東京でカラヴァッジョ 日記

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ジョルジョ・モランディ展(東京ステーションギャラリー)

2016年02月21日 | 展覧会(西洋美術)

ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏
2016月2月20日~4月10日
東京ステーションギャラリー

   困った画家である。


   Sec.1~9の静物画82点のうち68点(83%)の作品名が、《静物》。
   Sec.10の風景画10点のうち8点(80%)の作品名が、《風景》。
   Sec.11の植物画10点全部(100%)の作品名が、《花》。
    *東京会場不出品3点含む。


   出品リストがこれほど使えない展覧会は初めて。

   制作年と寸法と技法・素材と所蔵先の違いはあるけれど、制作年なんてただの数字だし、寸法は一目瞭然なほど差があるわけではないし、技法なんて油彩か鉛筆かエッチングかぐらいの種類しかないし、所蔵先は多くが「モランディ美術館(ボローニャ)」で後はイタリアの馴染みのない美術館・コレクション名が並ぶだけ。


   なにより、大半の作品のモデルが瓶や容器で、それも画家の「お気に入り」の瓶や容器が同じテーブルの上で同じ壁を背景にして繰り返し描かれていて、作品の区別が不能。


   戸惑うモランディ初心者の私をナビゲートしてくれるのは、各セクションの冒頭にある解説パネル。

   「年代順や技法別ではなく、年代や技法を超えて、モチーフや画面構成の特徴ごとの11のセクション」により構成される本展、パネル解説がどこに注目して見れば有用かを教えてくれる。

   しかも、有難いことに、パネル解説と全く同じ内容が紙でも配布されている。おかげで、解説の内容を覚えたり、メモしたり、あるいは時折りパネルに戻って再確認したりする必要もなく、各作品とじっくり向き合える。


【構成と主なモデル】

I  変奏のはじまり
    比較的初期の作品

II   溝に差す影
・表面に溝のある白い瓶
・溝の入った球体(玩具の一部と言われている)

III   ひしめく器ー都市のように
・金属製の円筒(穀物を量るための古い計器で、望遠鏡のように伸ばしたり縮めたりできる)

IV   逆さのじょうご
・金属の円筒の上に逆さにしたじょうごを溶接した自作の器
・銅製のソースパン

V   矩形の構成
・黄色い布
・レンガ色の瓶(透明な瓶に顔料を流し込んで色を変えたもの、表面に埃が積もっている)

VI   多様なハッチング
   銅版画

VII   ペルシャの扁壺
・ペルシャ語の文字が側面に書かれた扁壺2個セット

VIII   縞模様の効果
・四角い土台つきの青い縞模様の花瓶
・ふちの赤い小さなカップ
・把手のあるビアマグ

IX   終わりなき変奏
・もはやおなじみといって良い器の数々(画家が自ら色を塗った首の長い瓶、水差し、様々な色のオバルチン(ココア飲料)の缶、ほか)

X   風景の量感
・ドアも窓もない家々
・雲さえもない空(例外的に飛行機雲)

XI   ふるえる花弁
    花の絵を売ろうとはせず、家族や友人にために取りおいたり、特別な場合に譲ることを好む。

 


「ボローニャのモランディ美術館の全面的な学術協力のもと、イタリア各地および国内から集まった油彩画約50点、水彩、素描、版画約50 点が彩る贅沢な空間が実現」
「うっとりするほどの気品と絵画のエッセンスを間近に堪能できる、まさに眼福の語がふさわしい至高の体験の機会」

 

   その宣伝文句は大げさではない。
   ちょっと位置を変えたりちょっと向きを変えたり少し物を入れ替えたり。モランディ作品は実に魅力的である。



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