*** june typhoon tokyo ***

CICADA@渋谷WWW




 2016年1月からスタートした5人組バンド、CICADA(シケイダ)の対バンイヴェント〈CICADA presents.“DETAIL”〉。5月の渋谷クアトロでのワンマンライヴまでに4回を数えたが、その第5弾〈CICADA presents.“DETAIL act.5”〉が開かれるとのことで、会場の渋谷WWWへと足を運んだ。対バン相手は4人組のカラスは真っ白。これまでの〈CICADA presents.“DETAIL”〉シリーズは次のとおり。

 〈CICADA presents.“DETAIL act.1”〉2016/01/08 CICADA@代官山LOOP with Seiho, Hisashi Saito
 〈CICADA presents.“DETAIL act.2”〉2016/02/19 CICADA@LOOP ANNEX with おかもとえみ 
 〈CICADA presents.“DETAIL act.3”〉2016/03/18 CICADA@代官山LOOP with Sawagi 
 〈CICADA presents.“DETAIL act.4”〉2016/04/17 CICADA@代官山LOOP with ORLAND

 ちなみに、これまでのCICADA関連記事は以下のとおり。

【CICADA 関連記事】
・2015/03/16 CICADA『BED ROOM』(アルバム・レヴュー)
・2015/01/25 Mixed Up@代官山LOOP
・2015/11/04 CICADA@WWW
・2016/01/08 CICADA@LOOP
・2016/02/19 CICADA@LOOP ANNEX
・2016/05/05 CICADA『Loud Colors』(アルバム・レヴュー)
・2016/05/26 CICADA@渋谷CLUB QUATTRO

◇◇◇

 

 まずは、カラスは真っ白のステージ。個人的に全くの初見。CICADAとは新潟にて数度共演歴があるとのことだが、音楽性の親和性も解からないまま当日を迎えた。

 目につくのはやはり紅一点のヴォーカル、ヤギヌマカナ。パンダのマペットを手にして歌う黒ぶちメガネ女子という出で立ちでウィスパーヴォイスを繰り出す姿は、相対性理論のやくしまるえつこ的とも言われそうだが、個人的にはたとえばチャットモンチーの橋本絵莉子やYUKIのポップネスを感じた。カラスは真っ白は彼女が作詞・作曲を担当しているとのことだが、彼女単体ならば非常に明快なガールズ・ポップ・ロックの体をなしている。ただし、ストレートなガーリー・ロックではなくて、ちょっとした遊びや“ヒネリ”を加えているところがYUKIあたりの感覚に似ていると感じた所以。それをファンキーなポップ・ロックに仕立て上げているのは、バンド隊のアレンジ力ということになる。
 ファンキーなグルーヴを奏でる中心は、ギター&MCのシミズコウヘイ。特にカッティング・ギターのキレは特筆もので、バンド全体に黒いうねりを巻き起こしている“目”は彼といって差し支えないだろう。そこへ時折ヴォーカルも披露するオチ・ザ・ファンクのボトムのしっかりした黒いベース、激しくタイトなドラミングながらもどこかジャズっぽい“タメ”のリズムを刻むドラムのタイヘイが絡んで彼らならではのファンキー・ポップ・ロックを構築している。

 この日はキーボードとトランペットがサポートとして参加していたこともあり、チープな表現で言うと“チャットモンチー&YUKI meets ブラン・ニュー・ヘヴィーズ with 渋谷系”(笑)といった様相。アシッド・ジャズとまでは行かないのは、やはり“バンド”というスタンスが輪郭にあるからかもしれない。ミラーボールが回るファンキー・ディスコあり、歌謡風ファンクあり、黒さ控えめなキューティ・ソングありと、アッパー・ジャズ・ファンクのアレンジを軸に多彩な遊びの引き出しを持ち合わせたユニークなマジカル・ファンク・バンド。個人的な嗜好で言うと、ウィスパーヴォイスがウリだとしても、もう少しヴォーカルが通る(声の大きさではなくて詞が耳に飛び込んでくるという意味で)といっそう彼らの世界観が体感出来たのかもしれない。黒系のサウンドをベースにポップに色付けというアプローチはそれほど珍しくはないと思うが、ヒネリの効いたポップ・サウンドをファンキーなアレンジをもって染め上げるというセンスはなかなか面白い。きっかけ次第で一気にスターダムにのし上がる可能性を持ったバンドではないかと感じた。今後の動向にも注目したい。



