攻撃は良かったなどと考えている人がいたとしたら、それは甘い見方としか言いようがない。それほどに柏の状態は悪かった。前線にはクリスティアーノ、伊東純也、ディエゴ・オリヴェイラと揃えるも、まともな攻撃は出来ず。それ以上に中盤が酷く、パスミスやボールロストの連続。良かったのはGK中村航輔くらいで、前節の広島戦で3失点を喫したのも頷ける内容だった。前半でFC東京が何度も決定機を作っていたのも、当然の結果と言える。
だが、柏はワンチャンスをしっかりとものにした。FC東京の失点場面、柏の最終ラインからのロングボールをクリスティアーノが頭で落とし、エリア付近でディエゴ・オリヴェイラと競り合った丸山がクリアミス、そこへ重なるように動いていた森重が逆サイドの徳永へ向けて何とか横パスを出すと、徳永は後方からゴール前へ走り込んできた伊東に対応出来ずにGKとの1対1を作られて、伊東がゴール。非常に精神的に響く失点を喫することとなった。
そして、糺したいのは、決定的な場面を作られた時に何としてでもゴールを守るという気概が選手からほとんど見受けられなかったこと。結果的に直接伊東へパスを送る形となった森重は直後にGK秋元の後ろへ走り伊東のシュートを身体に当てようと動いたが、伊東に置き去りにされた徳永は無論、最初に相手と競った丸山、エリア内にいた室屋も足を止めてボールウォッチャーと化していた。ここ一番というピンチに諦観と指摘されても仕方ないパフォーマンスを見せてしまうことが、勝利を奪い取れない最大の原因ではないのか。
勿論、これは直接勝敗を分ける失点の場面ゆえ、強く批判されるのは当然。しかしながら、攻撃や展開など随所に“芯がないプレー”が散見されていた。手数を掛けてゴールを決めたらコンボが溜まって得点が2倍になるらしい、といったくだらない話もしたくなるような、まるで自分で決めるという強さから逃れるようなエリア内でのパス選択。確実なシュートチャンスを作る出すべく手数を掛けたはずなのに、その割に枠へ飛ばないシュートの数々。カウンターのチャンスが来ても相変わらず視野が狭く判断が遅く球離れも遅いゆえ、前線の動きに合ったボール出しが出来ずにオフサイドに引っ掛かり、コンビネーションパスがずれ、横パスやバックパスを選んでしまい、いっそう生まれる停滞感。
そこへ、選手たちに何をさせたいのか解からない、全くと言っていいほど効果を発揮しない選手交代や戦術が加味されるのだから、勝てる試合が勝てなくなるのも、冷静に考えてみれば、妥当な結論となるのかもしれない。
最下位の福岡、低質な柏にホーム＆アウェイで“ダブル”の敗戦を食らったFC東京。次節は川崎との“多摩川クラシコ”だが、好調の川崎の状態を考えると、このままではいつぞやの7失点の惨劇が繰り返される可能性も出てきた。正直なところ、今の城福監督では冷静な分析と対応は期待出来そうにもない。だが、ピッチで戦うのは選手たち自身である。テクニカルな部分での話は必要だろうが、まず最優先すべきは限界までボールを追うこと、走りぬくこと、自らのプレーに自信を持つこと、そのために声を出し自分を奮い立たせることだ。負けたら次がないノックアウト、トーナメント戦のつもりで死ぬ気で戦い抜かなければ、スタジアムへ足を運んでいたサポーターも、次第にスタジアムから足を遠ざけてしまう。
個人的には攻撃の精度もあるが、野球の攻撃と同じように“水モノ”の部分もある。揺らぎが少ないのはやはり守備だ。失点をしない、負けないサッカーを築いていければ、自信も攻撃への推進力も備わってくる。その意味で全体を俯瞰しながら指揮し、鼓舞出来るGKは非常の重要なポジションだ。今の秋元はそのパフォーマンスの質以上にチームを奮い立たせる存在になり得ていない。ここは一度ピッチ外から試合を観させて、再度冷静さを取り戻すきっかけを作るべきだ。その意味で、ヴェテランの榎本を一度起用してもらいたい。
また、普段は見せないショートコーナーを多用するも活かせないばかりの攻撃には、やはりストロングポイントを置いておくべきだ。（橋本を右SBに移動させて）右SBの室屋を左SBに配すようなことをするならば、守備面での課題はあるが、左SBに小川諒也を置いて、セットプレーでの有効性を求めたい。それがかなわないのであれば、これまでも経験済みの左SBに丸山を配して、吉本を森重と組ませることだ。普段と違うポジションで疑心暗鬼なプレーを生じさせるよりは普段のポジションで戦わせ、長所を最大限に活かすように配慮すべきだ。さらには、献身的なプレーをする前田、ムードを変える力を持つ水沼、フリーランニングを厭わない羽生の起用など、考え様はいくらでもある。
プレーする選手にとっては暑く苦しい夏だが、この7月、8月で精根尽きるくらい走り回れないと、本当に降格も見えてきてしまう。それくらいの危機感を持ちながら、強い意志で次へ向かわねばならない。
◇◇◇
【J1リーグ戦 第4節】
2016年07月17日／味の素スタジアム／19:03キックオフ
観衆：22,374人
天候：曇、無風
気温：27.0度／湿度：77％
主審：高山啓義／副審:宮島一代、岩田浩義
FC東京 0（0-0、0-1）1 柏
得点：
（東）：
（柏）：伊東純也（58分）
≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
06 DF 室屋成
03 DF 森重真人
05 DF 丸山祐市
02 DF 徳永悠平 → 河野広貴（67分）
04 MF 高橋秀人
07 MF 米本拓司
37 MF 橋本拳人
