今回は新譜中心で。
それにしても、やっぱりCDショップには通わないと、とつくづく思った。新たな発見があることが多い。ネットでは得られない皮膚感覚とでも言おうか。人間が元来持ち合わせている本能的な察知能力……とまで言うと大袈裟なのかもしれないが、それに近い感覚がある(気がする)。ジャケ買いはその一つだと思うし、店内を歩き回らなかったら、おそらく引っかからない(はじめから求めていない)だろうアーティストや盤が目に入ったりしてくるのは貴重なことだと思うのだ。それらが以降、自身に大きな影響を与えるアーティストやアルバムになるかもしれないのだから。
ただ、そのデメリットとしては、必要以上に買い過ぎてしまうこと。自分のような、おおよそR&Bやソウルあたりのコーナーしか目に入らない人でさえそうなのだから、ジャンルを問わずに目を向けている人にとっては計り知れない。(苦笑)
では、懐寂しになりながらも、音楽の素晴らしさを噛み締めて、適当なレヴューへいってみますか。
◇◇◇
□ ANTHONY DAVID『AS ABOVE SO BELOW』
![Anthony David / As Above So Below Anthonydavid_aasb](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/f9/bcb73af2cfff06b18e9695b29cf0265b.jpg)
前作『Acey Duecy』以来となるアトランタ出身のR&Bシンガー・ソングライターによるアルバム。マイルドに溶け込むような渋みのあるヴォーカルが白眉で、深みのあるソウルを聴かせてくれる。軽やかな浮遊感を携えながら展開するシンセ・トラックが美味の「レット・ミー・イン」、アルジェブラとフォンテを迎えてのスムースなグルーヴィ・ミッド「フォーエヴァー・モア」、ボーイズIIメンのショーン・ストックマンをフィーチャーしたティアーズ・フォー・フィアーズのカヴァー「ルール・ザ・ワールド」など、浸透度の高い楽曲が揃った。ネオ・ソウル一辺倒ではなく、意外とフットワークの良さも披露しているのは、インディに戻っての自由が利いたからか。ハーモニカをアクセントにしながら音階を上下する旋律がスティーヴィを思わせる「リーチ・ヤ」は、心地良い多幸感を生んでいる。
Anthony David“4Evermore”feat. Algebra & Phonte
いやぁ、非常に心地良いですな。詞は解かりませんが、映像を見るに、ウェディング・ソングにも重宝しそうな感じです。
あと、前からうすうす感じてはいたんですが、アンソニー・デヴィッドって、ちょっと長友に似てませんか。(笑)
![Anthony David Anthonydavid](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/98/af84e09946e87159c1c862b729df2222.jpg)
どうでしょう。(笑)
□ JEREMY JAMES『FOR YOU』
![Jeremy James / For You Jeremy_james_fy](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/8b/d8ccfe098effe1a81b08f70e5ae59206.jpg)
“アイズレー・ブラザーズの甘さとスティーヴィー・ワンダーのサウンド”という触れ込みのニューヨークのシンガー、ジェレミー・ジェイムスのアルバム。瞬間的ではなくじっくりと染みわたっていくような深みを伝えていくヴォーカルが特色。温かみをもったギターを軸としたオーガニック・テイストのサウンドも魅力だ。ボブ・マーリィ「REDEMPTION SONG」(解放の歌)をアコースティックにカヴァーするなど、長閑なソウルを想い起こさせてくれる。
□ RAPHAEL SAADIQ『STONE ROLLIN'』
![Raphael Saadiq / STONE ROLLIN' Raphael_saadiq_sr](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/8f/7e85c332c0463e1b0f8cb5400061ec50.jpg)
ラファエル・サディークの前作『ザ・ウェイ・アイ・シー・イット』に続くアルバム。コロンビア移籍となってからは古き良きソウル・ミュージックを体現するような楽曲が多いが、今作もその流れを汲んだ、というかいっそう深化させたような佇まいだ。
決して奇を衒ってはいないが、60、70年代のR&Bを真摯に蘇らせる態度は、かえって新鮮に映る。ロックンロールとの近似性が窺える“リズム&ブルース”的なサウンド・メイクにも、ゆるぎないルーツへの回帰が読み取れる。正統派としてのソウル・アルバムだ。
□ JENNIFER HUDSON『i remember me』
![Jennifer Hudson / i remember me Jennifer_hudson_irm](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/6b/b83420842966eea569f6b142d9e8c793.jpg)
映画『ドリームガールズ』で主役のビヨンセを食いシンデレラガールとなるも、その後母や兄の死、息子の誕生など私生活で波乱万丈があったジェニファー・ハドソンの2ndアルバム。ダイエットによる36キロ減もあり、ジャケット等を見ると非常に細く美しくなった印象がまずあった。ただし、歌声は以前と変わらず、パワフルながらも麗しいヴォーカルを披露してくれている。
R・ケリー制作の「ホエア・ユー・アット」、アリシア・キーズ&スウィズ・ビーツによるコーラス・パートへ向かって高まっていくサウンドと伸びやかなヴォーカルが特色の「エンジェル」、「スポットライト」制作でも話題となったスターゲイトの手による「アイ・ゴット・ディス」など、ヒット曲を収録。
