD DIGGER(Magic, Drums & Love)が詞を、それぞれ手掛けているハウス・チューン。“秘密”をテーマに、脇田自身がリスナーの感じるままにとらえてほしいという想いが込められたリリックを紡いでいる。
 「声を出せる状態に戻ったら、みんなで声を上げて歌って、一緒に育てていきたい曲」と本人が語るように、フックの“シャングリラ、シャングリラ”でのコールが見込めるスタイリッシュ&アグレッシヴなイーヴンキック・トラック。フックの終わりの“Don't stop!”のコールから突入する、うねりを帯びたトランシーなハウス/テクノ・アプローチのトラックに心地よいコーラスを乗せたインストゥルメンタルなアウトロも魅力のダンサブルなフロアキラーに仕上がっている。

 ソロ・デビュー以来、明確にハウスを謳った楽曲は福富幸宏プロデュースによる3rdシングル「I'm with you」くらいだと思うが、ファンなどの同曲への反響はともあれ、個人的には以前より脇田のヴォーカルは、過剰に感情が入り込み過ぎて歌い上げてしまうよりも、とくに軽妙なトラックに導かれながらパッションを高めるようなヴォーカルワークが活きるハウス・トラックに適しているのではと感じていたクチだったから(そういう意味でも、福富産ハウスのみでハウスへのアプローチが一旦途絶えてしまったのは残念だった)、ハウス・トラックへの回帰は嬉しいところ。それも「I'm with you」のようなシャッフルするグルーヴとともに走る推進力あるブリリアントなハウスを焼き直ししたのではなく、今作「La Shangri La」ではドープやアシッドといった幻覚性を伴ったハウス/テクノに寄せたチャレンジングなアティテュードに、これまでの活動が思うようにいかず、モヤモヤしたどこか燻っていた感情を弾けさせる導火線の役割になる可能性も感じていたりもする。タイトルは“理想郷”や“ユートピア”を意味するが、脇田が歌手としての理想郷へと歩み出す、再起たる楽曲になるかどうか。ハウス・スタイルとしては、2020年9月に4周年記念のライヴストリーミング企画〈Monari Wakita featuring House Set from "4get me not" 4th Anniv. Live Streaming〉にて、ライヴではおなじみのDorianとKAYO-CHAAANというセットでも披露しているから、違和感を抱くこともないはずだ。

 なお、リリースにあわせたインストア・イヴェントは次のとおり。この初日のステージを終えたことで、久しぶりのソロ・アクトでの緊張も幾分解けただろうから、以降のステージでは、より伸びやかで力感にも溢れた歌声を体感出来るのではないだろうか。


▢ 脇田もなり「La Shangri La」リリース・インストアイヴェント
2022/8/17(水)19:00 タワーレコード池袋
2022/8/19(金)19:00 タワーレコード横浜ビブレ
2022/8/20(土) 13:00 HMV recordshop 新宿ALTA
2022/8/20(土) 15:30 HMV recordshop 新宿ALTA
2022/8/21(日) 13:00 タワーレコード川崎
2022/8/28(日) 16:00 HMV recordshop 渋谷
2022/8/29(月) 19:00 HMV&BOOKS SHIBUYA


◇◇◇

<SET LIST>
01 エスパドリーユでつかまえて
02 ONDO
03 La Shangri La(New Song)
04 PLACE


<MEMBER>
Monari Wakita / 脇田もなり(vo)



◇◇◇



脇田もなり / La Shangri La (2022/08/17)
HCR9717 7inch(with download code)
VIVID SOUND / HIGH CONTRAST

Side-A: La Shangri La
Side-B: Boy Friend (7” Live Mix)

◇◇◇

【脇田もなりに関する記事】
2016/09/23 星野みちるの黄昏流星群Vol.5@代官山UNIT
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2022/03/27 脇田もなり / 天野なつ @Time Out Cafe & Diner
2022/04/30 脇田もなり @Time Out Cafe & Diner
2022/08/17 脇田もなり @タワーレコード池袋【インストア】(本記事)

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