R&Bのグッドヴァイブスの継承し続ける、信念に満ちたジェントルなステージ。
甘美で色香漂うステージでファンを虜にするR&Bシンガー、ジョー・ルイス・トーマスことジョーの恒例のビルボードライブ公演。ステージ向かって左からジャスモン・チャマール・ジョイナー(key)、ヒロノブ “カッパ”タナベ(g)、中央にウィリー・パーカー・ジュニア(ds)、アンソニー・タート・ネンハード(b)、右端にデイヴィッド・S・ブラウン・ジュニア(key)の布陣は、昨年と同様の気心知れたバンド・メンバーだ。開演前のクリセット・ミッシェルのBGMが止み、定刻よりやや遅れて暗闇に包まれたフロアは、再び輝きをもって照らし出された。バンドメンバーによるイントロダクションを経て、そのステージをさらに輝かせる男が壇上へ。白地に黒のピーク襟のスーツ、黒エナメルの靴を着こなしたサングラス姿のスキンヘッドの男こそ、今も揺らぐことなくR&Bを継承し続けているジョーその人だ。
上層フロアの観客にも目配りをしながら、ジョーにとって心地良いファンとの距離感でのステージがスタート。のっけから「ラヴ&セックス・パート2」のソロ・ヴァージョンから「スタッター」というグルーヴィなナンバーと激しくなくとも腰や肩をセクシーに揺らすダンスで観客の特に女性陣から歓声を浴びる。その後も「ライド・ウィット・ユー」、“ユー・メイド・ミー・ハッピー”のフレーズでおなじみのメイズ・フィーチャリング・フランキー・ビヴァリーの「ビフォー・アイ・レット・ゴー」などのナイス&グルーヴ、ハートウォームなフィーリングに溢れる「アイド・ラザー・ハヴ・ア・ラヴ」、スムース・メロウな「イフ・アイ・ワズ・ユア・マン」「ホワット・イフ・ア・ウーマン」、愛を互いに確かめるようなスウィート・ラヴァー「モア&モア」などと次々と良質なR&Bを披露していく。
「モア&モア」の後はジョーを含めたギター陣3人がセンターステージで椅子に腰掛けながら弾き語りのアコースティック風セットを。悩殺必至のバラード「ノー・ワン・エルス・カムズ・クロース」をフロアの観客と語り合うようにして優しく歌い上げて、女性の胸キュン度を一層高めると、腰掛けながら歌っていた「イフ・ユー・ルーズ・ハー」の途中でいきなり立ち上がり、渾身の熱唱へ。続く「ザ・ラヴ・シーン」でゆっくりと愛の深淵へと沈んでいくようなグッと濃密なムードへと移行。スウィートなメイクラヴァー「オール・ザ・シングス」もそれを受け継いで、敏感な心の襞へと触れていくようにジェントルに語りかけていく。さらに「グッド・ガールズ」でこれでもかとフロアの女性陣を釘付けにさせていく。
そしてお待ちかねの「アイ・ワナ・ノウ」で、愛を確かめ合うようにステージのジョーとフロアのオーディエンスがラヴリーな会話を交わし合う。観客からはバラの一輪挿し、ジョーからは握手やハグといういくつもの“プレゼント”が時を埋めていく。
アンコールはジョーお気に入りのメイズもので「キャント・ゲット・オーヴァー・ユー」。メンバー紹介を兼ねてメンバーソロ演奏も披露されたのだが、ジャスモン・チャマール・ジョイナーがスティーヴィー・ワンダーのモーグ・シンセ風なフレーズを弾けば、4台のキーボードを駆使したデイヴィッド・S・ブラウン・ジュニアはラテン・トロピカルなアレンジも混ぜて客席の熱度を高める。かと思えば、ウィリー・パーカー・ジュニアはメロウなビートから突然ベル・ビヴ・デヴォー「ポイズン」の冒頭のようなタイトなドラミングで沸かせるなど、ソウル/R&B愛もそこここに感じられるソロ・パートの連続。感謝を述べた後、ファンからのサイン&ハグ攻めに丁寧に対応している途中も、バンドはマイケル・ジャクソン「リメンバー・ザ・タイム」の一節をループさせたり、トニ・トニ・トニ「レッツ・ゲット・ダウン」を思わせるコードを散らばせたりして、ステージの熱度を冷やさない。
前回は写真撮影許可を出し、中2階まで練り歩いたものだから、ジョーの周辺に人だかりが出来、10分以上ファンとのハグやサインでステージを空けたジョーだったが、今回は練り歩きはなし。それでも最後にファンとの触れ合いながらのアンコールラストは20分くらいは費やしてのステージアウトとなった。
ジョーがこれまで生み、贈り続けてきた良質なR&Bの佳曲を辿る80分。キャリアの長さから当然楽曲のセレクトは簡単ではなく、ヒット曲をフルサイズではなく短尺で披露するというところは、1曲をじっくりと聴きたい派にとっては多少残念ではであるだろうが、それでも90年代より成熟を重ねてきたミディアムR&Bを体感するにはまたとない機会。コンテンポラリーなR&Bに失われつつある時流だけに頼らない不変的なメロディの強さや歌の力を、ジェントルなスタイルで示してくれた。(特に女性への)ファンサーヴィスに力を入れるステージパフォーマンスに目がいきがちだが、芯となっているのは高いスキルと何より良質な楽曲群。そのバランスは今なお現役屈指といっていいだろう。一時は現役引退かと噂されたが、シーンに正統なR&Bやソウルを継承するために歌い続ける決意は不変。さらにアップデートされたスタイルを次回に期待したいところだ。
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<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Love & Sex Part2
02 Stutter
03 Don't Wanna Be A Player
04 Ride Wit U
05 Before I Let Go(Original by Maze feat. Frankie Beverly)
06 Thank God I Found You(Original by Mariah Carey feat. Joe, Nas)
07 Faded Pictures(Original by Case & Joe)
08 I'd Rather Have A Love
09 Let's Stay Home Tonight
10 If I Was Your Man
11 What If A Woman
12 Treat Her Like A Lady
13 More & More
14 All That I Am(Acoustic Set)
15 No One Else Comes Close(Acoustic Set)
16 Worse Case Scenario(Acoustic Set)
17 If You Lose Her
18 The Love Scene
19 All The Things(Your Man Won't Do)
20 Good Girls
21 I Wanna Know
≪ENCORE≫
22 Can't Get Over You(Original by Maze feat. Frankie Beverly)
23 OUTRO(including phrase of“Remember The Time”by Michael Jackson)
<MEMBER>
Joe(vo)
Jasmon Chamar Joyner(key)
David S Brown Jr(key)
Hironobu "KAPPA" Tanabe(g)
Anthony TURT Nembhard(b)
Willie Parker Jr.(ds)
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【JOEに関する記事】
・2007/09/04 JOE@Billboard Live TOKYO
・2008/10/21 Joe@Billboard Live TOKYO
・2017/03/10 JOE@Billboard Live TOKYO
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