その他、アリシア・キーズが手掛けたものとしては、グイグイとダンサブルに展開する「エヴリバディ・ニーズ・ラヴ」「ドント・ルック・ダウン」、ニーヨによる「ホワイ・イズ・イット・ソー・ハード」など、上質なR&Bをもたらしてくれる。高い期待値に応えた1枚。
□ MINT CONDITION『7』
![Mint Condition / 7 Mint_condition_7](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/8d/4c406df4e1b26dc8d21c69420cc323c3.jpg)
90年代から活躍するセルフ・コンテインド・バンド、ミント・コンディションのタイトル通り7枚目となるアルバム。トピックは何といってもケリー・プライスを迎えた「ノット・マイ・ダディ」。ウォーレン・キャンペルとケリー・プライスが手掛けた濃密なスロウで、ヴェテランだからこそ醸し出せるアダルトな芳香を漂わせながらストークリー・ウィリアムスと実に艶やかなデュエットを披露している。
ファットなベースとうねったファンキーなグルーヴがプリンス風にも思えるミディアム・スロー「キャント・ゲット・アウェイ」をはじめ、哀愁をたたえたスウィートなファンキー・ソウルが満載。清爽な心地良さを与えるミディアム「コート・マイ・アイ」も美味だ。
□ BANDA ACHILIFUNK『GITANO REAL』
![Banda Achilifunk / Gitano Real Banda_achilifunk_gr](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/8a/24fcffce45fbc26b5808b8efe77029f9.jpg)
スペイン・バルセロナを拠点にするモダン・ファンキールンバ・グループ、バンダ・アチリファンクがジャズ・オーケストラを率いて作り上げたデビュー作。ラテン・バンドらしく陽気さとノリの良さは言わずもがなで、そのグルーヴに思わず身体が疼くこと間違いなし。
この『ヒターノ・レアル』での特出は、ダンスクラシックス/ディスコからの選曲によるラテン・カヴァー。ラテンだからといって決して暑苦しくない洒落たアレンジが魅力のジャクソン・シスターズのカヴァー「I BELIEVE IN MIRACLES」をはじめ、マクファーデン&ホワイトヘッド「エイント・ノー・ストッピン・アス・ナウ」のカヴァー「NO NOS PARARAN」(“パララン”の響きがいい7分弱の大作)、マイケル・ジャクソン「バッド」のインスト・カヴァーなど、あくまでもモダンなラテンに徹した楽曲群が光る。とはいえ、ラテン特有のゴキゲン度はしっかりと見せ、「RUMBITA TRU-LA-LA」などのインスト曲のグルーヴも楽しい。
□ VERBAL『VISIONAIR』
![Verbal / Visionair Verbal_visionair](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/e9/02d72d59cb0b95871adb87a259f1fa5d.jpg)
m-floやTERIYAKI BOYZなどで活躍するMC、VERBALのソロ・アルバム。幅広い交遊を活かしたゲスト参加がまず目を引く。リル・ウェインと安室奈美恵を招いた震災後としてはタイムリー過ぎるタイトルのジャーメイン・デュプリ補制作曲「BLACK OUT」、スウィズ・ビーツ制作のクラブ・バウンス「BALL N BOUNCE」、大沢伸一制作の「DOPE BOY FRESH」、ニッキー・ミナージュ客演の「CHANGE CHANGE」など、話題性は事欠かない。
ただし、m-floとの関連性を求めるとやや肩透かしを食らうかもしれない。2011年という時期のリリースの時代性もあるのか、ヒップホップというよりクラブ、エレクトロに寄ったサウンドを軸に作られている。全編でヴォーカル・エフェクトを使い通した「I CAN'T HELP MYSELF」などはそれを象徴する楽曲だろう。
結構ベタなセンスが好きなVERBALだけに、楽曲の色合いも多種多彩。その楽曲ごとにその評価はかなり分かれると思われるが、「DOPE BOY FRESH」は大沢伸一の牽引力の恩恵かクラブ・チューンの体を貫徹していてなかなかの出来。スウィズ・ビーツのプロデュースによる「BALL N BOUNCE」もヘヴィなビートと軽いフットワークでうねるトラックが中毒性を生んでいる。ただ足を踏み鳴らして楽しむ姿が想起される「STOMP DEM ROACH」などは、今自身がやりたいことをストレートに描写したのかもしれない。
荘厳なファルセット・コーラスを配した不穏なトラックが特徴的な「I WANT IT ALL」やマドモアゼル・ユリアを迎えたロックンロール風味の「LIAR」などは、別にVERBALがやらなくてもいいのではとも思えなくもない。クレジット上ではラストの曲となる大沢伸一プロデュースの「NOTHING」は、それまでの流れと一転して軽やかな爽やかさが残る心地良い初夏を感じさせるナンバーで、Ryoheiあたりと組ませたらとも思わせる。
といったように、振り幅が大きいがゆえ、アルバムとしての評価はなかなか難しいところ。現在の時流にフィットした、今現在のVERBALが詰め込まれた作品と考えて聴くのが一番適しているのかもしれない。“僕にはこんなにさまざまな引き出しとヴィジョンがあるよ”という、ソロ・アーティストVERBALを紹介する作品として、今は捉えておきたい。
◇◇◇
以上です、キャップ。
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