kageの機材庫

Nikon F・F2・F3・F4・F5。Nikon S2。Aisニッコール。Sマウントニッコールetc。一部フジフィルム

不遇の背番号4

2012-10-02 00:00:00 | ニコン

Nikon F4s (1988-1996)


とあるリサイクルショップ。

ジャンクコーナーに放り込まれていたF4sを拾い上げる。

「500円」

「え?」(・o・;)

外観は綺麗だし、製造番号も所謂250万番台以降。
F4が嫌われる最大の要因のボディのテカリも無く、フィルム室も、ミラーも、ファインダーも、モルトも綺麗。

店員にジャンク理由を訊くと「モーターが動かないんです。」との返答。
バッテリーグリップとカメラ本体との接点不良か、内部で通電していないとかだろうか。



Fシリーズは既にF・F2・F3・F5と所有していたのですが、F4のプラ外装はやはり好きになれず買う事は無いだろうと思っていました。

でも500円なら話は別で、動かなくても飾り物にはなるので迷う事無く買い、(逃げるように)足早に店を後にしました。
だって、フォーカシングスクリーンだけでも1,500円する訳ですし、頭(ファインダー)だけでも数千円はするだろうに・・。


早速、エネループを入れ動作チェックを。
買う時にチェックし忘れていたのですが、電池室も液漏れ跡などなく綺麗。

グリップカバーを外し、単三を3本。
さらにバッテリー下部に3本必要らしい。
合計6本。

バッテリー室に電源切り替えスイッチがある。エネループの場合はNi-MHに合わせておけば良いのだろう。
これで装填完了。

シャッターを切ってみる。

「ドキュ。」(←シャッター音)

「へ? 動く・・?」


シャッター幕も動いているし、シャッター速度も順次変化している。

「う~ん・・」

ファインダーを覗くと「×」と表示されているが、何がペケなのかよく分からない(笑)
とりあえず帰って、レンズを付けてからまた色々試してみる事に。

このF4はニッコールレンズの対応が非常に幅広い事で知られています。

Dタイプレンズ時代のボディですが勿論Aiレンズも使えます。
マウントのピンを倒せば、非Aiのオートニッコールも付く。

現行のGタイプレンズもVRは機能しないものの使えます。これが一番驚きました。
(F4はボディ側で絞りを調整する事が出来ないので、プログラム撮影・シャッター優先撮影に制限されますが)

AFも、露出計も動いているし、ファインダー内液晶もちゃんと表示されている。

翌日、ネガ一本試し撮りしてみましたが露出も大体あっているし、フィルムに傷や光線漏れなどが入ったりもしない。

「なぜこのF4がジャンクに?」

手に入れた喜びよりもそちらの方が気になって仕方が有りません(笑)

前の所有者がショップに持ち込んだのならば「動きませんね。ジャンクですね。」で納得する訳ないですし・・



(推測)
このF4sは故人の遺品で、親族がショップに持ち込んだ。
ショップの店員がこのカメラに詳しくなく電池の入れ方が分からず、ジャンクと判断した。(確かにバッテリー下部に3本入れる所が分かり辛い)
カメラに詳しくないであろう親族も、「そうですか・・でも持って帰っても仕方ないので引き取って下さい。」

となったのだろうか-



Fシリーズの中で唯一外装がエンジニアプラスチックな為、一番不人気とは言えニコンフィルム一眼レフのフラッグシップ。
恐ろしい話である。

今度ニコンに行く用事があれば点検に出してみます。
多少不具合が無いとおかしい・・・ちゃんと動くF4が500円なんてそんなウマい話がある訳ない。


よくこのF4はAFが遅い、と言われますが普段使っているAF-S 24-70mmや70-200mm、マイクロ60mmなどで
使ってみる限り十分なスピード。(動体相手には使い物になりませんが)

操作もF3より使いやすく露出の±もF3より分かりやすい。

ただ、ISO感度設定ダイヤルや給送モードダイヤルにロックがあるのはいいとして、
露出補正ダイヤルにもロックボタンがあるのは正直煩わしい。

F3の時もそうでしたが、このロックに再び忌々しさを覚えます。
せっかくF3の時より露出補正ダイヤルが大きく、指が届きやすい位置になったのに、何故わざわざ使いにくくするのか。


