
エディンバラのスコットランド・ナショナル・ギャラリーが所蔵するフェルメール最初期の作品。
1653年、21歳で親方となったフェルメールは、当初、歴史画や宗教画などの物語画家を目指す。
本作は、物語画家を目指していた時代、1654-55年頃の制作とされる。
フェルメール現存作品では最も大きいサイズ、158.5×141.5cm。
2008年東京都美術館のフェルメール展で初来日、今回は10年ぶり2回目の来日となる。
秦新二『フェルメール展 名画争奪の現場』2008年12月号文藝春秋より
この館は一番に貸し出しを了解してくれた。だが、ひとつ大きな問題が浮上した。フェルメール作品のなかでもっとも大きいこの絵は重量もあり、ギャラリーの壁にあまりにも長くかけられているため、どのように外したらよいか、誰もわからないというのである。だが、美術品輸送業者「モマット」の担当者が以前の経験を覚えていて、やっと動かすことができた。
「『あまりにも』長くかけられている」とあるので、数十年という期間を勝手に想像した。
確認すると、2008年の前は、2001年のニューヨーク/ロンドンのフェルメール展に貸し出しているようだ。
この世界、7年という期間はそんなにたいへん大きな期間なのだ、と感心した。
なお、2001年の前の貸出は1995-96年のワシントン・ハーグのフェルメール展、その前の貸出となると1950年代のこととなるようだ。
2008年のあとは、2011-12年のハーグ/ドレスデン/自館のヤング・フェルメール展、2012年の伊・リミニの西洋美術名品展、2015-16年の米2都市/シドニーの館所蔵作品展と、結構な頻度で貸し出されている。
ちなみに、2018年のフェルメール展にあわせて刊行された、秦新二・成田睦子著『フェルメール最後の真実』文春文庫では、「あまりにも」の文言が削除されている。
本作は1880年代から英国での売買記録がいくつかあるようだ。1901年にスコットランドの実業家コーツがロンドンの画商から購入。1927年、その息子たちの寄贈により、館の所蔵となっている。
本作は2008年の初来日時に観ている。東京都美術館の展示室の天井高の低さと他作品の小ささもあって、本作は見上げるばかりの大きさ。
そのサイズ、色調、三人の落ち着いた佇まい、三人の視線が示す親しげな雰囲気など、えらく感心した記憶が残る。今回の再会が楽しみ。
画面の左下、マリアが腰掛ける板に画家の署名がなされているので、それもしっかりと見たい。

また、マルタの持つパンとパン籠についても、《牛乳を注ぐ女》のパンとパン籠と見比べたい。

本作は、東京・大阪とも通期展示である。