ビルボードライブ東京でTHE ROOTS。昨年の来日公演(その時のライヴ・レポートはこちら)も同じような時期に来日していた。その時はカジュアル席(4F)からの観賞だったのだが、今回は自由席(3F=1F席)で、ということでライヴに臨む。整理番号はそんなに良くなかったのだが、運良く最前テーブル、ド真ん中の席をゲット。うぉぉぉぉぉ、クエスト・ラヴが真正面だ!!
それにしても、観客が黒い。もちろんそれは純粋な黒もいれば、黒に感化されている、魅了されている人たちも含まれるが、そのブラック・ムードたるや。アフロやドレッド率高し。1st公演終了後にはなんかジェイ・Zみたいなのが出てきたし。(爆)
そして、この公演の付加価値とすれば、昨年11月に“ザ・ルーツが精力的なコンサートツアー活動を来年3月で引退すると発表した”というニュースか。クエスト・ラヴが取材で答えた内容によると、アメリカの人気TV番組『Late Night』のホストがコナン・オブライエン(Conan O'Brien)からジミー・ファロン(Jimmy Fallon)に交代するにあたって、番組専属のハウス・バンド“Lat Night Band”へ参加することになったためにだとか。この番組はウィークデーに毎日放送されるため、番組出演期間中はライヴ・ツアーは難しく、現時点ではこの来日公演がラスト・ツアーになり得る可能性があると。ただ、番組の構成が変わったり、終了したりすればそれも解消されるだろうし、本当のラストかどうかは微妙だが、まぁ、ある種の誘導煽りネタっていう側面があったとしても、貴重なライヴとなることは確かだ。
メンバーは7名。左からキーボードのカマール、ギターのカーク・ダグラス、ド真ん中にドラムの御大クエスト・ラヴ、その右にテューバのデイモン・ブライソン、ベースのオーウェン・ビドル、デイモンとオーウェンの後ろにパーカッションのフランク・ウォーカー、そして、中央にMCのブラック・ソートといった布陣だ。昨年参加したヴォーカルのスキルズ(Skills)はが今回は参加せず、ギターがラモーン・コールドウェルからカーグ・ダグラスに変更している。パーカッションはフランク・ナックルズという名前だったが、これはフランク・ウォーカーと同一人物だろう。
ステージの構成や展開は昨年と同じような流れ。スタートから20分くらいはノンストップで立て続けに楽曲が繰り出される(といっても、ザ・ルーツのライヴはおおよそ曲間がなく、全篇ノンストップ・モードといってもいいくらいだが)。2ndステージということで慣れてきたのか、ブラック・ソートなどはかなりリラックスした様子。曲入りですんなり入らなくて照れ隠して笑ったり、曲間ではメンバーと談笑したり、中盤以降は水の代わりにグラスでビール(?)を片手にしながらフロウしてたり。(笑) 最初の方は、ややメタメタというか、ちょっぴり乗れていない感じも見受けられたが、中盤以降はしっかりと持ち直し(酒が入ったからか?…笑)、キレのあるフロウを決めてくれた(最前席左側の白人の美人姉ちゃんのところへばかり行ってラップしてたのはご愛嬌)。
今回のステージで特に活躍したのが、ギターのカーク・ダグラスとテューバのデイモン・ブライソン、そしてパーカッションのフランク・ウォーカーだ。カーク、デイモン、ベースのオーウェンがラインを組んで左右に振り返りながらステップを踏んだり(そこにフランクが入ることも)、ステージを所狭しと左右に動いたり。デイモンは単独で1回、カークとともに1回の計2回、観客席をぐるッと演奏しながら周ってくるパフォーマンス(単独の時は中2F席へ)も。カークはスキャット風のヴォーカルや風車式のギター演奏、熱のこもった表情などでコミカルに見せたりと八面六臂の活躍。あまりにはしゃぎすぎたのかが悪い方に出たのか解からないが、ラストあたりでエフェクターのスイッチが故障したようだが(苦笑)。
テューバのデイモンは、怒った時のふぐのように頬を膨らませながら、ジョイフルに演奏。多くの肺活量を有する楽器を演奏しながら、あの運動量は凄い。パーカッションのフランクは、中盤に前回でも披露したクエスト・ラヴが先導するドラミングにレスポンスしていくといったセッションでクエスト・ラヴに負けず劣らず、さらに煽るといった興奮の世界を創り出す。ヴォルテージが最高潮となったところで、タンッと演奏を止め、スティックを持った両手を天高く突き上げた時の2人のボケた表情がまたたまらなく良かった。さらにフランクは、ラストでは手持ちのパーカッションの場所を離れて、ダンサーとしてステージ最前に出てきて、“スタンド・アップ!”“ジャンプ!”"クラップ!”と全方位、全観客を煽るパフォーマンス(その前に「もうオレはじっとしてられないよ!」という感じで、クエスト・ラヴを見ながらスティックでパーカッションをポンッと叩いてから前方へ出て行ったのがまた楽しかった)。
今回も前回同様、アンコールはなし。前回のライヴ・レポートではそのことが「残念だった」と記したのだが、考え方を変えれば、もはやどのライヴでもお決まり、約束事となっているアンコールを、その流れでやることよりも、本編で完全燃焼するステージの方が充実度は高いのではないか。アンコールを計算した人気曲や最新ヒット曲をリストに残しておく本編セットよりも、一度しかないその時のステージを完全燃焼させるというのは素晴らしいことではないか、と。このあたりは、ヒップホップを生バンドで体感させるという、彼らのコンセプトであるリアリティーというものをしっかりと映し出したものにしようという心意気なのかもしれない。ブラック・ソードの観客への咆哮、達観したような表情で無心にドラムを叩くクエスト・ラヴ……彼らの変わらぬ意志、そして常に同じものはなく変化し続ける“ライヴ”感という、変わるものと変わらぬものの2つの重要な要素を実感し、その意味を考えさせられた貴重なステージだった。
ラストにクエスト・ラヴ以外のメンバー全員と握手やハイタッチなどが出来たのだが、どのメンバーも掌が分厚く、肉感の凄いこと!こんなのに本気出されたら圧倒されるのも無理ないねぇ。(苦笑)
メンバーのステージ・アウトを見届けた後に時計を見たら、なんと23時30分前! 約1時間40分くらいのヴォリュームとなり、満足な一夜でございやした。
◇◇◇
<SET LIST>
THOUGHT@WORK
HERE I COME
GAME THEORY
STEP INTO THE REALM
LONG TIME
YOU GOT ME
MELLOW MY MEN
BLACKMAN KNOW YOURSELF (Remix) (Original by FEMI KUTI)
BREAK YOU OFF
NEXT MOVEMENT
RISING UP
IMMIGRANT SONG (Original by LED ZEPPELIN)
THE SEED
MOVE ON UP (Original by CURTIS MAYFIELD)
MEN AT WORK (Original by KOOL G RAP & DJ POLO)
SWEET CHILD O' MINE (Original by GUNS N' ROSES)
<MEMBER>
Black Thought (MC)
Quest Love (Drums)
Kirk Douglas (Guitar)
Kamal (Keyboards)
Owen Biddle (Bass)
Frank Walker (Percussions)
Damon Bryson (Tuba)
最新の画像もっと見る
最近の「ライヴ」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事