外装がプラな点と、この操作性(と言ってもF3よりは使いやすい)を除けば、必要十分な機能です。
何と言ってもシャッター速度も1/8000秒まであるので日中、単焦点での開放撮影もこなせます。

本来AFカメラなので中央の測距ポイント[ ]表示がMF時に
煩わしく感じますが、ファインダーは確かに明るくAFカメラにしてはMFもしやすい。

とは言え、ピントの山の掴みやすさはやはり、MF機であるF2やF3の方が分があると個人的に思いました。




外装がプラな為、不遇な扱いを受けているこのF4。
例に漏れず、僕もスタイリングだけで見れば正直、好きなカメラではありません。
プラカメラに愛着が持てないといいますか・・・(;^_^A

プラ外装故に、曲面を多く取り入れる事が出来たデザイン。デザイナーはF3から引き続きジウジアーロが担当。
ただそのテカリと相まって、良く言えばグラマラスでマッチョなデザイン。悪く言えば太っちょ。

FからF5まで並べてみると明らかに異端児のように目に映ります。

僕にとってのF4の立場は・・・
F4を散歩カメラに使うには重すぎます。
MFで散歩するならF2かF3を連れ出すでしょうし、AFでお散歩ならF100を連れ出すと思います。

また、風景などの撮影ならF5を連れ出し、フィルム2台体制で撮るならF100をサブに持って行くでしょう。

F4の出番はやはり無さそうです。

でもこのプラ外装を剥がせば中身は骨太のアルミダイキャスト。
いつも通りフラッグシップならではのボディ。

実力も十分で頼もしい1台なんですよ(^_^)

何はともあれ、これでF・F2・F3・F4・F5と揃いました。あとはF6・・・。

(2012.10.29追記)
ニコンSCでこの500円ジャンクF4sを点検してもらいましたが、「特に問題ありません。」との事・・・(苦笑)
若干プレビュー鳴きの兆候があったので、オイルだけ差してもらいました。

まぁ、また再発するでしょうが・・・

黒い運命-

2012-07-05 00:00:00 | ニコン

結局、買ってしまった・・・ Fアイレベル黒(前期型)





ある日の事。


S2とF5の点検の為、大阪梅田のニコンサービスセンターに出かけました。

点検してもらっている間、大阪第2ビルの地下街で少し早い昼食をとり、その後梅田周辺のカメラ店を
何軒かぶらぶらするのがいつものパターンなのですが、めぼしい物も無くサービスセンターに戻る途中
の事でした。


「おや。こんな所にもカメラ店が・・」


入り口付近にはKodak ULTRAMAXやFUJICOLOR200 など、輸入物や逆輸入物のネガがチラホラ。
使った事無いけれど、神戸では置いていないネガなので取りあえず買っておく事に。
大阪まで来て手ぶらで帰るのも何だし。


店の中に入ると、ライカ、コンタックス、コダックなどの古いレンジファインダーカメラも置いてあった。


一番奥に進むと・・・
ショーケースの中にひときわ目立つ、NIKON S3 ブラックのモータードライブ・フィルムマガジン付きが展示してあった。
値段は200万円位だったか。あまり覚えていない。

ここまでくるともう完全に浮世離れというか、自分の価値観からかけ離れてしまっているので
ただ眺めるだけで気が済みました。(25万円でも買えないけど)

他にもSPのブラックやS3のブラックなどもありました。
勿論、復刻版では無い当時のオリジナルです。

35万円、40万円。
SPのブラックは欲しいのですが、とても手が出ません。

あとはFの白や黒などがちらほら置いてあった。

「こないだF2黒買ったし、OHもしてもらったので絶好調だしな~。」

ショーケースに背を向け、レジでネガの代金を支払う。


「ん・・・?」


何故か再びショーケースへと吸い寄せられた。


「Fの黒?」







そこに佇んでいたのはFアイレベルブラック。前期型だった。


「二万○千円。委託品。保証無し。」


(心の中で) 「安っ!」 (゜o゜;)


