コロワイドが同社に関する報道(特に会計評論家の細野氏による記事)に反発し、注意喚起のプレスリリースを出した件については以前取り上げましたが、会社側弁護士から記事取消しの要求があったそうです。
「コロワイド側はホームページ上で記事を虚偽記載と断じたうえで、代理人弁護士を通じ、記事はコロワイドの社会的評価を著しく低下させ、名誉および信用を毀損しているのは明らかだから謝罪や記事を取り消すよう通告してきた。」
それに対して、細野氏が、反論しています。
のれんについて...
「論考の「レインズの事業は『のれん』の絶対額が大きすぎ、そこでの『のれん』に資産性を認めることはできない」との記載について、コロワイド代理人は、「のれんの金額の大小のみによりのれんの資産性が認められなくなる関係にあるわけではない」と論難している。論考はセグメント別損益に基づくレインズの投下資本利益率が2020年3月期がマイナス、コロナ禍の影響のない2019年3月期において3・2%と計算されることをもってレインズののれんの資産性を否定しているのであり、のれんの金額の大小のみによりのれんの資産性を否定しているわけではない。
投下資本利益率マイナス並びに3・2%という客観的数値によれば、何も上場会社ROE平均8%との比較を持ち出すまでもなく、レインズののれんに劣後収益性はあっても超過収益性がないことは自明である。」
ある会計期間で投資先が赤字となったから、すぐにのれんの減損だということにはなりませんが(だから細野氏が正しいかどうかはわからない)、あやしいと指摘することは、正当な論評の範囲であり、自由でしょう。
監査人の交代について...
「コロワイド代理人は、「通知人とあずさ監査法人との間には、上記記載にあるような2020年3月期の決算に関する減損会計の是非についての議論など全く存在せず」、「そもそも通知人とあずさ監査法人との間には、減損会計につき意見が対立し得る素地すら存在しないものです」などと、驚くべきことを主張している。」
「監査基準によれば、重要な監査項目については十分な監査証跡を収集し、その上で会社と必要な議論を行わなければならないとされている。それをコロワイド代理人は、のれんの減損につき議論はなく、意見対立の素地すら存在しないなどと強弁する。仮にこれが事実とすれば、会社は、監査基準に従った適正な会計監査を受けていなかったことになる。
弁護士は、会社の利益擁護をしているのではなく、むしろ、問わず語りに会社の不利益情報を開示している可能性がある。」
これは細野氏のいうとおりでしょう。
もちろん、細野氏のいうように、のれんの減損について会社ともめたから交代したのかどうかはわかりません。もし、そういう理由で交代したのなら、臨時報告書でそのように開示されるべきでしょうし、直近の決算でのれんの大きな減損を計上していない決算に無限定適正意見を出した以上、あずさも会計基準・監査基準に照らして納得しているはずです。ただし、今後、のれんの減損でもめそうだから、更新しないという判断があったとしても、不思議ではないでしょうし、そういう推測をするのも自由でしょう。
ワイヤーカードの例を見ても、会社の決算について外部から自由に見解を述べることができるというのは、重要なことだと思います。また、外部者は、内部通報でもない限り、会社や監査人がもっているような情報をもっていないわけですから、的外れだからといって、それらを抑圧するのはやめるべきでしょう。会社として反論するのは当然だと思いますが...。
記事の最後の方では、細野氏の反論に対する会社側の見解と、それに対する細野氏の再反論が載っています。
コロワイド「お騒がせ会長」が32億円の詐欺被害に 大戸屋買収に暗雲(デイリー新潮)
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