会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

誰もが億単位の横領犯になり得る 不正調査のプロに聞く事件巨額化のメカニズム(日経ビジネスより)

誰もが億単位の横領犯になり得る
不正調査のプロに聞く事件巨額化のメカニズム


(やや古い記事ですが)大手企業の社員による横領が相次いで表面化していることについて、デロイトのパートナーに聞いたインタビュー記事。

東芝の事件でも問題となっている内部通報制度の重要性について強調しています。

「--- 日本の場合、「同僚を売る」ことを敬遠する空気があるのではないでしょうか。

麻生:私もそのようなことをある国際会議で発言したことがあります。そうすると、周りの出席者から総攻撃されました。「日本人だけが美意識を持っているわけではない」と言うのです。例えば南アフリカは人種差別もあり、内部通報すれば命を狙われる可能性もある社会です。それでも、政府が20年ぐらいかけて内部通報制度を促進した結果、一定の成果が出ています。日本ではせいぜい“窓際”に追い込まれるぐらい。命の危険がある国と比べても、通報制度が機能しないことを風土のせいにすることはできません。日本企業も通報制度の活性化に力を入れ、これまで以上に機能させなければならないでしょう。

--- 具体的にはどのようにすればいいのでしょう。

麻生:まず、トップがコンプライアンスを重視することをメッセージとして出すことがあります。その上で通報窓口について、どこの誰が情報を受け取り、その情報がどのように扱われるかをきちんと開示する必要があります。そして、通報した人を絶対に守る姿勢を示す

ある会社で内部通報制度についてアンケート調査したところ、通報窓口の連絡先どころか通報制度があることすら知らない社員が多数でした。その上、役員クラスでも「不正を知っても連絡しない」という回答が多かったのです。その理由は、「自分の身が危ない」からでした。危機感を覚えた社長は自ら「通報で不利益を被ったら私が守るので連絡してほしい」と強いメッセージを出しました。その結果、徐々に小さな案件でも通報が上がるようになりました。」

J-SOXは、社員による横領などにはあまり役に立たないといっています。

「いわゆる「J-SOX」による内部統制システムは不正を予防・発見するためのものではなく、財務諸表が正しく作られているかどうかをチェックすることが目的です。内部統制強化によって横領がなくなったり、見つかりやすくするものではないと考えた方がいいでしょう。」

内部通報制度も内部統制の一部なわけですから、J-SOXによる内部統制で、不正発生のリスクをある程度抑えることはできるはずです(限度はありますが)。

不正が起こりやすい環境は・・・

「何億円もの横領であっても、手を染めてしまうのは普通の人であることが多い。日頃から問題を起こしているというよりも、仕事がよくできて、それなりの地位と権限を与えられている社員が多いのです。

誰もが名前を知るような大企業でも、その子会社やグループ会社、地方の営業拠点までは監視の目は届きにくいのが現実です。監査をするにしても、子会社の細かい取り引きまでは対象にはなりません。」
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