メトロポリタン美術館展
西洋絵画の500年
2021年11月13日~2022年1月16日
大阪市立美術館
アンニバーレ・カラッチ(1560-1609)
《猫をからかう二人の子ども》
1587-88年頃、66×88.9cm
メトロポリタン美術館
少年と年下の少女。
少年は猫にザリガニを近づける。少女は面白そうに見ている。猫は嫌がっている。子どもが持つ残酷な面。
次のシーンは、二人の期待どおりになるだろうか。
個人的には、ザリガニに触れられた猫は間一髪逃れて少女の顔を引っ掻き、慌てた少年はザリガニに指を挟まれるというシーンを想像する。
本作品は、イタリア風俗画の初期の例とのことだが、これに先立つ作例がある。
ソフォニスバ・アングイソッラ(1532頃-1625)
《ザリガニに挟まれる子ども》
1554年頃、カポディモンテ美術館
こちらも二人の子どもが登場するが、年下のほうの子どもがザリガニに指を挟まれてしまって痛くて泣いている様子が描かれる。
この素描には、次のような逸話がある。
当時22歳頃の女性画家ソフォニスバは、ローマに行った際に、ルネサンスの巨匠ミケランジェロと面会する。笑う少女の素描を見せたところ、ミケランジェロは「泣いた顔は笑った顔よりも描くのが難しい」と述べる。それを受け、ソフォニスバはこの素描を描く。
この素描が世に知られたのか、その後このモチーフは人気となったようである。上述のアンニバーレ・カラッチ作品しかり、また、カラヴァッジョも次の作品を残している。
カラヴァッジョ(1571-1610)
《トカゲに噛まれる少年》
1594-95年、66×49.5cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
トカゲに変換されている。
植物やガラスの花瓶、花瓶に映る窓の光といった写実的な描写が目を惹く。
本作には、フィレンツェのロベルト・ロンギ美術史財団が所蔵するもう一つのバージョンがあって、2016年の国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」で来日している。2点とも画家の真筆と考えられているようである。
カラヴァッジェスキもこのモチーフに盛んに取り組む。
2016年「カラヴァッジョ展」の図録に参考図版として紹介されていた作品を挙げる。
ペンショナンテ・デル・サラチェーニ
《ザリガニに挟まれる少年》
1610年代
個人蔵
カラヴァッジェスキらしい背景。桶に盛りだくさんのザリガニ。悲鳴を上げる少年。
イタリア・バロック初期の風俗画は好みなので、今回、カラッチ作品を観る機会を得たのは非常に嬉しい。