◇◇◇

 続いて、CICADA。クアトロでのワンマンライヴで今冬のメジャー・デビューとアルバム・リリースを発表。メジャー・デビューへ向けてさらなる進化が問われる非常に重要な助走期間ともいえる時期のライヴだったが、とにもかくにもメンバー一人一人からその充実ぶりと漲る自信が窺えた。

 セットリストの流れや構成はさほど前回のワンマンライヴやこの“DETAIL”シリーズと目立って変化することはないが、導入やバックトラック、アレンジなどをより突き詰める実験的な野心みたいなものを提示。これで完成形ということではないだろうが、楽曲が持つ有用性を最大限に活かそうとする気概が感じられた。おそらくこのあたりはキーボードの及川創介のアレンジメントの影響が強いのだろうが、そのなかでも各メンバーの独自のパーソナリティが滲み出る有機的なケミストリーが生まれているのだろう。

 城戸あき子のヴォーカルワーク一つ見ても、以前とは異なり(感覚的なものであるが)バックビート的な拍の歌唱スタイルを身に付けたようで、ラップ・パートからのメイン・ヴォーカルへの展開もいっそうスムースなものに。キーボード(シーケンサー)を操る若林ともにも独自のフレーズ・アレンジが垣間見えた。着流し風のロングシャツ姿も含めて、寡黙ながらも強いアイデンティティを感じ取れた。上モノのメロディを支配する及川のキーボードもポピュラリティを逸脱する寸前の個性とキャッチーなラインを行き来しながら、バンドの舵を切っていく。

 そして変化するものあれば、不動のものもあり。個人的に注視している木村朝教のベースとドラムの櫃田良輔のリズム隊だが、クリス・デイヴ、マーク・コレンバーグ・マナーの櫃田のドラムンベースはあくまでもそのスタイルを曲げずに直進一路。しかしながら、単細胞的に叩きまくるというのではなく、そのなかでも高速連射だけでなく弾く音と音の間にほんの僅かのタメや“含み”を感じさせ、それがビートだけでなく生命体の蠢きのような意志を感じさせ始める“色気”も薄っすらと見え隠れ。
 そしてバンドの中では地味に感じられながらも、彼らが黒さを保てる最大の理由が安定した木村の漆黒のベースは、途切れることのないグルーヴを通底させている影の貢献者。奇を衒うようなエキセントリックなものはないが、濃厚な黒褐色のボトムを強く打ち出すことで、バンドの安定感を創出している。

 終盤には今冬のニュー・アルバムに収録予定の新曲も披露。タイトルは未定だそうだが、“ラヴ”“ミュージック”のフレーズをリフレインする「YES」や「ONE」路線ともいえるメッセージ・ソング。単にファッションや飾りとしてのクールな楽曲ではなく、歌う以上は意志を持った楽曲を、という彼らが多くの人たちに自分たちの思いを伝えたいという強い信念が込められていた。
 特にこの新曲前後、「YES」から本編ラスト「stand alone」までの展開は、彼らがいかに充実しているかを感じさせるパフォーマンス。調子に乗り過ぎて、何か些細なことに躓き、見失わないか……そんな余計な心配も頭に浮かんでしまうほどのパワーやエネルギーがフロアに渦巻いていた。

 アンコールは対バン相手のカラスは真っ白を呼び入れて、七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」のカヴァーをアットホームな感じで披露。バンド同士の仲の良さを微笑ましく見つめながら、金曜の夜の渋谷の街を後にした。



◇◇◇

<SET LIST>
【カラスは真っ白】

【CICADA】
00 INTRODUCTION
01 No border
02 ふたつひとつ
03 Naughty Boy
04 back to
05 FLAVOR
06 熱帯魚
07 ONE
08 YES
09 *〈TBA〉Love Song(New Song)
10 Colorful
11 stand alone
≪ENCORE≫
12 Rollin' Rollin'(with A CROW IS WHITE)(Original by 七尾旅人×やけのはら)

OUTRO BGM Abyss(Especia)

<MEMBER>
CICADA are:
城戸あき子(vo)
櫃田良輔(ds)
若林とも(g & key)
木村朝教(b)
及川創介(key)

A CROW IS WHITE are:
ヤギヌマカナ(vo,g)
シミズコウヘイ(g,MC)
オチ・ザ・ファンク(b)
タイヘイ(ds)

(key)
(tp)





◇◇◇





















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