「すいません。これちょっと見せて下さい。」


ショーケースから出してもらい手にもってみる。
いい具合に塗装が剥げて下地の真鍮が出ているFブラック。

使い込まれた個体だがペンタ部は大きな凹みも無い。

欲しかった黒の前期型、日本光学マーク。
それでいて好みの剥げ方。



とりあえずシャッター速度のチェック。
中速・高速はまぁ問題なさそう。スローは1秒、2秒がちょっと変な音がする。

ファインダーを覗く。

Fのプリズム特有の腐食によるシミが右下に数点。
中央にごく薄い縦ジミが一本。
まぁどちらもファインダーに目をくっつけている時は気にならない程度。

それよりフォーカシングスクリーンにホコリやモルトの粉みたいなのがいっぱい付いていて
これが視界を著しく妨げていました。ちょっと耐えられないレベル。


「ダメか・・・。ん?まてよ?」


ふと、F2黒を持っていたのを思い出す。
OHしたばかりなのでサービスセンターに預けずバッグに入れてあったのです。

あぁ、何て運が悪い(笑)


「すいません。ちょっと試しにフォーカシングスクリーン入れ替えさせてもらってもいいですか?」


ご存知のようにFとF2のフォーカシングスクリーンは共通。
自分のF2に入っていたB型スクリーンをお店のFに入れてみる。


視界スッキリ!!


「これいただきます。」(早)


ここで出逢ったのも何かの縁。
いや。この黒いFは自分の元へ来る運命だったのだ。 (うんうん。)






店をあとにし、ニコンサービスセンターへS2とF5を引き取りに戻りました。

診断の結果、F5は特に問題なし。
S2の方は1/500と1/1000秒が1/3段ほどオーバーとの事でした。
まぁ、この時代の、横走りの高速シャッターに精度を求めるのが無理な話である。

「何回もすみません。これも点検してもらっていいですか?」

たった今買ったばかりのFアイレベル黒を点検してもらう。

再び待ち時間90分かかるのですが、もうカメラ店巡りはやめておきました。
服もそうですが、買ったあとはもう見ない事にしています(笑)

Fを診てもらっている間は、D4やD800をいじりながら時間を潰しました。
D4はやっぱりいいですね。D800はちょっと質感が安っぽくなった感じが気に入りませんでした。

まぁどちらも買う気は無いのですが。(と言うか買えない)


そうこうしている内にFの点検が終わりました。





点検の結果は

・ファインダー内ホコリ
・プリズムの腐食少々。
・ミラー剥がれ少々。
・スロー1秒、2秒に異音がするが、シャッタースピードは全速正常。

素晴らしい。
シャッター精度さえ出ていればあとは気分の問題だけであります。


「何回もお願いしてすみませんでした。」

行きの時よりカメラ1台分重くなったキャリーカートを引きながらニコンサービスセンターをあとにし、
帰路に就きました。



後日、元々持っていたFアイレベルシルバー(前期型)と、今回買ったFブラックのシャッターダイヤル
文字盤を入れ替えたので上の写真が現在の姿です。

この"60"が赤で、"1/125~1/1000"が黄緑っぽい色のが一番好きな文字盤です。

Fは1959年に発売されましたが、今回手元に来たF黒のシリアルNo.は651****。
1963年8月~9月の間に製造された個体のようです。僕の生まれた10年前かぁ。





FアイレベルブラックとFアイレベルシルバー。


エレガントなシルバーか、チョイワルのブラックか。
どちらもテーラーでビシっと仕立てられたクラシカルスーツのような趣きがあります。






FアイレベルブラックとF2アイレベルブラック。


こうして並べてみるとFが直線的なラインで構成されているのに対して、F2は角に丸みがあるのが
よく分かります。

それぞれに魅力があり、この2台はどちらも外観の使い込まれた感が何ともいい雰囲気を醸し出しています。(たぶん)


このFブラック、またOHに出してみたい気もありますが、使う機会がそんなに無いと思うので
悩んでいます。

1/2000秒まであって、ピントの山が掴みやすく使い勝手がいいのはF2の方ですが、
F2はシャッター音がやかましくスナップに向いていない。

いつも撮っている猫たちも「ピクッ」とします(笑)


「う~ん・・・。」


黒か白かの悩みは解決しましたが、FかF2かの悩みは尽きません。




とりあえず▲頭のFを買うのはこれで終わりにしよう・・・(^▽^;)



これで手持ちのFシリーズは

・Fアイレベルシルバー(前期型)
・Fアイレベルブラック(前期型)
・F2アイレベルブラック(OH済み)
・F3アイレベルブラック(OH済み)
・F5(OH済み)

となりました。 (めでたしめでたし。)

