会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

会計士、倫理強化に戸惑い 顧客企業の違法行為通報義務 協会が規則改正(日経より)

会計士、倫理強化に戸惑い 顧客企業の違法行為通報義務 協会が規則改正(記事冒頭のみ)

会計士協会の倫理規則で「2019年4月から会計士は監査を請け負う顧客企業で違法行為を発見した場合、監督官庁などへ通報しなければならない」という記事。

通報義務の対象となる違法行為は、会計士の最大の任務である財務諸表の監査業務の範囲にとどまらない。贈収賄、マネーロンダリング(資金洗浄)、テロリストへの資金供与、環境破壊などと幅広く、非監査業務も含まれるのが特徴だ。例えば、日産自動車の無資格検査問題や神戸製鋼所の製品データ改ざん問題も違法行為に該当する。

会計士が顧客の違法行為やその疑いのある行為に気づいた場合、当該企業の経営者や監査役との協議のほか、規制官庁に通報しなければならなくなる。会計士は一般に顧客企業との間で守秘義務契約を交わすが、「公共の利益」を害する恐れのある顧客の違法行為を発見した場合、守秘義務契約を解消できるとした。

会計士が違法行為を見つけたのに適切な対応をとらなければ、会計士協会による処分の対象となる。協会の調査を経た後、退会勧告や会員権停止、戒告のほか、金融庁に対し行政処分の請求が出される可能性がある。」

10月に協会から公表された「違法行為への対応に関する指針」(案)(広い意味で協会倫理規則の一部となる)のことのようですが、この案では、いきなり当局へ通報することまでは求められていないようです。

なお、記事冒頭で「会計士が専門家として高い職業倫理を求められることはこれまでも公認会計士法などが定めていたが、一般的な考え方を示すにとどまっていた」とあるのは間違いでしょう。今でも、協会の倫理規則は、独立性や利益相反に関する指針まで含めれば、かなり詳細で、うんざりするくらいの量があります。そのほか、法令でも独立性(これも職業倫理の一部)に関する詳細な規定があります。また、公認会計士法で職業倫理(具体的には会計士の使命)のことを書いたのは比較的最近で(といっても十数年前ですが)、むしろ協会の倫理規則などの方が、昔から倫理に関する一般規定を設けていたように思います。

記事の最後の方では、会計不正(これは当然監査人の守備範囲)の話になったり、おなじみの八田教授のコメント付きで職業倫理教育が不十分と言ってみたり、ポイントがずれてしまっています。

(日経記事の写真はPwCの研修風景のようです(スクリーンにPwCの文字が見える)。英語でPwCのポリシーなどを説明しているようです。講師が説明中なのにみんなPCを開いて何かやっています。ファイルで配られた研修資料を見ているのか、内職しているのか...)

当サイトの関連記事(会計士協会「違法行為への対応に関する指針」制定案ほかについて)

協会指針案では、法令の例示として、以下のようなものが挙がっています。

・ 不正、汚職、贈収賄
・ マネーロンダリング、テロリストへの資金供与及び犯罪収益
・ 証券市場及び証券取引
・ 銀行業務並びにその他の金融商品及びサービス
・ 情報保護
・ 税金及び年金に係る債務及び支払
・ 環境保護
・ 公衆衛生及び安全
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