銀幕に包まれて眠りたい

最新の劇場公開映画のレビューが中心です。

17歳の瞳に映る世界 感想

2021-07-18 07:37:25 | 洋画
「17歳の瞳に映る世界」
望まざる妊娠をした17歳の女性が、ペンシルベニアからニューヨークへ、親の許可無しに中絶が出来る州での出来事を綴った作品。
外から見るとアメリカは先進的で女性差別など過去のものと思ってしまうが、ペンシルベニアでもニューヨークでも女性に対する軽視、差別が軽くそして延々と行われて行く。それが男性のみではなく、男性社会に洗脳された女性からも受けてしまうのは「プロミシング・ヤングウーマン」でも描かれていたが、間を置かずして、再度映画で見せられるとはショック。
「17歳の瞳に映る世界」は一つ一つのセリフ、描写がドキュメンタリーでさえ及ばないのでは?と思える繊細さ。演出・脚本には劇的な味付けはほとんど無いのもあって、生々しく心に訴えてくる。
映画はmee too運動を受けて作られた物とも捉えることが出来るが、絶対的身体能力でどうしても男性に劣ってしまう女性への差別を根絶する事は容易ではないと感じた。

従姉妹を演じたタリア・ライダーは大スターになりそう。


宗教色が強い「プロミシング・ヤングウーマン」

2021-07-17 14:02:35 | 洋画
本作の根本的なテーマはFOXニュースやワインシュタインなど、近年のアメリカを騒がせたセクハラ問題にあるのは明らか。
それをスリリングなエンターテイメントにした事で、実話より強烈なショック描写が可能となり、例えばFOXニュースのセクハラを描いた「スキャンダル」より、よりテーマが鮮明になった。

主人公の友人を想う描写が弱いのがこの映画の欠点であるかもしれないが、主人公の行動、そしてラストに至るショッキングな展開は宗教的で、自らの死をもって友の魂を救う行動。そしてベッドの上で十字となって死ぬ姿は、イエス・キリストの磔の姿そのものである事が如実に表している。
日本は未だにセクハラをセクハラと感じてない行動やメディアが横行しており、キリスト教的な自己犠牲表現のこの映画を、日本人は果たして理解出来るのだろうか?


2021.7.17 TOHOシネマズ日比谷


「ジェントルマン」評論

2021-07-17 10:04:43 | 洋画
今作は全米のコロナ禍直前に封切られてヒットしたが、日本公開は1年半も遅れてようやく公開。
予告編からして洋画ファン向けな作品である気がしましたが、実際もその通りでした。洋画を見慣れている人じゃないと面白さが分からないかもしれない。
と言うのも出演者たち、そして監督のガイ・リッチーも楽しんでながらこの映画を撮っている事がスクリーンから伝わってきて、こちらまで楽しくなって来てしまう。こう言う感覚を得る作品は滅多に無くて、最近では「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」くらいかな。この映画も洋画ファンでしか分からない知性がありました。
ガイ・リッチー監督は商業性と作家性を両立出来る数少ない監督(その一番手はもちろんスピルバーグ)ですが、今回も作家性の割合が大きいながらも、マフィアの主人公を演じてるのは高感度が高いマシュー・マコノヒー、利益は害の少ない大麻の栽培、妻を心の底から愛していると、一般大衆から愛されやすいキャラクターですからね。
物語の進行は回想形式ながら、映画愛満載の語り口なのも映画ファンにとって非常に心地よい。
そして主なキャラクター全員に見せ場のあるシナリオは役者想い?なのも良い。
犯罪社会を描いたマフィアものは少々苦手だったけど、この映画はそんな苦手意識をぶっ飛ばすほど楽しかったです。
リピートして何度も観たい映画です。
欲を言えば奥さん役の女優さんは予定通り、ケイト・ベッキンゼールの方が好みでしたが。
またガイ・リッチー監督の新作「Wrath of Man」が全米で封切られたばかりですが、評価も高くチャートでも1位となりました。こちらも早く観たいですね。

配信作品「ソウルフル・ワールド」

2021-07-17 07:39:30 | ビデオ、配信
「ソウルフル・ワールド」
コロナ禍で配信&ビデオ公開作品となってしまい投稿を迷いましたが、劇場公開されていれば間違いなく映画史に残る傑作になっていたと思います。
精神、心、魂を映像化した映画はそれなりにありますが、この映画の監督、脚本のピート・ドクターは前作「インサイド・ヘッド」で心の世界を、そして原案の「WALL.E」では未来の堕落した人々を描いて高く評価されましたが、「ソウルフル・ワールド」では魂の存在をストレートに描いて、しかもそれに対して明確な解答を出していることに非常に驚くと同時に衝撃を受けました。
映像は岡本太郎を思わせるデザインで前衛的。調べてみたら、やはりかなり参考にしているようでした。







ユニークな映像は子どもも楽しめるかもしれませんが、物語は人生の挫折や苦しさを何度も経験した大人ためのものになってます。
2週間で良いからいつか劇場でぜひ公開して欲しいです。

ブラック・ウィドウ 魅力的女優共演の快作

2021-07-16 03:24:50 | 洋画
公開が1年以上も遅れて待ちに待ったと言う想いは実はさほど無くて、と言うのもアベンジャーズの中では添え物的存在な感があり、確かに強いのだけど普通の人間に限りなく近いので、他のスーパーヒーロー前では地味な存在だからです。しかも「アベンジャーズ インフィニティウォー」の前の話ですから自分の中ではちょっと盛り上がりに欠けてました。
なのでこの映画の1番の楽しみはフローレンス・ピューが妹エレーナ役で出ている事でした。
そして映画が始まりすぐに気づいたのが大ファンのレイチェル・ワイズが母親役で出ている事。事前情報はあまり見ない事にしているので、これは嬉しい驚きでした。
これで一気にこの映画に乗せられてしまい、大好きな女優さん揃い踏みしたブラックウィドウが大活躍するだけで満点。そしてすぐに2回目を観に行き、1回目は大アクションに圧倒されるだけでしたが、2回目はドラマも堪能。生活ギャグマンガのようなクスクス笑いから、ベタではあるけれど、1度離れ離れになった家族の心と体がまた一つになって行くシーンに素直に感動してしまいました。
そして特筆したいのはラスボスであるレッドルームの支配者ドレイコフの存在。マーベル映画史上もっとも嫌な奴なのは間違いありません。ナターシャとのタイマンの格闘シーンは他のシーンとは異次元の異様な迫力を感じました。

でもこの映画の1番残念な事は「アベンジャーズ インフィニティウォー」の前に作って欲しかった事です。もしそうなってればブラックウィドウに対する視線は違ってくるだろうし、「アベンジャーズ インフィニティウォー」の中での描かれ方も変わって来たと思います。
続編はこのスーパーヒーロー“家族“再集結でお願いしたいところです。