珍しく一般紙でIFRSを取り上げた解説記事。
「年次有給休暇の未消化分が企業の負債として計上されるため、「有給をとれる雰囲気にはない」といった日本の企業風土を変える可能性さえある」というのは、少し大げさです。
「新たな会計基準の導入は、企業をみるモノサシが変わるということだが、その余波は日本的な企業風土にも及ぶ。象徴的な例が有給休暇の扱いだ。」
「年次有休暇は継続勤務年数に応じた日数で、取得権利が発生する労働基準法で定められた制度。6年6カ月以上、継続勤務した場合は20日間、労働者は取得できる。有給休暇の有効期限は付与された日から2年間で、会社による買い取りは禁止されている。
しかし、2008年中の1人平均年次有給休暇の付与日数平均(厚生労働省の09年調査)は18日間で、取得日数は8.5日。取得率は47.4%にとどまる。完全消化にはほど遠いのが現実で、「名ばかり休暇」の企業は少なくない。
IFRSはこうした未消化分に対して、「有給休暇債務」として会計処理を求めている。
これまでは、損益計算書にもまったく反映されなかったが、従業員数や有給休暇残高、消化率などを用いて、債務計算される仕組み。社員が多く、取得が進んでいない企業は人件費の増加要因になる。有給休暇の取得率が8割を超える米国やフランス、ドイツなどに比べて消化率が低い日本だけに、その影響も大きいとみられる。」
IFRS導入初年度の期首でいったん負債計上し、その後は、毎期末に債務を見積もって、洗い替え処理していくだけですから、各年度で計上される人件費には、ほとんど影響しないはずです。
注記などで、消化率が開示されたりしない限り、世間の注目を集めることもなく、日本の企業風土を変える可能性もないでしょう。(会計処理のための計算はめんどくさそうですが・・・)
(ちなみに、IFRSの参考書によると、有給休暇などのように、勤務のあった期の期末から短期のうちに支給されるものを「短期従業員給付」というそうです。)
US fear new accounting rules could "prejudice" court actions(Accountancy Age)
こちらもIFRSとのコンバージェンスに関する記事ですが、訴訟に関する債務の開示や会計処理をとりあげています。米国でIFRSとのコンバージェンスのために新たに導入される基準では、従来よりも、訴訟の早い時期に詳しい開示と債務の計上を行わなければならず、企業側から反対意見が出ているそうです。
具体的には、IAS37号という引当金の基準が問題となっています。
UK companies use the international accounting rule known as IAS 37 where companies disclose a potential liability associated with a court action if there is a more than 50% chance they will have to pay damages. The value recorded in the financial statement represents the company’s “best estimate” of this liability.
In the US, corporations adhere to much softer local accounting rules which allow the disclosure of similar court liabilities, but much later in the litigation process. The US is considering adopting the international rule, which has raised fears companies may be leaking prejudicial information in their published accounts.
有給休暇債務よりは影響が大きいと思われます。
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