(2012.8.14追記 Fアイレベルシルバーは売却しました(汗)


(2012.10.16追記)
今回も猪苗代カメラ工房さんでOHして頂きました。

・各部分解作動点検再調整
・巻上げレバーフリクションバネ折損の為交換
・ミラー接着剥がれの為修理
・各モルト交換
・各部清掃

巻き上げの感触もスムーズになり気持ちよくなりました。
スローシャッターの異音も無くなり、高速~低速までいいシャッター音を奏でています。
ファインダー内もスカッとクリアーです。

これであと30年は使えますね。
機械式カメラならではです。 v(^_^)v

還ってきたF2

2012-04-14 12:00:00 | ニコン

修理から還ってきたF2アイレベル黒。



前回の記事でこのF2を紹介しましたが、修理に出す機会が早くも来てしまいました(笑)


巻き上げが「ギー」と不調だったのですが、スローが時々シャッターが開きっぱなしになる症状が
出始めた為、修理に出す事にしました。

実戦でこのF2でスローシャッターを使う機会はたぶん無いと思いますが使えないより使えるに
こした事は無いし、とにかく巻き上げの不快さは如何ともし難かったのです。

モルトも全般劣化していたのでいい機会です。

今回、修理をお願いしたのは福島の猪苗代カメラ工房さん。
はじめてお願いしたのですが、こちらもニコンのOBさんがされている修理屋さんです。

修理をお願いしたのは

・スロー不調修理および各シャッター精度調整
・巻き上げ不調の為、注油および調整
・モルト全般劣化の為、張り替え
・ミラー汚れの為、清掃
・ファインダー内清掃

だったのですが内容からして、まぁオーバーホール行きです(笑)

約10日後、F2が還ってきました。

修理明細には記載されていませんでしたが分解した際に、ペンタ部の大きな凹みやトップカバーの凹みも
裏から叩き出して直して下さっていました。
おかげさまで正面から見た顔が少しスッキリしました。ありがたや、ありがたや。





ご覧の通り、外観はボロボロですが中身は絶好調です。
「歴戦の勇士」たる佇まいです。



ファインダー内・ミラーも清掃されて視界もクリアで覗いていて気持ちが良いです。
裏蓋のキーが固くて、開閉がしづらかったのですがこれも直して下さっていました。

修理内容には「オーバーホール」とだけ書かれていましたが、実際にはたくさんの不具合があった事でしょう。
感謝せずにいられません。

ちまたでは「F3のフォーカシングスクリーンをF2のフォーカシングスクリーン枠に入れると明るくなって
見やすい」とよく言われるので、F2とF3のフォーカシングスクリーンを送り、今回の修理に合わせて入れ替えをお願いしました。

確かに気持ち明るくなりましたが、ピントの山の掴みやすさは、う~ん。。。
よく分かりません。
結局、F2のフォーカシングスクリーンのまま使っています(笑)






F2とF(前期型シルバー)との2ショット。



F2アイレベルを買うのをためらっていたのは、「△頭のFが2台あってもなぁ・・・」という思いが
あったのですがこうして並べてみると、Fが直線的で、エッジの効いたボディなのに対して、
F2は角が取れ、曲線的で洗練された、Fとはまた違う趣きがあります。

Fが「ビシっとしたクラシカルスーツ」ならば、F2は「ジャケットにジーンズ」みたいなイメージでしょうか。

正面の"Nikon"のロゴはFが丸ゴシック調の書体なのに対して、F2は角ゴシック調になりました。







F2とF(前期型シルバー)との軍艦部2ショット。



こうして2台並べてみると、シャッターボタンの位置はF2とFでは前後にかなり異なっています。
Fはシャッターボタンが後ろ寄りにあり、一般的に「押し辛い位置」と評されているのですが、
S2で慣れているのでそこまで不自然には感じていません。

シャッターダイヤルの文字はF(前期型)の方が白・赤・黄緑の3色使われているのに対して、
F2は白・緑の2色。Fと比べるとシンプルなイメージです。

F2は「Fのマイナーチェンジ版」みたいなイメージがあり、実際僕もそう思っていたのですが
Fはレンジファインダー機のSPを半分に切って間にペンタミラーを挟み込んだ設計なので多くのパーツを
SPと共有しています。