39 MF 中島翔哉 → 平山相太（72分）
11 FW ムリキ
16 FW ネイサン・バーンズ → 東慶悟（85分）
≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太郎
29 DF 吉本一謙
10 MF 梶山陽平
17 MF 河野広貴
22 MF 羽生直剛
38 MF 東慶悟
09 FW 平山相太
≪マネージャー≫
城福浩
◇◇◇
【J1リーグ】
≪2ndステージ≫
第01節 2016/07/02(土)19:00✕FC東京 2-3 鳥 栖（A・ベアスタ）
第02節 2016/07/09(土)19:00〇FC東京 1-0 甲 府（H・味スタ）
第03節 2016/07/13(水)19:00✕FC東京 1-2 福 岡（A・レベスタ）
第04節 2016/07/17(日)19:00✕FC東京 0-1 柏 （H・味スタ）
第05節 2016/07/23(土)18:30 FC東京×川 崎（A・等々力）
第06節 2016/07/30(土)19:00 FC東京×新 潟（A・デンカＳ）
第07節 2016/08/06(土)19:00 FC東京×磐 田（H・味スタ）
第08節 2016/08/13(土)19:00 FC東京×神 戸（A・ノエスタ）
第09節 2016/08/20(土)00:00 FC東京×横浜FM（H・味スタ）
第10節 2016/08/27(土)00:00 FC東京×名古屋（A・豊田ス）
第11節 2016/09/10(土)00:00 FC東京×湘 南（H・味スタ）
第12節 2016/09/17(土)00:00 FC東京×浦 和（H・味スタ）
第13節 2016/09/25(日)00:00 FC東京×Ｇ大阪（A・吹田Ｓ）
第14節 2016/10/01(土)00:00 FC東京×広 島（A・Ｅスタ）
第15節 2016/10/22(土)00:00 FC東京×鹿 島（H・味スタ）
第16節 2016/10/29(土)00:00 FC東京×仙 台（H・味スタ）
第17節 2016/11/03(木)00:00 FC東京×大 宮（A・NACK）
◇◇◇
≪1stステージ≫
第01節 2016/02/27(土)19:00✕FC東京 0-1 大 宮（H・味スタ）
第02節 2016/03/06(日)15:30〇FC東京 2-1 仙 台（A・ユアスタ）
第03節 2016/03/11(金)19:00〇FC東京 1-0 神 戸（H・味スタ）
第04節 2016/03/19(土)15:00✕FC東京 0-2 鹿 島（A・カシマ）
第05節 2016/04/02(土)16:00〇FC東京 3-2 名古屋（H・味スタ）
第06節 2016/04/10(日)19:00✕FC東京 0-1 柏 （A・ 柏 ）
第07節 2016/04/16(土)15:00✕FC東京 2-4 川 崎（H・味スタ）
第08節 2016/04/24(日)14:00△FC東京 1-1 甲 府（A・中銀スタ）
第09節 2106/04/29(金)17:00✕FC東京 0-1 福 岡（H・味スタ）
第11節 2016/05/08(日)16:00〇FC東京 1-0 湘 南（A・ＢＭＷス）
第12節 2016/05/13(金)19:00△FC東京 0-0 鳥 栖（H・味スタ）
第14節 2016/05/29(日)17:00〇FC東京 1-0 Ｇ大阪（H・味スタ）
第15節 2016/06/11(土)15:00△FC東京 0-0 磐 田（A・エコパ）
第10節 2016/06/15(水)19:00△FC東京 1-1 広 島（H・味スタ）
第16節 2016/06/18(土)19:00△FC東京 1-1 新 潟（H・味スタ）
第13節 2106/06/22(水)19:30✕FC東京 2-3 浦 和（A・埼 玉）
第17節 2016/06/25(土)19:00〇FC東京 1-0 横浜FM（A・日産ス）
≪1stステージ 順位表≫
01 鹿 島 39／17／12／3／02／29／10／+19
02 川 崎 38／17／11／5／01／33／15／+18
03 浦 和 33／17／10／3／04／26／16／+10
04 広 島 29／17／08／5／04／32／18／+14
05 大 宮 26／17／07／5／05／17／18／-01
06 Ｇ大阪 24／17／07／3／07／22／20／+02
07 柏 24／17／06／6／05／20／21／-01
08 磐 田 23／17／06／5／06／21／23／-02
09 FC東京 23／17／06／5／06／16／18／-02
10 仙 台 23／17／07／2／08／20／25／-05
11 横浜FM 22／17／06／4／07／21／19／+02
12 神 戸 20／17／05／5／07／23／25／-02
13 新 潟 18／17／04／6／07／19／25／-06
14 名古屋 17／17／04／5／08／24／29／-05
15 鳥 栖 17／17／04／5／08／10／15／-05
16 湘 南 16／17／04／4／09／18／27／-09
17 甲 府 15／17／03／6／08／18／31／-13
18 福 岡 11／17／02／5／10／11／25／-14
※（勝点／試合数／勝／分／負／得点／失点／得失点差）
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