ツアー初日、しかも彼女にとっては初ホール・ツアーということで、かなりの入れ込みよう。
ステージは、後方に鉄筋風に上下3段横7つのブロックを組んだスタイル。その真ん中の段の左から、DJ、キーボード、ギター、ドラム、ベース、キーボード、コーラス(×3)という配置。最上段はダンス・スペース。そして、のぼり棒が左右に2本あって、ダンサーはそれを使ってステージへ降りてきたりする。ダンサーは黒人男性×3、黒人女性×3の計6名。ライヴの最後にはダンスの先生である、Flii Stylez(フライ~っていってた)も挨拶で登場。(翌日アメリカへ帰るらしく、今日だけの登場だとか)
AIのライヴは、ダンス・パフォーマンスが多めなこともあり、バック・バンドは高台でやることが多いかも。
19:10頃、暗転。
ステージ一面に張られた布状の幕に、『What's goin' on A.I.』のジャケにも使用された地球が写し出され、幕が一気にダン!と降りると、
最上部に吊るされたAIがステージへ急降下で降ってきた!
アイドル・コンサートかマイケル・ジャクソンか…くらいのド派手演出でスタート。「I Wanna Know」から怒濤のごとくダンス・パフォーマンス&アッパー・チューンが炸裂!
始めの数曲は、正直なところ、ダンス・パフォーマンス中心のセットであるため、打ち込みによるコーラスにバンド・サウンドをかぶせていることもあり、ヴォーカル・テイクが少なめだった…のは仕方ないか。
ただ、サンプリングにかぶせるバック、特にベースとドラムの音があまり効果的に聴こえなかったので、「この音だったら、こんなにバック・バンド要らないよなぁ」と思っていたのだが、途中から修正されたのか、ベース音もバリバリ聴こえるようになって、安堵しました。(笑)
楽曲構成は、アルバム『What's goin' on A.I.』の曲を中心に、懐かしめの曲も披露。「最終宣告」「Thank U」「My Friend」など。
途中では、キーボードでの弾き語りも。ただ、彼女の場合は、キャラクターもあってか、じっくり聴かせるというよりは、自分自身で合いの手というかトークをはさんでしまうので、よくある弾き語りというよりは、観客に語りかける綾戸千絵スタイルなのかもしれない。(イメージで語ってます)
そんなお調子モンキャラ(笑)な彼女だが、キーボードを弾きながらバラードを歌う姿をみて、アリシア・キーズの雰囲気に似てるかも、と思った。ヒップホップ・シーンでくくられることの多い彼女だが、結構ソウルフルだし。ルックス的にも、ちょっと似てるかな、と。
ただ、一度マイクを握ってステージを駆け回ると、ミッシー・エリオット風。彼女自身は、メアリー・J.ブライジを目指しているのかもしれないが。
それと、MC。
知ってる人は知ってる(当たり前か)が、
もう鹿児島弁のオンパレード。
それと定番の「ヤバイ!」「マチガイナイ!」の大盤振る舞い。(何だかスーフリの「熱い!ヤバイ!マチガイナイ!」みたいだけど、全くもって違いますので…爆)
その他の出来事をかいつまんでいうと、
・「初ホールツアー!あんたらのおかげで、どんどん会場がでっかくなってくよ!」
・「初スカート!…(歌い踊ってて)ヒラッとかするともうねぇ…グフフ(変な笑い)」
・「今日もいっぱいいろんな人が観に来てくれてるんだけど…って、うちのマミーがそこ(前列中央あたり)にいるんだけど…もう『アタシアタシ』みたいにね、(顔で)アピールしなくていいから!」
・会場を3パートに分けての「My Friend~♪」
・観客のカップルの女性に「大好きだよ」と彼に向けて言わせちまう
・「あたしがあんたたちのためにうたってやっから」
・ペットボトルの水をピューと観客席へ出して…「あ、もう、ホントスイマセン」
・「チッチキチー」×7くらい…「このね、親指のカッコがいいんだよ!子供が面白がるってのがわかるわ」
・「恋してないんじゃないのー?」の客席からの声に、「んもぅ、バーカいってんじゃないよぉ~。ったく、面白い人がいるねぇ~」
etc...