一方、F2は最初から一眼レフ用の設計なので、Fとはボディ設計がまったく異なっているそうです。
つまり外観だけ見るとマイナーチェンジですが、実際にはフルモデルチェンジという事になります。



修理から還ってきたF2の巻き上げ感は勿論、快適。
とは言ってもF2は元々、F3やS2のような軽やかな、スムーズな感触は持ち合わせていません(笑)

シャッター速度も全速絶好調。
「バシン!」と、けたたましいシャッター音もさらに絶好調(笑)


F2の最大の欠点はこのシャッター音のやかましさですがその点を除けば、Fよりずっと使いやすく、気軽に持ち出したくなります。
シャッター音で子どもや猫を多少ピクッとさせてしまいますが、いかにも写真を撮っている気になります。

機関絶好調だけど、外観はボロなので気を使わなくていいこのF2。
おかげでS2やFの出番が減りそうです(笑)

機械式カメラって、きちんとメンテしてくれる職人さんが居る限り、いつまでも使えるもんだなぁ、と改めて思いました。




猪苗代カメラ工房さん、ありがとうございました!! (^_^)/




黒い戦士~Nikon F2

2012-03-29 00:00:00 | ニコン





S2のブラックペイントを手に入れてから、「やっぱ黒に限るなぁ。」と思い、FかF2の黒が
気になりはじめました。

Fの黒を買うならば、日本光学東京マークの前期型が欲しいのですが、とても高いです。
何よりFは既にシルバーの前期型を持っているので「色違いで揃えてもなぁ・・・」と思い、
現実的に考えるとF2黒に落ち着きました。


F2黒でも外観の程度の良い物は未だに3万円以上します。
カメラ全般かもしれませんが、ペンタ部にアタリや凹みetcがあるかないかで、値段が大きく変わります。

が、そんなに使用頻度が高くないものに大きな出費は出来ません。
今回は1万5000円のボコボコのF2黒を買う事にしました。(カビ有り・爪なしジャンクのNIKKOR-H・C 50mm f2付き)




ご覧のとおり、ペンタ部に凹みあり。正面からは分かりませんが、サイドや裏蓋、
底の至るところが塗装が剥げて、下地の真鍮が出ています。

「使い込まれた鎧」のような佇まいが感じられてそれは気に入っているのですが、モルトが全般的に劣化した状態
でしたのでパサパサな部分を除去しました。
フォーカシングスクリーンもモルトの粉で汚れていたので、F・F2用のフォーカシングスクリーンB型の予備があったので交換しました。

これで視界はスッキリしました。

ミラーもモルトの粉で汚れていますが、視界に影響がある程ではありませんし、うかつに触れない方がいいので
そのままにしておきました。
裏蓋のモルトが一番心配でしたが、試写したところ感光なども無く普通に使えています。

巻き上げはちょっと調整が必要です。
「ギー」という感触で、気持ちの良いものではありません。

余裕が出来たらモルトの交換含め、また調整に出したいと思います。←結局出費がかさむ(笑)







1971年(昭和46年)、Fの後継としてF2は登場しました。
僕のこのF2はシリアルNo.が743****で、1974年7月~9月製造分です。僕の生まれた1年後くらいです。

偉大すぎる「F」の跡を受けて登場したF2は、Fのマイナーチェンジ版みたいなイメージが強いのですが
使い勝手がFと比べてずいぶん向上しています。

地味なところで裏蓋の開閉が蝶番式になり、フィルム装填の時に裏蓋を外さなくても良くなったとか、
シャッターボタンの位置が改善された点とか、裏蓋にフィルムの箱の切れ端を入れるポケットが付いたとか。

地味ですね~(笑)

シャッタースピード最高速度がFの1/1000秒から1/2000秒に上がった事が最大の進化でしょう。

Fは1/1000秒までしかないので日中で絞りをあけたい時はNDフィルターのお世話になっていたのですが、
F2は1/2000秒まであるので、感度100のフィルムでf2.8くらいまで絞りをあけることが出来ます。

シャッター音はFに比べると騒々しいです。
Fが「カシャ!」、F3が「カチャン!」だとすると、F2は「バチン☆!!」です。←分かりませんよね(笑)

