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スコットランド国立美術館所蔵のゴッホ《農婦の頭部》の裏面に《自画像》を発見

2022年07月19日 | 西洋美術・各国美術
 現在巡回中のスコットランド国立美術館展。
 東京会場(東京都美術館)は終了し、7月16日から神戸会場(神戸市立博物館)が開幕したところ。そのあと、北九州会場(北九州市立美術館)が予定されている。
 
 そのスコットランド国立美術館が、2022年7月14日、同館所蔵のゴッホ《農婦の頭部》の裏面に《自画像》を発見したことを発表した。
 
 
ゴッホ
《農婦の頭部》
1885年、46.4×35.3cm
スコットランド国立美術館
 
 
発見された《自画像》(X線撮影)
 
 
現在の《農婦の頭部》の裏側
 
 
 スコットランド国立美術館が本年7月30日から11月13日まで開催予定の「A Taste for Impressionism」展のために調査していたところ、発見したらしい。
 
 パリ時代のゴッホが、カンヴァス費用の節約のため、過去ヌエネン時代に制作した《農婦の頭部》を再利用し、その裏側に、モデル費用が払えないため、自らの像を描いたようだ。
 
 おそらく1905年頃、テオの妻が所蔵していた時代、アムステルダム市立美術館に貸し出すこととなり、額装する前にカンヴァスを厚紙に貼り付けることとした。
 そのとき、農婦の頭部は、ゴッホの自画像よりも明らかに「完成作」と考えられたようで、農婦の頭部が表となり、自画像は裏に隠されることとなった。
 
 その後、自画像は隠されたまま、所有者が何度か変わり、1951年にスコットランドの個人蔵に、そして1960年にスコットランド国立美術館の所蔵となった。
 
 隠された自画像を表に出すためには、接着剤や厚紙を取り除く必要があり、その作業は極めて繊細な作業となる。《農婦の頭部》を傷つけることなく行うことができるか、その方法を研究中という。
 
 
 ゴッホが、節約のため過去に制作した作品を再利用し、その上に上書きする、あるいは本作品のように裏側に描くことは、よくあったこと。
 
 そこで、美術館プレスリリースに記載された、過去作品の裏側に描かれた作品を確認する。
 
 
【ゴッホ美術館所蔵】
 
ゴッホ
《瓶と陶器のある静物》
1884-85年、31.5×41.8cm
《自画像》
1887年、41.8×31.5cm
 
ゴッホ
《鳥の巣》
1885年、31.3×43.2cm
《自画像》
1887年、43.2×31.3cm
 
ゴッホ
《農婦の頭部》
1885年、42.2×34.5cm
《自画像》
1887年、42.2×34.5cm
 
ゴッホ
《ジャガイモを食べる人々(習作)》
1885年、33.6×44.5cm
《自画像》
1887年、44.5×33.6cm
 
ゴッホ
《農婦の頭部》
1885年、43.5×36.2cm
《ひまわりのある庭》
1887年、36.2×43.2cm
 
 
【メトロポリタン美術館所蔵】
 
ゴッホ
《ジャガイモをむく農婦》
1885年、40.6×31.8cm
《麦わら帽子をかぶった自画像》
1887年、40.6×31.8cm
 
 
 さて、スコットランド国立美術館の裏面の自画像は、上記に挙げた他館所蔵の裏面の自画像5点のうちどの作品に近いのだろうか。


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