日伊国交樹立150周年特別展
アカデミア美術館所蔵
ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち
2016年7月13日~10月10日
国立新美術館
アントネロ・ダ・メッシーナ(1430年頃 - 1479年)。
イタリア・シチリア島のメッシーナで生まれ、没した。
その生涯の大部分を故郷メッシーナで過ごしたが、修業時代をナポリで過ごし、ヤン・ファン・エイクなどのフランドル画家の作品に接した可能性があるほか、1475年からその翌年までヴェネツィアに滞在し、フランドル風の本格的な油彩画技法をヴェネツィアにもたらしたとされる。
本展では、アントネロ自身の作品は出品されていないが、そもそもアントネロの作品は、ヴェネツィアではコッレール美術館にただ1点あるだけなので、本展への出品は叶うことはない。
その代わり、アントネロの代表作の一つである《受胎告知の聖母》の、甥アントニオ・デ・ザリバによるコピー作品が出品され、ヴェネツィア美術におけるアントネロ・ダ・メッシーナの重要性を認識できるようになっている。
【オリジナル】
アントネロ・ダ・メッシーナ
《受胎告知の聖母》
1476年頃
45×34.5cm
パレルモ、シチリア州立美術館
鑑賞者が大天使ガブリエルの位置に立つという、小品だが、凄いとしか言いようのない作品。
コピー作品は、甥が後年(1480〜1497年のいずれかの時期とされる)のヴェネツィア滞在に際して地元から持ち込んだとされる。こちらの方が真筆(パレルモ作品がコピー)と考えられていた時期(20世紀初頭以前)もあったらしい。
パレルモ作品にはない(あるいは消えてしまった)光背がこちらにはある。
【コピー作品】
アントニオ・デ・サリバ
《受胎告知の聖母》
1480-90年頃
47×34cm
ヴェネツィア、アカデミア美術館
【参考】
ヴェネツィアに所在する唯一の作品
アントネロ・ダ・メッシーナ
《ピエタ》
115 × 86 cm
ヴェネツィア、コッレール美術館
本作は、キリストと天使の顔が削り取られてしまっているのに目が行ってしまうが、キリストを両脇から支える天使、キリストの肌、後景などの描写に惹かれる。
アントネロの2年間のヴェネツィア滞在時の制作作品としては、このコッレール美術館作品のほか、アントワープ作品とか、ドレスデン作品とか、候補はあるようだが、参照先により微妙に制作年が異なるので、よく分からない。
【参考:アントワープ作品】
《キリストの磔刑》
52.5×42.5 cm
アントワープ王立美術館
【参考:ドレスデン作品】
《聖セバスティアヌス》
171×85.5 cm
ドレスデン、アルテ・マイスター絵画館
シチリアの画家なのに、わずか2年弱の滞在で、ヴェネツィア派における重要な画家とされてしまったアントネロ・ダ・メッシーナ。
私の保有する画集には39点の作品が掲載されているが、その作品の所在都市を確認する。☆は点数を示す。
【シチリア・南イタリア】
☆メッシーナ
☆☆☆☆パレルモ
☆チェファル
☆シラクーザ
☆☆レッジョ・カラブリア
【イタリア】
☆ヴェネツィア
☆ピアツェンツァ
☆ジェノヴァ
☆ミラノ
☆トリノ
☆ローマ
☆個人蔵
【ヨーロッパ】
☆☆☆☆☆ロンドン
☆☆パリ
☆☆ベルリン
☆☆マドリード
☆ウィーン
☆ミュンヘン
☆ドレスデン
☆アントワープ
☆ブカレスト
☆コモ
【アメリカ】
☆☆☆ニューヨーク
☆フィラデルフィア
☆ワシントンDC
☆ボルチモア
10点弱がシチリアに残るが、後は世界のブランド美術館に散らばっている。
そのなかでも、ロンドン = ロンドン・ナショナル・ギャラリーが5点と突出する。うち4点が19世紀中の購入(残る1点も1920年代の取得)である。そのコレクションが西洋美術史であるロンドン・ナショナル・ギャラリー、恐るべし。