国宝《聖徳太子絵伝》
展示:2019年10月29日〜11月24日
東京国立博物館・法隆寺宝物館

国宝《聖徳太子絵伝》10面
秦致貞筆、延久元年(1069)
東京国立博物館
第1面(部分)
法隆寺は、607年頃に建立された西院伽藍と、739年に建立された夢殿を中心とする東院伽藍からなる。
夢殿の背後(北側)に建立された経蔵には、聖徳太子ゆかりの経典や宝物が納められた。この建物は、1069年に東方に舎利殿、西方に絵殿と二分する形に改造され、絵殿の内壁の東・北・西面に障子絵として聖徳太子絵伝が描かれた。
展示風景

約60の事蹟(時間軸に沿わせず、地理関係を考慮して配置)が描かれたこの聖徳太子絵伝。現存最古かつ最も優れた聖徳太子絵伝とされ、11世紀のやまと絵の説話画としても貴重な遺例とされる。
「全面に補絹、補彩、補筆が施されており、制作当初のものはわずかに綾絹のみといわれるほどだが、図様は当初のまま忠実に再現している」。
江戸時代(1788年)に二曲五隻の屏風に改装される。1877年に皇室に献上され、戦後東京国立博物館の所蔵となる。1968〜72年にかけて現在の10面のパネル装に改められる。
第1・2面

私が見るのは2度目。前回は東博の2018年の特別展「名作誕生-つながる日本美術」展で、全10面中、前期6面・後期4面の展示。非展示面は複製図版の展示であったが、正直、説明書きがないと、実物と複製が見分けられなかった記憶がある。
第3・4面

画面の傷みはひどい。もともと描かれている人物が小さいうえに、傷みがひどいものだから、肉眼では詳細鑑賞は無理、画面の雰囲気・傷みぶりを愛でるしかない。単眼鏡でも大きな画面から少しでも残っている部分を探すのは難儀なうえ、(性能の問題もあるが)それほど見えるわけでもない。
展示風景

今回、「8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」2019」と題し、大型8Kモニターにより、高精細画質で作品の細部まで鑑賞できる企画があわせて実施されている。昨年度に続く企画であるようだ。
ここまで詳細に見ることができる(国立文化財機構・文化財活用センターのサイトから借用)。
1歳、太子の誕生を祝う宴(第1面)

16歳、父の用明天皇を見舞う(第3面)

部分的にはしっかり色彩が残っているが、多くは江戸時代の補彩であるようだ。
(参照)
国立文化財機構・文化財活用センター
artscapeアートスケープ(DNP)