てな、感じでした。
◇◇◇
表現者。
彼女を説明するにはこの言葉が最適だろう。
圧倒的な声量がある訳でも、抜群のメロディアスな声色を持つ訳でもない。どちらかというと、泥臭い、野暮ったさの残った力感で押してくるヴォーカル・スタイルだ。
ただ、伝えたいことを、伝えるのに相応しい言葉で的確に表現することが出来るという意味では、これほど長けた人もなかなかいないだろう。心の機微をつまびらかにする言葉の選択眼や相手の心に訴えるパフォーマンスにも、しっかりとした信念がこもっている。伝えるのに最適な瞬間を逃さずに、真摯に魂を解き放つ…。そういう意味では、素晴らしいセンスとヴォーカル・スキルを持ったシンガーなのだ。
一部を除いて、黒人が占めるバンド、コーラス、ダンサーを、臆するどころか引っ張っていく姿は頼もしくもあり、彼女がメンバーに信頼されている証拠でもある。それは彼女の心底にある温情が、メンバーにしっかり伝わっているからであろう。
彼女のMCでの鹿児島弁まるだしのトークでもわかるように、彼女のあふれる温情は周囲の人の心を和らげる。人種や文化、環境などが違っても、通じるものがあれば困難を乗り越えていける…そのシンパシーこそが愛だと体現しているようだ。
だから、メンバーは彼女に身を委ねる。共に同じ時、空間を過ごす運命共同体、ファミリーなのだという想いを、彼らはしっかりと感じとっているのである。
その表現者として、素晴らしいスキルをもったヴォーカリストである彼女が伝えていくのは、さまざまなテーマやシチュエーションがあるけれど、その根底に宿っているのはどれも愛情である。照れくさい内容を照れくさいなかでも、衒いなく「愛」について歌うのだ。
それは、リスナーにはもちろんのこと、バンド・メンバーやスタッフにも届けられている。
時に攻撃的なリリックやヴォーカル・スタイルで畳み掛けてくるヴォーカル・ワークの、その迫力たるや見事、の一言なのだが、そのなかにもやはり、さまざまな愛の形が瞬間ごとに届けられている…そう感じられるのだ。
人生は一度たりとも同じ瞬間はない。
ライヴも同様に、一瞬たりとも同じ時間、空間、心境ということはない。
その一瞬ごとをどのように生きるべきか、そのために何をやるべきか、そうAIはリスナーに問いかけ、そして自省しているに違いない。
信念を持ってやり遂げる。そして愛すること。
それが一番大切なことだと、彼女は伝えてくれているのだ。
ライヴでは、冒頭に引き続き「Beautiful」から「Too Much」へと流れるメドレー・スタイルの構成が圧巻。また、3段になったセットの最上段からヴォーカルを切り刻んでくる「E.O.」のパフォーマンスに息をのみ、身体を揺らした。
……
充足感を覚えながら、帰途に着く間、ふとセットリストを振り返る。
アルバムのジャケットにも描かれた地球がスクリーンに映し出された後、「I Wanna Know」からスタート。
“今何が出来る、今何が見える、今何を感じる……”
“今何を愛する、今何を信じる、今何を思う……”
そして、本編ラストの「MUSIC」で、“大切なことを教えてくれた”のは音楽だと、音楽の力“POWER OF MUSIC”について歌っている。
AIがやりたかったこと。
今、歌を、音楽を、し続けていくこと。
そして、音楽をみんなに届けていくこと。
それを伝えるのに、ピッタリな曲順ではないか。
そして大ラスは「LIFE」ときた。
音楽の力で人生を生き抜いていける。
そんな想いが不思議と湧いてきた、そんな夜だった。
◇◇◇
<SET LIST>
01 What's goin' on pt.1
02 I Wanna Know
03 Beutiful
04 Too Much
05 We gonna
06 Famous
07 Love is...
08 go find your way
09 Believe
10 最終宣告
11 E.O.
12 未来
13 No Way
14 My Friend
15 ooh
16 Thank U
17 MUSIC
≪ENCORE≫
18 Story
19 Merry Christmas Mr. Laurence
20 LIFE
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