ファインダーの見えはFに比べると少し明るく、ピントの山がより掴みやすくなったように感じられます。

裏蓋の光線漏れが心配だったので、試写に連れ出してみました。






お供するレンズはAi Nikkor 50mm f1.4sと105mm f2.5s。
二本とも2月にフォト工房キィートスさんでOHして頂いたレンズです。







ふだん遊んでやっている、もとい、遊んでもらっている猫たち。

F2のシャッター音はやはり、やかましいのでしょう。
いつも撮っている猫たちが「ビクッ」としました。(苦笑)

手前に見えるは愛機、Nikon S2ブラックペイント(後塗り)です。














望遠を使うとき、F2のピントの山の掴みやすさが非常に有り難いです。
ピントが合うにつれ、スーッと被写体が浮かび上がってくるような印象です。

やはりシャッター音がやかましいのか、警戒で耳が立っています。

F2は猫撮りには不向きだという事がよく分かりました(笑)




1/2000秒は今回使う機会がありませんでしたが、ちゃんと出ているか、かなり疑わしいので、また大阪に行く用事が
出来た時にニコンSCさんで測ってみてもらおうと思っています。








それにしても、外観もボロボロ。露出計もないアイレベルだと、気持ちがいいですね。
気兼ねなく、ラフに撮りたい気分に駆られます。

もう外観もボロボロなのでカメラケースにも入れませんし、休憩する時もポイとベンチや地面に置いています。

そんな使い方が似合う、「傷だらけの黒い戦士」。


まだまだ勇退なんてさせません。

Paint it black!~黒く塗れ!

2011-10-15 23:30:00 | ニコン
Nikon S2(クローム)はこちら
Sマウントニッコールはこちら




日本光学 Nikon S2 Black (re-painted)


黒い誘惑-

Nikon S型のS2、SP、S3などにはブラックペイント(黒塗り) モデルが存在します。

S3やSPなどのブラックペイントはリミテッドモデルや近年に復刻モデルが発売されたので今でも割と見かけるのですが、
それがリミテッドや復刻モデルでなく、オリジナルのブラックだったりするとさらにプレミアが付いて
レンズ付きで30万円とか80万円とか。実に恐ろしい値段です。

中でもS2は限定版とか復刻版も発売されなかったのでオリジナル・ブラックペイントは希少です。

S2は総生産台数が約55,000台ですが、その中で後期型(ブラック・ダイヤルとか黒ダイヤルと呼ばれるモデル)が約15,000台。
オリジナル・ブラックモデルは前期型・後期型合わせて1,000台前後しか生産されていないそうです。

Nikon S2が出た1954年当時は、カメラは輸出が主だったのでオリジナルブラックも数多く外国へ旅立っていった事でしょう。
それから50年以上の月日が流れて、今でも生き残っているオリジナル・ブラックモデルって世界で一体何台あって、その中で日本に何台あるのでしょう。

滅多にお目にかかる事もありません。

仮にお目にかかれても100万円超える事も珍しく無く、ただただひれ伏すしかありません。
でも持っている人は持っています。実にうらやましい。

「後塗りのブラックでいいから欲しい・・・」

そんな事をずっと思っていたのですが先日、後塗りのS2 ブラックペイントを手に入れる事が出来ました。
現物を見ずに買った訳ですが・・・






ニコンS2 ブラックペイント(後塗り)


マウント周りがサビているのですが、ちょっと勿体無い。

「勿体無い」と思ったのは、サビているからでは無く、どうせなら前カバーや軍艦部カバーの角なども黒塗装が剥げていて
くれれば尚良かったと思ったからです。

底カバーには黒塗装が剥がれている部分がちらほらあり、下地の鈍色が出ていたのですが、ルーペで軍艦カバーをさらに細かく見ると、
軍艦部カバーに小さな鈍色の剥がれを見つけました。

「黒塗装の下がクロームメッキで無くて良かった・・・」(´▽`) ホッ

ひとくちに「後塗り」と言っても、ただ単に元のクロームメッキの上から黒を塗るのと、一旦メッキを剥がしてから
塗装するのとでは全然違います。

田中長徳さんもブログで書いておられたのですが、黒塗装が剥がれた部分にクロームメッキが出てくるとマズい。
「黒塗装の下は真鍮の鈍色が出てきてくれないと困る。」と仰っておられたが、良く解ります。

