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「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」展 & 庭園(根津美術館)

2021年12月13日 | 展覧会(日本美術)
重要文化財指定記念特別展 
鈴木其一・夏秋渓流図屏風
2021年11月3日~12月19日
根津美術館
 
 根津美術館が所蔵する、鈴木其一筆の《夏秋渓流図屏風》が2020年に重要文化財指定を受けた。
 其一の作品としては、初めての重要文化財指定だという。
 本展は、所蔵館による重要文化財指定記念特別展。
 
 
「文化審議会答申 ~国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定及び登録有形文化財(美術工芸品)の登録について~」(令和2年3月19日)の「II.解説」より
 
「紙本金地著色 夏秋渓流図 六曲屛風 一双」
【所有者】公益財団法人根津美術館(東京都港区南青山6-5-1)
【法量】各 縦165.8cm 横363.3cm 
 鈴木其一(1795/96~1858)は江戸で活躍した絵師。早くから江戸琳派大成者・酒井抱一(1761~1828)の事実上の後継者と評価されていたが、近年の研究で江戸時代後期を代表する個性的な絵師として再評価されるに至った。本図は江戸琳派の支援者であった江戸の油問屋・大坂屋松沢家に伝来したもので、落款の様子から40歳代後半の作と考えられる。この時期、江戸琳派の枠を突破して、其一独自の画域に到達した。金箔地に鮮やかな青色の水流がとくに印象的な本図は、其一の特質を最もよく示した大作である。
 
✳︎残念ながら、晴れの舞台であったはずの東京国立博物館の毎年GW期恒例の「新指定国宝・重要文化財」展の2020年(令和2年)版(会期予定4/21〜5/10)は開催中止となっている。
 
 
【本展の概要】
 鈴木其一(1796~1858)の筆になる「夏秋渓流図屏風」は、岩場を削る水流のある檜の林を確かな現実感をもって描いた画面に、異様な感覚を抱かせる描写が充満する作品です。
 鮮やかな青に粘り気のある金の細線が走る渓流、今にも溶け落ちそうな緑の土坡、鋭角的に縁取られた金色の地面、檜の幹や岩に付着する無数の苔、大きすぎる百合、単純化された熊笹、右隻右から三扇目の檜に真横向きにとまる蝉・・・。
 其一は、江戸の地で、一世紀前の京都で活躍した尾形光琳(1658~1716)を顕彰し、「江戸琳派」の祖となった酒井抱一(1761~1828)の高弟ですが、徹底した写実表現やシャープな造形感覚、ときに幻想的なイメージを加え、個性を発揮しました。そんな其一の画業の中心にあるのが、最大の異色作にして代表作でもある「夏秋渓流図屏風」です。2020年に、其一の作品としては初めて、重要文化財に指定されました。
 本展では、抱一の影響や光琳学習はもとより、円山応挙や谷文晁、古い時代の狩野派など琳派以外の画風の摂取、そしてそれらを、自然の実感も踏まえつつ統合する其一の制作態度を検証して、本作品誕生の秘密を探ります。 
 
【本展の構成】
序章 檜の小径を抜けて
1章 「夏秋渓流図屏風」誕生への道行き
2章 其一の多彩な画業に分け入る
 
 
 展示室1は、序章と第1章。
 大型の屏風画が5点。主役である鈴木其一の重文《夏秋渓流図屏風》に、師・酒井抱一の重文《夏秋草図屏風》と円山応挙の重文《保津川図屏風》が並ぶさまは壮観。さらに抱一もう1点と山本素軒。
 狩野常信、谷文晁、酒井抱一などの掛軸画4点や、酒井抱一編「光琳百図」、其一が西日本を旅した時の記録「癸巳西遊日記」も加わって、其一が何を血肉にして《夏秋渓流図屏風》を生み出したかを探る。
 
No.5 鈴木其一
重文《夏秋渓流図屏風》6曲1双
江戸時代・19世紀、根津美術館
・鮮やかな青に粘り気のある金の細線が走る渓流
・今にも溶け落ちそうな緑の土坡
・鋭角的に縁取られた金色の地面
・檜の幹や岩に付着する無数の苔
・大きすぎる百合
・単純化された熊笹
・右隻右から三扇目の檜に真横向きにとまる蝉
 
No.1 狩野常信
《檜に白鷺図》1幅
江戸時代・18世紀、個人蔵
→「江戸における檜の系譜」
・垂直に描かれる檜の幹。白っぽい緑を用いた苔が多めに打たれるのは、狩野派的特徴。
→ 其一は、白っぽい緑を用いた苔を、「多め」どころか「無数」に描きこむ。
 
No.3 谷文晁
《檜蔭鳴蝉図》1幅
江戸時代・19世紀、逸翁美術館
→「蝉のいる覚めた画面」
・写実を追求したうえでの醒めた感覚。
→其一は、真横向きの蝉1匹を描きこむ。
 
No.7 酒井抱一
《青楓朱楓図屏風》6曲1双
江戸時代・1818年、個人蔵
→「色彩感と細部描写」
・抱一編『光琳百図』に同様の図あり。抱一は光琳の実物を実見し、描いたか。
→ 其一は、百合や桜葉を写実的に描きこむ一方で、単純化された熊笹も描きこむ。熊笹は異次元の存在、エイリアンのよう。
 
No.9 酒井抱一
重文《夏秋草図屏風》2曲1双
江戸時代・19世紀、東京国立博物館
(12/7〜19の期間限定出品)
→「写実と透徹した美意識」
・光琳「風神雷神図屏風」の裏面に描かれる。
・右隻(表面は風神図)は夏の驟雨に打たれる夏草、左隻(表面は雷神図)は秋の野分に打たれる秋草。
・右隻画面右上の、青の水溜りのようなものに金色の細線
 
No.11 円山応挙
重文《保津川図屏風》8曲1双
江戸時代・1795年、株式会社千總蔵
→「渓流の前景化」
・応挙が没した年に描かれた最後の大作。
・其一は、実物を実見?
→其一も、渓流を前景化して描く。
 
No.12 山本素軒
《花木渓流図屏風》6曲1双
江戸時代17〜18世紀、個人蔵
→「構図と表現のベース」
・作品を解き明かす新しいピース。
 
 
 展覧室2は、第2章。すべて其一の作品、全16点に囲まれる。
 
 
 
 根津美術館のホームページより。
 
 
「庭園の紅葉はピークを過ぎましたが、秋の名残を楽しみいただけます」として、12/11(土)14:00時点の「いまの庭園」写真4枚が掲載されていた。
 
 たまたま同日の1時間半後の庭園の写真を撮ったので、レベルは劣るけど、3点掲示する。
 
 


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