ターナー 風景の詩
2018年4月24日〜7月1日
損保ジャパン日本興亜美術館
「100%ターナー!第一級作品との贅沢な時間」
本展の構成
第1章 地誌的風景画
第2章 海景-海洋国家に生きて
第3章 イタリア-古代への憧れ
第4章 山岳-あらたな景観美をさがして
ターナーの回顧展は、2013年に東京都美術館にて、1997年に横浜美術館にて開催されており、今回がおそらく3回目の鑑賞となる。
本展は、ターナーの油彩画、水彩画、版画作品約120点の出品。エディンバラのスコットランド国立美術館群ほか英国各地25の美術館・所蔵家、および郡山市立美術館ほか国内美術館の所蔵作品である。
以下、気になった作品5選。
No.24
《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》
1802年展示
油彩、91.5×122cm
サウサンプトン・シティ・アート・ギャラリー
テーマは「自然の脅威と人間の無力さ」。晩年ターナーは本作品を買い戻そうとしたが、実現しなかったという。
No.41
《海岸で救難作業をする人々》
1840年代
水彩、22.2×29.2cm
個人蔵
画面の大半を占める、荒れた海と空。圧倒的な大自然に対抗する、小さく、絵具の染みに見間違えそうなほどラフに描かれた人間たち。大自然が画面の主人公であることで、救難作業者たちが置かれた絶対の厳しさをより強く感じる。
No.55
《キリスト教の黎明(エジプトへの逃避)》
1841年展示
油彩、直径78.5cm
ベスファルト、北アイルランド国立美術館群
エジプト・ナイル河。半分浸水した古代建築物。私がターナー作品に対して期待する光と色彩が伺える作品。
No.45
《テルニの滝》
1817年頃
水彩、22.2×13.2cm
ブラックバーン博物館アート・ギャラリー
イタリアのウンブリア州の街テルニの郊外にある「マルモレの滝」を描いた小品。マルモレの滝は、落差165メートル、紀元前2世紀、古代ローマ時代に作られた人工の滝であるという。
No.63
《サン・ゴダール山の峠、悪魔の橋の中央からの眺め、スイス》
1804年展示
水彩、98.5×68.5cm
ケンダル、アボット・ホール・アート・ギャラリー
サン・ゴッタルド峠は、スイスのティチーノ州・アイロロ(イタリア語圏)とウーリ州・ゲシェネン(ドイツ語圏)との間にあるアルプスの北と南を結ぶ交通の要衝。一番の難所、急流逆巻くシェレネン渓谷。そこに13世紀に初めて架橋されたのが「悪魔の橋」である。
ターナーは、峡谷を実景よりも鋭角のV字形に描いているという。展示室には、シェレネン渓谷・悪魔の橋の写真パネルが参考掲示されている。
これだけたくさんのターナーの風景画を見ていると、次第にどの作品も同じように見えてくる。そうなると、各作品の印象度合いは描かれた場所に左右されてくる。私的には、イタリアとかスイスとかの親しみのある風景(実景を見たことは勿論ない)が印象度高となる。