使い古されて、下地の真鍮が出てきた傷まみれのS型ニコンは何とも言えない風合いがあり、堪りません。
まるでアンティークの西洋の鎧でも見ているような風格があります。

そんなに頻繁に使う訳では無いので、何十年かかってもここまでの風合いを出すのは無理なので、この後塗りS2をガリガリ地面に引きずり回そうかと
一瞬思いました(笑)が、傷の付き方にも良い悪い色々あるでしょうし、そんな罰当たりな事は出来ません。
ただ、カメラケースなんぞには入れずに普通に扱ってみます。

早く前カバーや軍艦部カバーの角が剥げてくれないかと願っています。
ジーンズみたく「使い込んで出てくる味」が出れば良いのですが。






軍艦部


黒塗りされたS2はクロームのS2と比べると数字やら目盛やらアルファベットの刻印がより鮮明に見えてカッコいいですね。
"NIPPON KOGAKU TOKYO"の富士山マークも一層誇らしげにブラックボディに映えています。

ノーマルS2では赤文字が使われている箇所はピンクぽい色が使われています。
「黒に赤」より、視認性を良くする為に薄めのピンク色になったと思うのですが、これがまた好きなところです。

ピンクに塗られた30-1などがいいアクセントになっていて、
まるで「強面のブラックスーツに、ピンクのネクタイやカフス」みたく、遊びゴコロがあってカッコいいと思うのです。

このS2 ブラックはレプリカだけど、それで十分満足しています。

"ブラックのS2使い"と言うと、森山大道さんが知られているらしく、ツァイスの広角あたりを付けて
ノーファインダーでバシバシ街角でスナップしていたらしい。

森山大道さんのオフィシャルHPを見ると、なるほど。
確かに、ブラックペイントのS2がよく似合う御方だと思います。





S2 ブラックとノーマルS2(前期型)とのツーショット。


白のS2は梨地(ナシジ)塗装ならではの上品な輝きで、クラシカルな佇まいが魅力的なのですが、
ブラックは銃器然とした精悍な印象で、それでいて艶がある不思議な魅力を醸し出しています。

双方それぞれの良さがあり、出来れば両方手元に持っておきたいのですが、今回の後塗りS2も僕にとっては安い買物では無いので
白のS2は手放してしまいました。。。

このブラックS2を実際に触ってみると、巻き上げが非常にスムーズで驚きました。
元々持っていた白S2も悪くなかったのですが、さらに一段磨きがかかったような感触で、F3とまではいかないけれど
フィルム後半になっても巻き上げが心地よいフィーリングでした。

もしかしてブラック・ペイントされる際に合わせて各部注油・調整がされたのかもしれませんね。
ありがたや、ありがたや。\(^0^)/

そんな訳で今回のS2 ブラック・ペイントには満足しているのですが、困った問題が出てきました。




「S2ブラックとレンズが似合わない。」( ̄▽ ̄;)!!ガーン




いや、今回買ったS2ブラックには黒鏡筒の5cm f1.4が付いてきたのでそれは良いのですが、3.5cmと8.5cmは
クローム鏡筒のタイプしか持っていないのです。

特に、8.5cmクローム鏡筒にフードまで付けてS2ブラックと合体させてみると、どうもアンバランスに見えます。





白S2に黒鏡筒のニッコールはカッコいいのですが、黒S2に白鏡筒はどうなんでしょう。。。(-_-;ウーン

8.5cmは描写自体は気に入っているのですが、買った時からピントリングが重すぎてスムーズなピント合わせが出来ないので現在、
フォト工房キィートスさんにグリス交換とレンズ清掃etc修理に出しているところです。

ま、レンズがスッキリ気持ち良くなって帰ってきたら、「黒に白」も良し。と思うかもしれませんね。



カメラやレンズを買う時は、「白黒ハッキリさせてからの方が良い」と思いました。


(2011.12.06追記)
フォト工房キィートスさんからレンズが帰ってきました。ヘリコイドも快調、レンズ内も清掃されてヌケが良くなって気持ちよいです。
何となくいい写真が撮れそうな気がします(笑)


(2012.6.05追記)
せっかくOHまでしたのですが、やはりS2黒に白鏡筒という組み合わせがしっくりこず、この8.5cmは売却しました(汗)
しかし、黒鏡筒の8.5cmは高価ですねぇ・・・

ちょっと手が出ないのでNIKKOR P・C 10.5cm f2.5を新たに迎えました。


これで現在手持ちのSマウントレンズは全て黒鏡筒になりました。