昨日、毎月購入している数少ない雑誌『bmr』を手に入れ、“2008ベスト・アルバム・ランキング”の記事を読む。予想通りというか、1位はリル・ウェインの『Tha Carter III』だった。タワレコのフリー・マガジン『bounce』の“2008年の50枚”でも、『ミュージック・マガジン』の“ベスト・アルバム2008”の“ラップ/ヒップホップ[海外]”部門でもリル・ウェインがトップ(それにしても、『ミュージック・マガジン』はなんでロックだけでアメリカ/カナダ、イギリス、日本(!)、ヨーロッパと地域的に4部門もあって、ブラック系がR&B/ソウル/ブルース、ラップ/ヒップホップ[海外]、ラップ/ヒップホップ[日本]の3部門(日本を除けば2部門)しかないんだ? しかも、日本のロック部門と歌謡曲/ポップス部門との区分けが謎だし。そんなにロック至上主義にしたいのか……)。
上記以外のところでも、“当然の結果でしょ”“満場一致で即決”“これ以外にはあり得ない”というような内容のコメントが散見されるので、改めて『Tha Carter III』を聴いてみることにした。まず、駄作でないことは確か。ただ、もうこれは個人的嗜好としかいいようがないのだけれど、これを2008年のベスト1には出来ないなぁ。それは何故だろうかと考えたところ、1つは自身が元来ヒップホップ寄りの嗜好ではないということと、もう1つはヴォーカルなんだろうなぁ、と。2008年のもう1人の風雲児、T-ペインと組んだ「GOT MONEY」などのキャッチーなヒット作は悪くないんだけど、「3 PEAT」や「A MILLI」といった彼の特徴であるダラダラと引きずるようなラップ・スタイルが単調なビートの上で展開されるといった楽曲がどうも好きになれないってのが大きいのかも。ベイビーフェイスとの「COMFORTABLE」やD・スミスとの「SHOOT ME DOWN」などのメロディアスな楽曲はすんなり聴けるんだけども。
2008年を代表するもう1人、T-ペインの『スリー・リングス』を聴いてみたけど、やっぱりこれも個人的嗜好なんだろうなぁと。1年トータルの活躍をみると、彼のプロデュース、客演など、影響力大であることに異論はないけれども、アルバム単位で聴くと、2008年ベストとは残念ながらいえないなぁ。自分がヒップホップ寄りの耳であったらそんなことは言わなかったと思うけど、現時点ではリル・ウェインやT-ペインよりも、Qティップやコモン、N・E・R・Dのアルバムの方を評価してしまうので(そういえば、自分の趣味が解かるかもしれない)。
で、『bmr』の2位以下は、T-ペイン、T.I.、ラヒーム・デヴォーン、フロー・ライダとヒップホップ勢ばかり。6位以下はカニエ・ウェスト、ヤング・ジェージィ、ジェニファー・ハドソン、ゲーム、エステルとここでもヒップホップ勢が優勢。そういう意味では、『ミュージック・マガジン』にあるR&B/ソウル/ブルース部門での“(キース・スウェットが1位ということに)2008年のR&Bがいかに不作だったか”というコメントも頷けるような気もする。そのなかで、自分のマイ・フェイヴァリット・アルバム・アワードの最優秀にも選んだラヒーム・デヴォーンがR&B勢では上位にランクインしているということは、自分の印象とライター、批評家らの有識者との意見がそれほど食い違わなかったということか。ラヒームはライヴでもキング風なパフォーマンスもして楽しかったし、今後もっと注目されてもいいと思うなぁ。再来日希望!
そんなこんなで、2008年を代表するアルバム『Tha Carter III』『スリー・リングス』を立て続けに聴いたわけですが、どうにもスッキリしたくて、アリーシャ・ディクソン『The Alesha Show』を聴いちまったり。“デスチャへのUKからの回答”といわれたミスティークのメンバーのアリーシャですよ。昨年リリースの『FIRED UP』も良かったけど、今作もなかなかグッド。ええ、ミーハーなんですよ、すみませんね。
そんななか、UTADAが前作の失敗に懲りずに(?)2作目をリリースするという情報をゲットしたので、早速彼女のMySpaceを覗きに行き、リード・シングルと思われる「Come Back To Me」というナンバーを聴いてみたわけですが……。
何ですか、このマライア・キャリーのお下がりみたいな楽曲は!
というのが、第一印象でした。(スミマセン)
海外デビュー作『エキソドス』ではティンバランドを起用したりするものの、アメリカがイメージしている日本(日本人が聴くと日本というより中国に近い感じ)というオリエンタル風味を施した、US調R&Bとも“This is 宇多田ヒカル”ともいえない中途半端な作りだった訳ですが、それを反省しての行き着く先は、マライア風ミッド・スローって……。
マライアだって全盛期の初期には戻れないのを察したのか、『MIMI』で意識変革をして、『E=MC2』でやっとそのスタイルを確立したっていうのに、マライアほどの歌唱力(特に声量)がないUTADAが、マライア風ミッド・スローを歌うことに何の意義があるのかがちょっと不明。いや、まだリード・シングルを聴いただけじゃないか、きっとアルバムではビックリするようなネタを仕込んでくれているに違いない(そう祈りたい)……。フォクシー・ブラウンに客演した「Blow My Whistle」あたりの作風ならまだ納得するけどね。
Foxy brown feat Utada Hikaru: Blow My Whistle
ただ、これだけはやめて欲しいと思うのが、前作のように、全米リリースより数週間早いというだけで、US盤と国内盤の価格に差をつけること。国内盤が高いのは、日本先行リリースに加え、ライナーノート&対訳&訳者との対談&対談後記のスペシャル・ブックレットが付くということだったらしいけど、はっきりいってほとんどそれほど価値のないインタビューと対訳だけで600円も高いって何だよと思ったので。せめてボーナス・トラックをつけるとかDVDつけるとかするならまだしも、ね。